ジュニアヨット教室物語10
Photo by Gaku Suyama on Unsplash
洋ちゃんと健ちゃんも、片桐先生の後について、クラブハウス裏側の艇庫へと移動した。
「皆さんが乗るヨットは、ここの艇庫の中にあります」
片桐先生は、プレハブの小さな建物の入り口の扉を開いた。
扉を開いた内側に、小さい箱型のヨットの船体が折り重なって置かれていた。
「これがヨットの船体です。このヨットはOP、オプティミストというヨットになります」
片桐先生が、生徒たちに説明した。
洋ちゃんは、さっき健ちゃんと一緒に、沖合から走ってきた大きなヨットを見ていたので、今、自分たちの前の艇庫に入っているヨットがすごく小さく感じてしまっていた。
「このヨットは、OPといってヨットのオリンピック競技にも使われているヨットです」
片桐先生が言った。
「オリンピック競技にもなっているヨットなので、皆さんも、このヨットを乗りこなせるようになったら、オリンピックにも出場できるかもしれませんよ」
片桐先生は、オリンピックにも出場できるかもしれないヨットと聞けば、皆がすごいと思ってやる気がみなぎってくるかと思っていたのだが、それほどの反応でもなかった。
「では、これから、このヨットを海上に出して、乗ってみましょうか」
片桐先生は、一番上に重なっているヨットの船体を持ち上げて見せた。
「1人では、サイズも大きいですし、重たいから持てませんよ。2人1組で、ヨットの前と後ろで挟んで持ち上げて移動しましょう」
先生たちの指示で、子供達は2人1組になって、積み重なっているヨットを1艇ずつ持って、艇庫から表の広い敷地に出した。
「けっこう軽い!」
「ぜんぜん簡単に持ち上がる」
OPは、木製の合板でできているため、小さい子でも2人で船の前後で挟みこんで持ち上げれば、女の子でも割と簡単に持ち上げて移動できていた。
「前側を持ってよ」
洋ちゃんも、健ちゃんとペアになって、自分たちの乗るヨットを持ち上げて、艇庫の外の広い敷地のところに持ち出した。
皆が、それぞれ艇庫の中に折り重なっていたヨットを全て取り出し終わった。
「あと、この白いヨットも出すんですか?」
少年たちが、艇庫の中に1艇だけまだ残っていた三角形のヨットを指差して、片桐先生に聞いた。
「それも表に出すよ」
片桐先生に言われて、白い船体の前後に1人ずつ別れて挟み、持ち上げようとした。
「重たい!」
2人は、白いヨットも先に持ち出したOPと同じように持ち上げようとして、その重さに閉口していた。
「これは、2人だけじゃ無理だな」
片桐先生が手伝いにやって来てくれた。
「先生が、前側を持つから、2人で後ろ側を右と左で持ってくれるか」
片桐先生が、先頭を1人、子供達が後ろを2人で持って、ようやく持ち上がり、艇庫の外へと持ち出した。白いヨットを持ち出した2人は、小学校高学年で少し大きい子たちだった。
「君たちは、身体つきも他の子よりも大きいし、この白いヨットに乗ろうか」
片桐先生が、2人に言った。
「ちなみに、この白いヨットのことをミニホッパーといいます」
「ミニホッパー?」
「そう、あっちの四角いヨットの名前はOP、こっちの白いのはミニホッパーです」
片桐先生が、2人に教えていた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「ジュニアヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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