クルージングヨット教室物語124
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「隆ー!今日ってマリーナのクレーンサービスってお昼までで終了だって!」
麻美子は、ラッコのデッキ上で皆と出航準備していた隆に、大声で呼びかけた。
「何それ、お昼で終了?」
昨日、渋谷のディスカウント家電で買ったばかりの電気ストーブの箱を持って、ラッコの置かれている船台の下までやって来た麻美子に聞き返した。
「今日って、夕方からマリーナのクリスマスパーティーじゃない」
「うん」
「それの準備のために、マリーナ職員さんたちも皆、午後からホテルの会場に行ってしまうんですって」
「そうなんだ」
「だから、午後からは、クレーンでの船の上下架作業もできなくなってしまうってさ」
「じゃ、どうするの?」
「え、だから出航してもお昼までに戻ってくるか、ポンツーンに浮かべておいて、明日の午前中にでもマリーナの職員さんたちに上架してもらうかですって」
「お昼までに戻ってくるといっても、あともう1時間ぐらいしかないじゃん」
「そうね」
麻美子は、自分の腕時計を確かめながら、隆に返事した。時刻はもう午前11時だ。
「どうする?」
「もう出すのやめて、昨日買ったこの電気ストーブで、キャビンの中でのんびり過ごす?」
「そうだな」
せっかく出航準備でセットしたセイルを、陽子や香織たちと再度片付け始めた。
「ね、キャビンの中で電気って使える?」
セイルの片付けしている隆に、麻美子は聞いた。
「陸電のコードを繋げば使えるよ」
隆は、陽子とメインセイルを畳みながら答えた。
「私、わかる!繋いでくるよ」
瑠璃子が、ラッコの船体から下りると陸電のコードをマリーナの電源設備に繋ぎに行った。麻美子は、香代と一緒にキャビンの中に入ると、電気ストーブの箱を開けて、マニュアルを見ながら設置する準備をしていた。
「繋がったよ」
瑠璃子がキャビンの中に戻ってきた。
「もう電気を使っても大丈夫?」
「うん」
瑠璃子は、パイロットハウスの陸電のスイッチを入れた。
「じゃ、電源コードを差して点けてみようか」
麻美子の合図で、香代が電気ストーブのスイッチを点けてみる。
「暖かいね」
しばらくすると、電気ストーブが点いたおかげで、ラッコのキャビンがポカポカ暖かくなってきた。
「暖かい!」
「何、この部屋!めちゃ暖かいじゃん」
セイルの片付けを終えて、キャビンの中に入ってきた皆が、口々に話していた。
「もうちょいで、お昼ごはんできるよ」
「今日は、ここでお昼を食べて、夕方までのんびりしてから着替えて、ホテルに直行か」
「そうね」
主な著作「クルージングヨット教室物語」「プリンセスゆみの世界巡航記」「ニューヨーク恋物語」など
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