Chief Information Officerとして、事業変革・事業再生を担うものとしての責務
私はこれまでCIOとしての職務、および現在の事業変革・事業再生の実務を通じて、Globisの教育理念である「変革」を、実務として継続的に実行してきた半生であったと認識しています。
■ これまでのリーダーシップ形態:CIO(Chief Information Officer)
C-Suiteの一角としてCIO(最高情報責任者)を担った経験がありますが、この役割は一般的に「IT責任者」として狭く理解されがちであると感じています。
私の解釈では、CIOにおける「Information」とは、単なるコンピュータシステムに限定されるものではありません。むしろ、以下を含む「企業全体の情報基盤」を指すと捉えています。
- Organizational Systems(組織制度)
- Organization Structure(組織構造・体制)
- Organization Operating Model & Technology Architecture(組織オペレーティングモデルおよびテクノロジーアーキテクチャ)
これらのSystemsとStructureを設計・構築・統合し、Operationに接続し、イノベーション(創造と変革)を実現するためのビジネス基盤として再構築・維持・投資・発展させていくことが、CIOの本質的な責務です。
すなわち、CIOには「環境構築能力(Environment Architecture Skills)やデザイン思考」が求められると考えています。
この観点に立つと、CTO(最高技術責任者)やCDO(最高デジタル責任者)とは明確に役割が異なり、CIOはむしろCOOやCFOと密接に連携しながら、組織全体の変革を推進するポジションにあります。
個人的な主観では、私はピュアなCIOではなく、「Operations × Technology Transformation Lead」としての側面が強く、事業変革フェーズにおいてはCOO的な役割を担うCIOと捉えた方が実態に近いと感じています。また、管理会計・財務会計の双方を実務で活用してきた経験から、変革の成果をオペレーションだけでなく、財務的な視点でも捉え、意思決定に接続することを重視しています。
■ DXとBPRの一体的推進
全社レベルで変革を実現するためには、既存のBusiness Operationの深い理解が不可欠です。
現状のオペレーションを理解しなければ、理想状態とのGapを正確に認識することはできません。 このGapを埋めるプロセスこそがTransformationであり、私はDX(Digital Transformation)を主軸に戦略の立案・企画・執行を担ってきました。
また、DXは単独で成立するものではなく、既存の業務プロセスを段階的に再設計し、現場に定着させるプロセス——すなわちBPR(Business Process Re-engineering)と不可分です。 このプロセスは、IT領域におけるアジャイル開発やPoC(Proof of Concept)と親和性が高いと感じています。
■ 日本企業における課題認識
日本企業がITやAI導入において十分な成果を出しきれていない背景には、単なる技術力の問題ではなく、経営レイヤーにおける概念理解の不足があると認識しています。
加えて、TechnologyやSystem基盤を整備したとしても、Operationレイヤーで実際に活用されなければ、その価値は十分に発揮されません。現実にはデータが分散し、全社としての意思決定が困難になっているケースも多く見られます。その結果として、Business Intelligenceをはじめとする各種ツールが台頭してきました。
さらに、Operationの再設計・最適化を目的としたDXのアプローチとしては、Digital TwinやProcess Mining、Digital Natureといった概念が存在します。私自身は、これらの要素に加え、Business Architecture, Operationの視点を統合することで、全社レベルにおいて「最速・最適・高可用性・高冗長性、高レジリエンス」を実現するビジネスモデルの構築を目指しています。
また、変革を実行し、現場に定着させるためには、専門チームの組成が不可欠です。これは、ブラック・ベルトに相当する役割であると認識しています。実際にCIOとして同様のチームを編成してきた経験から、星野リゾートのケースを拝読した際には、自身の実務と重なり、強い共感を覚えました。
■ サーバント・リーダーシップの実践
CIOとして変革を推進する過程においては、単に戦略を設計するだけではなく、自ら現場に入り、オペレーションを支援する場面も多くありました。 特に医療法人や調剤薬局チェーンにおいては、現場は既存業務の維持を優先する特性が強く、国家戦略、企業戦略やDX戦略の理解が十分に浸透していないケースが多く見られます。 そのため、現場の理解と信頼を得るために、現在でもごく一定割合で白衣を着て業務に関わることがあります。 このような行動は、サーバント・リーダーシップの実践そのものであり、「変革を現場に根付かせるための手段」であると位置づけています。
■ 感情と論理の統合としての変革推進
医療業界のように歴史が長く、人の生命に直結する領域においては、変革は一筋縄では進みません。理想の医療を実現するためには、強い意志と熱意をもって現場に語りかけ続ける必要があります。特にOperationレイヤーにおいては、必ずしもロジックだけでは人は動かないという前提に立つことが重要です。
実際の医療現場では、感情的側面の影響が極めて大きく、論理のみで変革を推進することは困難です。したがって、論理的な正しさに加え、感情や感性にも訴えかけるアプローチが不可欠であると認識しています。一方で、経営層に対しては、合理と条理のバランスを取りながら、意思決定を支える構造的な説明が求められます。
