クルージングヨット教室物語145
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「内側から深浦に入港してもいい?」
ラットを握っていた香代は、隆に聞いた。
「そんな狭いところは無理よ。赤い灯台をぐるっと回らなきゃ」
隆より前に、麻美子が香代にアドバイスした。
「いや、大丈夫だよ。住友のクレーンの脇から入るんだろう」
隆が、麻美子のアドバイスを言い直した。
「入れるの?あんな狭いところ」
「入れるよ」
隆が答える前に、阿古さんが麻美子に答えた。
「通れるんですか?」
「うん。ぜんぜん普通に通れるよ」
「そうなんですか、香代ちゃんも通れること知っていたの?」
麻美子が香代に聞くと、香代は大きく頷いた。
「前に1回、深浦に来た時、ここの水路を通っているものね」
陽子が、麻美子に言った。
「前に通った時のことも覚えているんだ」
「え、もちろん」
「香代ちゃんも覚えていたの?」
香代も、麻美子に頷いた。
「皆、1回通った航路とかちゃんと覚えているんだ」
「1回通ったところをぜんぜん覚えていないのは麻美子ぐらいだよ」
隆が、麻美子に言った。
「そうなのね。私なんか、この辺で覚えているの貯木場と根岸の煙突と八景島ぐらいなんだけど」
「ぜんぜん航路とか海図とかを理解していないだろう」
「そうかもね。私がわからなくて、隆か誰かが目的地までヨットを連れて行ってくれると思ってるかも」
麻美子は、隆に答えた。
「うちのメンバーも皆、コースわかってヨットを走らせているのね」
麻美子は呟いた。
「もう皆に追い抜かれて、私だけまだヨットのことわかっていないかもしれない」
麻美子は、皆に言った。
「でも、麻美ちゃんは、クルージングとかに行ったら、皆の身の回りの事とかいろいろやってくれるから、それはそれで必要な事だよ」
中村さんが、麻美子に言ってくれた。
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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