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2009-10-16 酔っぱらいの話

 俺はもう定年でこんな風に遊んで回ってばかりいるが、昔は東北大の金研の近くの郵便局で働いてたんだ。大阪から来たという金研のお偉い教授がそこをしょっちゅう利用しに来てて、その教授が来ると職員は皆、震え上がってしまってね。なぜかって、その教授、取引でおかしいところがあると、厳しく追及して、職員を徹底的に絞り上げるんだからね。局内では、ほんとに恐れられていた有名な教授だよ。まぁ、俺から言わせりゃ、職員はみんな勉強不足だ。自分の管轄の、しかもよく利用する部分しか勉強してないんだから。郵便局にはちゃんと国が作ったマニュアルってのがあって、それに従って、お客様の御意向に沿うように、話を進めればまず大丈夫なんだ。あいつらの勉強が中途半端なのを、そこはさすが東北大の教授。すっかり見抜いちまって、一喝しちまうんだ。頭の良い奴ってのは、誤魔化されない。目が節穴でない。俺はその点、ちゃんと勉強してて、一割、二割、いや、五割くらいは出鱈目でしゃべってたんだが、ちゃんと勉強してると、出鱈目をしゃべっても何とか筋が通るらしく、その教授にすっかり気に入られちまった。職員は俺がその教授を相手していると、安心するし、教授も俺じゃなきゃ、怒鳴り散らさねばならないので、いろいろと都合がいいんだ。まぁ、何が言いたいかっちゅうと、勉強は大切だっちゅうことだ。俺がマニュアルを勉強すれば良いだけなのに対して、君は難しい応用問題を解かなきゃならんのかもしれんが、勉強せねばまず話にならん。精進したまえ。そのうち良いことがあるだろう。

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