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TIGALAからpedia へ。あるいは、チェスのナイトの動き方について

「芸術に価値のあることがただひとつある。説明できないということだ」ージョルジュ・ブラック

正田圭です。会社経営も芸術と似てるところがあると思ってます。経営は本来ロジカルにやるはずのものですが、たまに、ロジカルさの中に、なんとも説明できない「思いつき」が産まれる。それを周りに説明するために、後付けでロジカルな要素を考えていく。こんな経験をしたことある経営者の方、意外と多いと思います。

と言いますのも、11月30日、TIGALA株式会社で、スタートアップメディアのpedia を事業譲受致したのですが、今回のディールもまさにそんな感じでした。

プレスリリースURL

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000017483.html

ザ・ブリッジさんでも取り上げてもらいました

http://thebridge.jp/2017/12/pedia-news-was-acquired-by-tigala

事業譲受とはいえ、大きなディールではありません。話が浮上してから1週間以内(実質3営業日)でクロージングしました。電光石火案件です。

今回のディールで一番苦労したのは、条件交渉でもなくバリュエーションでもなく、弊社TIGALA内での臨時取締役会での承認です(通らなかったらどうしようとドキドキしてましたが、蓋を開ければ全員賛成でよかった。通らなかったら自腹切る予定でした)。

うちはIPO目指している関係上、あまりM&Aを現時点では積極的にやってはいけないのですが、そうはいっても「M&Aの会社がM&Aをやらなくてどーすんだ!自分がM&Aしないのに人に勧めれるわけねーだろ‼」みたいなとこもあるから、やる時はやろうってことで空気を読まずにやりました。

●pedia と既存事業との関連性について

今回、開発スピードや知名度を買ったという点がこのディールのわかりやすい、表面上のポイントになっていると思います。

弊社TIGALAは、今年から金融情報のビッグデータ解析の元になるBIを開発してますが、pedia と連携することで開発が加速します。他のスタートアップメディアではなく、pedia 特有の作りだからこそ実現できることもありました。

また、TIGALAよりもpedia のほうが知名度が高いので、知名度を手に入れてる部分もあります。TIGALAは、今後ベンチャー界隈では「pedia を運営しているTIGALAさん」として認知されていくことになるのだろうなと思ってます。

余談ですが、役員会では山田真哉さん(「さおだけ屋」)から「社名をTIGALAからpedia に変更したらどうか」という声も上がっていました。

譲受先に名前を変更してしまうという手口は、M&A好きな方は真っ先に思い出すのはエッジ→ライブドアの事例。堀江貴文さんのこんな発言もあります。

「(社名をオン・ザ・エッヂからエッジに、そしてライブドアに変更した際)慣れ親しんだ社名を変えるのに抵抗はないですかと聞かれることが多くなりました。一度潰れた社名(ライブドア)を使うのは縁起が悪いという人もいました。たしかに社名に愛着がないわけではありません。しかし、それは単なる創業者のこだわりにすぎません。社名というのは芸能人が芸名を使うのと同じで、単純に売れるためにあるわけです。だからシンプルに考えればいい。どちらが売れるのかと。」ー堀江貴文

自分ももちろんpedia に社名変更することは真っ先に考えましたが、「他に狙ってる先があり、そこが買えた時にそこの社名に変更するため、今回のディールでは社名変更はしません」と回答しました。

またこいつ他にも突貫工事的になんかやらかすつもりかよと思われたかもしれません。(最近役員会で自分の起案が通らないことがあるのでヒヤヒヤしますが、ガバナンスが効いてる証拠だとプラスに受け止めています。自分の反対側にいるのは大抵自分の妻です)。昨日は新サービスを提案したらこれまでに無い冷ややかな目でCFOの湯瀬から睨まれましたが、めげずに頑張ります。

●今回のディールの狙い

でも、今回のディールの狙いは、開発スピードと認知向上のためだけではありません。

もう少し先を見据えた狙いがあります。

よくよく考えてみると、TIGALAのメイン収益であるM&A事業とpedia はシナジーがありそうで無いのです。

実は、M&Aビジネスにおいて、スタートアップ領域はデッドゾーンです。理由は2つあります。

・スタートアップ企業は調達の際にハイバリュエーションをつけ過ぎているため、M&Aでエグジットしようとどうしてもダウンラウンドでのエグジットとなり、なかなか実現しにくくなってしまう。(要は、プレ20億と言われて1億出す人はたくさんいても、本当に20億出してまるごと買う人はいないということです)

・スタートアップ界隈は、とても狭いコミュニティのため、情報整備が必要とされておらず、あんまりM&AしたことないVCの人とかでも適当な感じでさっと話まとめれたり、売り手買い手がもともと深く繋がっていたりして、媒介者を必要としない