そのため、現場においては小さな成功体験を着実に積み重ねることを重視しています。このプロセスは時間と労力を要しますが、継続することで現場と経営双方からの信頼が蓄積され、結果として変革は定着していきます。
さらに、その段階に至ると、変革の成果は感覚論ではなく、管理会計・財務会計の観点から説明し、検証する必要があります。財務的には、Working Capitalの最適化、収益性およびキャッシュフローの改善といった形で効果が現れます。これらは、オペレーション効率の向上、業務の合理化・省力化、さらにはIntelligent Automationによる業務自動化を通じて、最終的には人件費構造の最適化にも接続されます。
私自身もその必要性に直面し、税理士や公認会計士の方々と継続的に議論を重ねる中で、アカウンティングおよびファイナンスを実務上の意思決定に接続してきました。これらの経験は、現在の金系科目に対する理解や関心の土台となっています。
私はこうしたプロセスを通じて、CIOとしての職務を全うすると同時に、事業変革者としてのキャリアを形成してきました。
■ 現在のリーダーシップ形態:事業再生領域(Business Revitalization)におけるリーダーシップへの挑戦
現在は、医療法人における事業再生領域に関与しています。この領域では、これまでの事業変革とは異なる性質のリーダーシップが求められると感じています。
事業再生は複数のフェーズに分かれますが、私のポジショニングは、「そもそも再生が可能か」、「どこまで関与すべきか」を見極めるアーリーフェーズにあります。 また、医療法人という特性上、組織全体が構造的に疲弊しているケースも多く、Operation、Back-Office、Executiveの各レイヤーにおいて、複合的な問題が同時多発的に発生しています。
そのため、全レイヤー・全セグメントを横断的に把握しながら、現場を往復しつつ、問題分析・施策立案・実行までを一体で進める必要があります。
加えて、多くのケースで慢性的な赤字経営が続いており、財務状況も極めて厳しい状態にあります。こうした環境下では、McKinsey 7Sのうち、特にStructure・SystemsといったHard-Sideを迅速に変えていく必要があります。
一方で、現場の抵抗は想像以上に強く、単純なトップダウンでは機能しません。また、経営層を動かす局面では、結果として厳しい交渉(ハード・ネゴシエーション)になることも少なくありません。
さらに、公的資金の投入などにより、危機意識が希薄化しているケースも存在し、変革の必要性そのものを再定義するところから始まることもあります。
場合によっては、外部公的機関や第三者法人との連携・提携に至るなど、ステークホルダーの調整も高度に複雑化します。
こうした環境では、極めて高い負荷が継続的にかかります。数カ月単位で強い緊張状態が続くこともあり、視野狭窄に陥らないためにも、フィジカル・メンタルの両面でのセルフマネジメントの重要性を強く認識しています。
一方で、現場は慢性的に疲弊しているため、コンパッション・リーダーシップを基軸に支える必要があります。自身のストレスを対外的に出さず、冷静さを保ちながら的確な指示を出すと同時に、必要に応じて支援側に回るなど、状況に応じてリーダーシップスタイルを切り替え続けることが求められます。
また、この領域では常に緊急時に近い意思決定が求められるため、高い緊張状態の中で迅速かつ的確に判断し、実行まで一気通貫で進める必要があります。
こうした経験から、現在求められているリーダーシップを持続的に体現するためには、ストレス・マネジメントの高度化が不可欠であると感じています。 またその延長線上で、ファシリテーションおよびネゴシエーションといった対人スキルのさらなる向上が求められていると認識しています。すなわち、力強く粘り強いコミットメントに加え、クライアントフェイシングの同時両立が必要となります。
■ 将来のリーダーシップ形態:医療・公共領域におけるテクノロジー & 戦略コンサルティングに求められるリーダーシップ
これまでのCIOとしての経験、そして現在の事業再生領域における実務を通じて、私自身のリーダーシップ観は大きく変化してきました。
特に、単一のリーダーシップスタイルで変革を実現することは困難であり、状況・フェーズ・ステークホルダーに応じて、意図的にスタイルを切り替える必要性を強く認識しています。
今後、医療・公共領域におけるテクノロジー & 戦略コンサルティングにおいては、以下の要素を統合したリーダーシップが求められると考えています。
- 構造を設計し、変革を実現する「設計者」としての視点
- 現場に入り込み、信頼関係を構築する「実行者」としての視点
- 複雑な利害関係を調整する「交渉者」としての視点
- 困難な状況下でも支え続ける「支援者」としての視点
これらを状況に応じて切り替えながら、組織全体の変革を推進していくことが、今後の自身に求められるリーダーシップの在り方であると考えています。
また、医療・公共領域は社会的影響度が極めて高く、単なる効率化や最適化ではなく、「持続可能性」や「社会的価値」の観点を踏まえた意思決定が不可欠です。
そのため、テクノロジーと戦略の双方を理解しながらも、最終的には「人」と「現場」に向き合い続ける姿勢が重要であると認識しています。
法人レベルで組織を変革していくためには、レイヤーや職種・立場を問わず、フェアかつフラットにコミュニケーションを取ることの重要性を強く感じています。 その意味でも、皆さまとこれまで以上に交流を深めながら、互いに学び合える関係を築いていけたら嬉しく思っています。
まだ試行錯誤の途上ではありますが、これまでの経験を土台としながら、周囲の方々との関わりの中で学び続け、実務を通じてこのリーダーシップを磨いていきたいと考えています。
最後まで、お読み頂き、ありがとうございました。
今後も、よろしくお願いいたします。