唱歌/雪本剛章
唱歌とは、戦前まで音楽教育用に作られた官製の歌曲です。「故郷」「蛍の光」など。叙(抒)情歌は、自然の美しさや四季の推移、郷愁を題材に、日本人の心を情緒的に表現した歌曲の総称で、唱歌や童謡、歌謡曲などの一部が含まれます。
教科書から消えた「われは海の子」「村のかじや」
1986年春、文部省唱歌の「われは海の子」「村のかじや」などが、小学校で使われる音楽の教科書から姿を消しました。
過去の学習指導要領改訂で「共通教材」からはずされた後も、2回の教科書改定を経てなお残っていました。
しかし、1985年の教科書改定によって、ついに戦後生まれの新曲などに座をあけ渡しました。「ゆき」「つき」などの曲も、残るは1社の教科書のみとなりました。
いちまつのさびしさを感じる父母も多かったようです。ただ、当時の小学生にもっぱらの人気は、8ビートのリズム感のある曲でした。
指導要領改定
「われはうみのこ しらなみの」など、代表的な文部省唱歌は、1977年の指導要領改定で、どの教科書にも必ず載る「共通教材」から外されました。だんだんに掲載が減っていきました。
1985年の改定では、東京書籍と教育芸術社の2社が6年生の「われは海の子」を、教育出版が4年の「村のかじや」を外しました。
その結果、現在音楽教科書を発行している4社すべてからついに姿を消しました。
低学年で習う「ゆきやこんこ あられや・・・」で始まる「ゆき」も2社が外しました。、「虫のこえ」や「海」も1社が外しました。いずれも1、2社に残るだけになりました。
「みんなのうた」やポピュラーソングへ
文部省唱歌は、明治以降文部省著作の教科書に載せられた歌の総称で、その数はざっと数百曲。そのうち戦時色の強いものなどが戦後になって教科書から消えました。
戦後の新しい歌やNHKの「みんなのうた」の登場曲、ポピュラーソングなどにとってかわられました。
雪本剛章