これら2つの理由によりデッドゾーンとなっているのですが、敢えてここにTIGALAとして布石を置いてみた感じです。

これが2年後くらいに芽が出てきてくれればよいなぁと。

どこかのタイミングで、オセロで角をとったときのようにpedia が有効に働くタイミングがあるいう考えもあり、今回この領域に手を出してみました。

●M&Aがうまい会社の条件

うちがM&A上手いとか下手とかそういう話は置いといて、M&Aが上手い会社は、大きいディールと小さいディールの使い分けがうまいです。

そもそもなぜ大きいディールと小さいディールの使い分けが必要かというと以下の2つの理由があります。

1、M&Aの成功には数が必要。

M&Aは、その性質上、百戦錬磨で進めていくことは不可能です。当然、良いディールもあれば、悪いディールもあります。

まあ早い話が、でかく貼った時が良いディールで、小さく貼った時が悪いディールなら、トータルでしっかりとプラスになるわけなのです。

ただし、M&Aは博打ではなく技術です。なので、技術を磨くためにも数が必要になってきます。

ぶっちゃけると、1回で上手く行くM&Aなんてないんですよね。何度も繰り返しやってって、その中で点と点になっているディールが線となり、面となるM&Aが、イケてるM&Aなのです。

例えば、JTのように。例えば、ミツカンのように。

2、他業種を買うのが良いM&A

垂直統合とか水平統合なんて言葉を聞きますが、それはM&Aの本質ではありません。

M&Aの本質は、将棋でいえば桂馬。チェスだとナイトの動きにあります。

少し離れた業界や分野にひとっ飛びで移動してポジションを素早く取るための動きこそがM&Aで実現できる戦略なのです(富士フイルムの例とか、ボーダフォンの例とかいっぱいあるよね)。

逆にいえば他業種に行くがゆえのリスクも存在します。その分野の経験が無いわけなので。

そのため、小さなディールを積み重ねるのです。小さなディールを各分野に放り込みながら知見を高め、ここぞという時に瞬間風速を高めて大きなディールをズバッと行う。

これを狙って戦略的にやれる会社がM&Aの上手い会社です。

※TIGALAでは、このような戦略的M&Aを行うためのサポートをやってます。

●ディールについて思ったこと

今回、久々に自身が直接ディールをやっていくつか気がついたことがありました。

TIGALAが通常業務として、M&Aの仲介も、FAも両方やるのですが、多くの売り手買い手がとっているスタンスは間違っています。

M&A慣れしてない売り手は、急いで売りたがり、M&A慣れしてない買い手はゆっくり慎重に書いたがります。

でも、これ、正解は真逆です。

売る側はゆっくり、買い手は急いで買わなきゃいけません。

慣れてない売り手は、思いついたように売りに出し、多くの企業を比較することなくパッと売ってしまいます。しかし、本来は一番高く売れるタイミングを見極めて、多くの企業と接触して一番良い条件を引き出さなければなりません。

慣れてない買い手は、やれデューデリだ、それ基本合意だなんていってゆっくり進めがちですが、本当に欲しい会社ならパッと買わないとなくなります。市場はアホではないので、自分が良いと思う案件は、他の人も良いと思うのです。

結構これ、よくあるスタンスの間違いです。

うちもM&Aのアドバイザーとして案件に入る時、売り手に一番声をかける言葉は「落ち着け」。買い手には「GO!」です。

ぶっちゃけこれしか言ってない気がしており、フィーの90パーセント以上がこの言葉をかけるためだけにあります。

冗談です。

●pedia の未来

当面メディアとしての本来の運営は行いつつも、中の開発を進めていき、メディアとしてのpedia から、データベースとしてのpedia に進化させていくのが、TIGALAの使命なんだと考えてます。

とはいえ、坂上聖奈さんという著名編集長の後釜という大役を、気軽に継げるほど甘くも考えておりません。しばらくは、代表取締役 正田圭自らpedia 編集長として頑張りたいと思っています(継続することは最も苦痛で苦手)。

(てか、創業者の坂上さん一度お会いしたい)

面白い会社は僕自ら取材に行きますので、DMからでも気軽に連絡ください。

また、pedia のコミュニティ運営、新サービスなんかも色々考えているので、そこらへんもまたリリース出します。

てなわけで、pedia 一緒にやってくれる人。

急募です!

https://www.wantedly.com/projects/168009

※※裏話※※



システム譲受る際に、システムのエラーが発生し、慌てる鳥居氏(慌てすぎ)。

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