Draper Universityで学ぶシリコンバレーのVCでは何が好まれるか?|Week2
指数関数的成長無きところに投資なし!
「エクスポネンシャル・グロース」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「指数関数的成長」という意味で、ここシリコンバレーにおいてスタートアップに最も求められている要素はこの指数関数的成長なのです。
指数関数というのは、ある要素を追加したらアウトプットが追加的に一定量増えるようなものではありません。製造業の現場では材料に対するアウトプットは常に一定ですが、実際の商売は、それがとんでもないゲームチェンジャーであった場合、投入量に対して、アウトプットが何倍、何乗にも増加するということは起こります。
経済学者であるシュンペーターは新たな効率的な方法(イノベーション)が生まれて市場を一瞬にして圧倒する現象を「創造的破壊」と呼びました。当時のイノベーションは主にテクノロジーを想定していたはずで、今でもイノベーションの源泉はテクノロジーですが、まさにこのイノベーションを掴むと、起業は市場を席巻し、業績は指数関数的に成長する可能性があります。
商売の鉄則として「売ること」が最も重要であることには違いないと思います。とにかくいい製品をつくっても売ることができなくては届かないからです。そのための営業人員やマーケティング戦略は極めて創造的かつ、市場創出的である必要があります。
でも、ちょっと待ってください。そもそもその狙っている市場はエクスポネンシャル・グロースが期待できるような市場でしょうか。もし、今は思いつかなくても他に指数関数的成長が期待できる場所は見つかるでしょうか。
特定の人にものすごく愛されるプロダクトを作ることも難しいことですが、たった1人のためのプロダクトであれば市場として成り立ちません。しかし、例えば「加熱式タバコ」のように特定のユーザーだけれども、多くの人が熱狂的に購入する可能性がある市場であればエクスポネンシャル・グロースが期待できます。
ここで、スタートアップが目指す市場は、単純な現在の市場規模ではなく、将来的な市場の拡大を期待させるイメージを描ける市場であることであることが重要です。
例えばUberが参入した市場は「タクシー市場」であると定義していれば、その価値は数十億ドルといったところでしょう。しかし、タクシー市場ではなく「ライドシェア市場」と定義するのであれば、これまで電車や自家用車、そしてバスに乗っていた人のユースケースすらも市場になりうるのです。
ただ、この指数関数的成長は最初は非常に緩やかです。当然、営業を行えば掛けるコストに比例して顧客は増えますが、それは成長の極めて初期的な成長でしかありません。
そして、人間は指数関数を捉えることが苦手な生き物です。それでも、確かなユーザーからの手応えがあれば前に進むしかありません。もし、世界に広がるサービスを検討しているのであれば、それは指数関数的に成長を期待させるような絵を描けていますか?
https://500startups.jp/exponential_change/
馬鹿げたアイデア無きところにグロースなし!
エクスポネンシャル・グロースを実現するためには、既存の枠組みを取り払った思考が必要です。
それはすなわち「馬鹿げたアイデア」と言ってもいいでしょう。ベンチャーキャピタリストから投資を受けるための確実な方法というのは絶対にありません。しかし、彼らが何を恐れているのかはわかります。他のファンドに取られてしまい、そちらでエクスポネンシャル・グロースされてしまうことです。
ならば、エクスポネンシャル・グロースを狙えそうなビジネスを持ってくればいい、それはあまりに現実味のなさそうに見えるため「馬鹿げたアイデア」に思われることもあります。それでも、それでいいのです。ユーザーが強い愛着心を持ってくれていればなおさら、それはやったほうがいい。
ある程度の成功しか期待できないビジネスであれば、ベンチャーキャピタリストに投資を受けることはやめたほうがいいでしょう。それは株式割合という意味でもそうですし、そもそも興味を持たれないからです。それに早めにキャッシュが回収できるのであれば、銀行や中小起業支援も受けられる可能性もあります。
コペルニクスは太陽が地球の周りを回っていると信じられていた時代に、地球が太陽の周りを回っているというアイデアを持っていましたが、その研究精度や時代背景等もあり発表することをためらったといいます。
地平線の彼方は滝になっているという考え方も一般的に信じられていた時代がありますし、空を飛ぶことができる日が来るとは誰も思っていませんでした。ローソクがなくても電気で明かりを灯すことができる様になったのはエジソンの発明によるものです。
このように、科学と技術は人類の進歩と共にありました。
100年前につくられた近代の社会システムもこうした技術的成果の上に、社会がうまく回るように様々な取り決めを行ったことに始まっていますが、そろそろそのシステムが時代に合わなくなっている部分が出ています。
それが年金や中央銀行制度、そして公共施設、環境破壊、コミュニティーの退化など様々なところで、問題として浮上しつつあるのが、今の日本やアメリカの抱える大きな課題として認識され始めています。
法律を守ることは社会において最も大事なことの一つですが、その法律が我々を苦しめているのであれば、一部の人の利権のために働いているのであれば、その法律を廃止したり変えたりすることはできないでしょうか。
最終的に多くの人のためになるのであれば、今馬鹿げていると思われることになんの躊躇もいりません。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/34571
リーダーになるのではなく、リーダーに選ばれるのだ!
