クルージングヨット教室物語21
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「おはよう!」
「っていうか、こんばんはでしょう」
隆と麻美子が、会社での残業を終えて、ようやく横浜のマリーナにやって来た。ちょうど、近くのコンビニまで夜食を買いに行って来た陽子と瑠璃子とすれ違った。
「仕事が、どうしても今週中に終えなければならなくて、今まで残業してきたんだ」
「渋々、残業して来たのよね」
陽子は、隆に返事した。
「えっ」
「もう続きは来週でいいよって言ってるのを、来週じゃ間に合わなくなるでしょうって、麻美ちゃんに言われて渋々、会社に残ってお仕事して来たんだよね」
「なんで、知っているの?」
夜遅くまでお仕事頑張ってきて疲れたみたいにカッコつけていた隆だったが、残業中にブーブー文句を言いながら仕事していたことは、もうしっかり麻美子から皆に伝わってしまっていたようだ。
「こんばんは!」
4人は、ポンツーンの手前のところに泊まっていたアクエリアスの人たちに挨拶をしてから、その奥に泊まっているラッコの船体に乗り移った。
「ああー、疲れた」
隆は、麻美子から持っていた重たい荷物を受け取ると、荷物を持ったまま、ラッコのキャビンの中に入った。キャビンの中では、雪と香代が航海計器をいじっていた。
「どうしたの?」
「ううん、別にどうもしないけど。大島まで向かうのに、ナビゲーションに針路を登録しておこうかと思って、航海計器のスイッチをあっちこっち触っていたの」
「で、大島までの針路は、しっかりインプットできたの?」
「ぜんぜん!わからない」
香代が、隆に返事した。
「俺も、この航海計器は触るの初めてだから、後でマニュアル見ながら設定しよう」
「私、わかるよ」
瑠璃子が、隆に言った。
「マジかよ、触ったことあるの?」
「さっき、コンビニでかける前に、ちょっとだけ触った」
瑠璃子は、香代と場所を代わって、航海計器のスイッチ類を触っていた。
「伊豆大島までの針路でいいの?」
「ああ、大島の波浮港までの針路が設定できるなら、設定しておいて」
隆は、瑠璃子に伝えると、瑠璃子は、しばらく航海計器のスイッチ類をいじっていた。すると、パイロットハウス前面にあるモニターに東京湾の地図が映し出された。地図には、横浜港から伊豆大島までの航路が線で引かれていた。
「今日、初めて、この航海計器を触ったんのだろう?よく操作方法がわかったな」
「会社で、エクセルとかワードのソフト関係をずっと触っているもの」
瑠璃子は、隆に答えた。
「私も、ワードぐらいなら会社で使っているけど、航海計器の使い方なんて、ぜんぜんわからなかった」
雪が、隆に言った。
「俺も、ぜんぜんわからなかったよ」
どうやら、瑠璃子は、機械関係の操作が得意のようだった。
「出航する準備は整っているの?」
「セイルとかは、私と香代ちゃんでセッティングしてあるよ」
陽子が、隆に返事した。
「皆の荷物は、フォアキャビンにあるクローゼットの中にまとめて入れたけど」
「ベッドを作っておこうか」
隆は、パイロットハウス脇のメインサロンと一段下のキッチン、ギャレー前にあるダイニングサロンのコの字型ソファの真ん中に付いているテーブルを下に下げると、テーブルの上にクッションをおいた。すると、メインサロンとダイニングサロンのソファが広々としたベッドスペースに変わった。
「ここで、2人ずつ寝れるだろう」
「後ろの部屋からタオルケットを持ってこようか」
麻美子は、最後部の部屋からタオルケットと枕を数個持ってきて、ベッドに変わったサロンの上に置いた。
「誰が、上と下のどっちに寝る?」
「別に、誰がどこに寝るか決めなくても、ウォッチっていって順番にグループ毎に別れて寝るから、ウォッチで起きてない方のグループがそれぞれ寝れば良いだろう」
隆は、皆に答えた。
「もうすぐに出航するの?」
麻美子に言われて、隆は腕時計の時間を確認した。
「今が11時過ぎだから、12時半に出航しようか」
隆は、ラッコの皆にヨットの出航時間を告げた。