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クルージングヨット教室物語15

Photo by Cheung Yin on Unsplash

「大丈夫ですか?」

ラッコが、ゴールを諦めてアクエリアスの近くまで戻ってくると、隆は呼びかけた。

ラッコで、アクエリアスのすぐ真横を走りながら、ジブシートを緩めろとかスピンのシートを緩めろと隆は、アクエリアスの船のクルーに向かって指示を飛ばしていた。

隆が指示を飛ばして、その通りにアクエリアスのクルーたちはシートを操作しようとしているのだが、上手く絡まったセイルを解けずにいた。

「エンジンをかけよう」

隆は、陽子に指示すると、陽子はパイロットハウスの中に入り、ラッコのエンジンを始動した。エンジンが掛かると、隆は、ラッコのクルーたちに指示して舫いロープを準備させて、海上でアクエリアスに横付けした。舫いロープは、船同士を軽く舫うだけにして、クルーたちに船体同士が当たらないように抑えていてもらうと、自分が握っていたラッコのステアリングを麻美子に託した。

「麻美子、ラットを握っていて。陽子、一緒にアクエリアスに乗り移って手伝って」

隆は、陽子と一緒にアクエリアス側に乗り移ると、アクエリアスのクルーからジブとスピンのシートを受け取って、陽子と一緒にシートを上手いこと操作しながら、セイルの絡みを解いてしまった。

アクエリアスのクルーが4、5人でシートを引いたり出したりしていても解けなかったセイルの絡みを、隆は陽子と2人だけでわずか数分で解いてしまっていた。

「これで大丈夫かな」

隆は、陽子と一緒にアクエリアスから自分たちのラッコに戻ると、ラッコはアクエリアスから離れた。

アクエリアスは、そのままスピンネーカーを下ろしてから、ジブセイルとメインセイルで黄色部位までセーリングしてからゴールラインを越えてクラブレースをゴールした。ゴールしたアクエリアスの後ろを追走していたラッコもゴールラインを越えた。

「結局、ラッコはアクエリアスよりも後だから最下位になってしまったね」

雪は、隆に言った。

「いや、ラッコは最下位でもないよ。途中からエンジンを掛けているから未ゴールの失格だよ」

隆は、雪に答えた。

「でも、あのままアクエリアスのことを見捨てずに、ちゃんと助けてあげられたのだから良かったじゃないの。アクエリアスは、隆がラッコに乗る前までずっとお世話になったヨットでしょう」

麻美子は、クラブレースで最後までゴールできなかったことよりも、失格してしまっても、アクエリアスのことを手助けできたことの方が満足そうだった。

「さあ、マリーナに戻ろうか」

ラッコは、横浜の自分たちが停めているマリーナへと戻っていった。

マリーナに戻ると、横浜のマリーナスタッフが上下架用の真っ白なクレーンで待っていてくれて、クラブレースを終えてマリーナに戻ってきたヨットたちを順番にクレーンで陸上に上げていた。ラッコの順番がきて、ラッコの船体も横浜のマリーナスタッフたちの手により操作されてクレーンで陸上へ上げられた。

ラッコの船体は、自分たちの船台上にちょっこんと載せられた。

横浜のマリーナでは、ラッコのようにクレーンで陸上に上げられて、船台に載ってマリーナの敷地内で保管されているヨットやボートと、アクエリアスのように、すぐ近くの海面上に設置されているブイに船を舫って、海上で保管されているヨットやボートがあった。

「お昼にサンドウィッチしか食べていないから、少しお腹空いてきた」

「後で、クラブレース後のパーティーがあるから、そこで何か食べよう」

隆と陽子は、ラッコのセイルを片付けながら話していた。

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