良いリーダーとは何でしょうか?「人の話を聞く」「前向き」「決断力がある」「人生を楽しんでる」いろいろと要素はありますが、誰しもそうなりたいと願っているのになかなかできないものです。
アメリカでエグゼクティブ向けのコーチングを受けてみて最も一番だと思ったこと。それは、
「自分の過去と向き合い、それを周囲に話すこと」です。
どんなに職位が高い人、お金を持っている人でも、実はその過去には子供の頃の家庭の事情や境遇、そして自分の意に沿わない選択を強いられた経験があったりします。
普段はそれを覆い隠して、というかそれを表面的には忘れて生きていますが、家に帰ったときの漠然とした不安や、一人になったときの寂しさはこうしたマイナスの過去から生じています。
これを人に話すことは大変勇気のいることです。しかし、あなたが真剣に話せば周囲の人も同じような境遇について話してくれるでしょう。なにもつらいことがない人はいませんが、それを人に隠して生きています。
まず、リーダーがそのこころを開き、自分について良く知ってもらうこと、そしてその勇気があることを示したときに、周囲の人は一層そのリーダーに力を貸したいと思うに違いありません。
普段の人間関係ではそういった真剣なコミュニケーションは行われず、表面的な会話に終始します。そういった環境ではなかなか自分の話をしにくいものです。こういうときはそのための場を開催しているセミナーに足を運んでみると良いでしょう。
私もこうした自己啓発系のセミナーについては否定的でしたが、今回シリコンバレーで始めて参加してみて、周囲の人がそのパワーを出しているところを見て、自分も最初は恥ずかしながらも挑戦してみました。
やはり、自分の中のエネルギーを感じましたし、普段はすこし怖そうなキャピタリストもステージの上で涙を流しながら話す姿を見て、同じ仲間なんだなと共感することができました。
日本人も含めアジア系の人はこうした感情表現がとても苦手です。それでも、一度やってみると思ったよりもスッキリとした気分になります。リーダーたる尊敬を得るには、リーダーシップを発揮するだけでなく、人の心を掴む弱い部分をオープンにできるという強い心が必要です。
シリコンバレーのシードに投資するベンチャーキャピタルは今回取り上げた「エクスポネンシャル・グロース」「馬鹿げたアイデア」「リーダーシップ」を見ています。もちろん、チームやファイナンスも大事なのですが、人やテクニカルな要素を揃える前に自分一人でもこの3つであれば揃えることができますので、まずはこの3つを意識しておくことが大事だということです。
ピッチスライドなどテクニカル面で参考になる記事
スタートアップ プレイブック
https://bfore.hongotechgarage.com/entry/startup_playbook_sam_altman_y_combinator
スタートアップのビジネスアイデアとキャピタリスト詣でのために必要な要素について、Y Combinatorからのアドバイスが凝縮されています。基本的にどのベンチャーキャピタリストも同じ視点で見てきますのでマストです。
Airbnb の初期ピッチ資料は YC の 3 分ピッチテンプレート通り
https://medium.com/@tumada/3-min-pitch-airbnb-203021531522
シードラウンドでは3分間ピッチが基本です。(場合によっては2分ピッチ)Airbnbのピッチ資料は完璧ではありませんが、成功事例としてDraper Universityではお手本にされています。このスライドで6000万円を調達したのですから説得力があります。