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クルージングヨット教室物語22

Photo by Kristina Delp on Unsplash

「隆くん、GPSの設定ってどうやるんだったかな」

隣に舫っているアクエリアスから中村さんがやって来た。

「GPSの設定の仕方ですか?」

「どうも、機械の設定がうまくいかなくて大島が航路に入ってこないんだよ」

中村さんは、隆にヘルプを求めていた。

「それじゃ、瑠璃子がわかるんじゃないか」

隆に言われて、瑠璃子が中村さんと一緒に、隣に泊まっているアクエリアスに移動した。

「大丈夫かしら、瑠璃ちゃん1人だけで」

瑠璃子が、中村さんと一緒に出ていってしまった後、麻美子が心配そうに呟いた。

「大丈夫だろう」

隆は、呑気にパイロットハウスの席で、コーヒーを飲みながら、麻美子に答えていた。

「ただいま」

「え、もう設定できたの?」

瑠璃子が、アクエリアスに行ってわずか10分ぐらいで、ラッコに戻って来た。

「うん。すぐに設定できちゃった」

瑠璃子は、ケロッとした表情で、雪に返事していた。

「うわ、瑠璃ちゃんすごいね。もしかしたらカーナビの操作は、隆よりも上手いんじゃないの」

「さあ、そろそろ12時半になるし、瑠璃も戻って来たし、出航しようか」

隆は、ラッコの皆に言った。皆は、ライフジャケットを付けるとデッキに出た。

「中村先生、そろそろ出航しましょうか!」

隆は、ラッコのデッキ上からアクエリアスのデッキにいる中村さんに声をかけた。中村さんは、隆の方に手を上げて合図すると、自分の船のクルーたちに出航の合図を出した。

ラッコとアクエリアスは、ポンツーンに舫われていたそれぞれのもやいロープを外して、エンジンをかけると、2艇並んで夜の海へと出航した。

「セイルを上げるぞ」

沖合いに出たラッコは、メインセイルとミズンセイルを上げると、横浜港、金沢沖を伊豆大島へ向けて走り始めた。メインとミズンセイルは上げたが、船体の一番先頭に付いているジブセイルはまだ上げていない。

夏の海は、穏やかで風もあまり吹いていない。セイルに風を受けて、セイリングで風の力だけだとスピードが出ず、予定している時間内に大島までたどり着けなくなってしまう。そのため、風とエンジンの力のハイブリッド、機帆走で大島へ向かう予定だった。

機帆走で走るときは、一番先頭に付いているジブセイルを上げてセイリングすると、ジブセイルがバタバタと風にあおられながら走ることになるので、ジブセイルの存在が邪魔になってしまうのだった。

「ウォッチは、どういうグループで別れるんだ」

隆は、陽子に聞いた。

「どういう風に別れたらいいかな?」

逆に、陽子から隆に質問が返ってきた。

「どういう風に別れてもいいよ。俺がいなくなると、夜のセイリングは大変になってしまうだろうから、俺はずっと一晩中起きているから、その他の皆で、それぞれ2グループに別れなよ」

隆は、陽子に返事した。

「だってさ、他の皆さん、どう別れますか?」

「そうね。それじゃ、私は、香代ちゃんと2人でいいわ」

麻美子が、陽子に答えた。

「それじゃ、残りの私と瑠璃ちゃん、雪さんの3人でグループってことで」

陽子は、他の2人に言った。

「後にウォッチするグループは、先にキャビンに入って寝てきな」

「どっちが先に寝ますか?私は、まだあんまり眠くないけど」

陽子は、麻美子に質問した。

「それじゃ、皆はまだまだ若いし、私は、もうおばさんで眠いから先に休ませてもらおうかな」

麻美子は、陽子に返事した。

「香代ちゃん、お先に眠らせてもらいましょう」

そういうと、麻美子は、香代の手を握って、一緒にキャビンの中へと入った。

「ここで寝る?」

香代は、キャビンの中に入ると、パイロットハウスのメインサロンがベッドに変わっているところに乗っかって、そこに置かれている毛布と枕を手にとった。

「私は、後ろの部屋のベッドで寝ようかな」

麻美子は、船体後部のアフとキャビンの扉を開きながら、香代に言った。

「香代ちゃんも、一緒に後ろの部屋で寝る?」

香代が麻美子と一緒に寝るつもりでいたみたいだったので、麻美子は香代に聞いた。香代は、麻美子に大きく頷くと、麻美子と一緒に後部のアフトキャビンのベッドに移動した。

「おやすみ」

2人は、アフトキャビンのベッドに仲良く並んで眠りについた。

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