超心理学は超常現象と呼ばれる現象のうち人の心が関わる部分を研究する分野です。
世界的には例えば、何万人もの人が一斉に心を動かすような事象(スポーツの試合、911テロ、ローマ法王の来訪等)が起こった瞬間、付近に設置された乱数発生器が、数十万分の1程度の非常に低い確率でしか起こらないような出力パターンを発生するといった現象が観測されるなど、事例研究が進んでいます。
これは「念力」もしくは「遠隔操作」と呼ばれるものにカテゴライズされるものです。
念力と言うと一般の人は、能力者が手をかざして何か椅子などのマクロな物体を動かすというようなものを想像するかもしれません。
しかし科学的な研究として実際に行われている超心理学実験は、そのような手品や宴会芸のようなものとは全く違うものです。
さらに数々の実験や観測事例から言えることは、仮に超心理現象を起こす何らかの作用があったとしても、通常それは非常に弱いものだ、ということです。
多くの人が関与するか多くの時間をかけるかした上で、統計をとってやっと有為の差が見てとれるというような代物です。
それでも現代科学では今のところ説明不可能でかつ「存在しない」とされている現象の蓋然性が認知されるのであれば、影響は大きいと言えるでしょう。
当然それを説明する新たな理論も求められるようになります。
それは物理学のパラダイムシフトにつながり得るものです。
事例収集をしている人たちは、やはりそれらの現象の存在を確信しているようです。
しかし私自身は、科学コミュニティのより多くの人に認知してもらうためにはもっと多くの研究グループが事例収集に参加し、もっと事例を積み上げることが必要なのではと思っています。
日本では明治大学の石川幹人教授が有名であり、乱数発生器を使った国際的な実験イベントにも参加しているようです。
私自身は理論物理学の研究を永年やってきており、超心理現象を、科学的見地を崩さずあくまで理論物理学的に研究してきました。
事象の存在・非存在については上述のとおり、現時点では態度を保留しています。
しかし「もし存在するなら」との仮定の下、それを説明する理論モデル、「PF(Parasite Fermion)理論」を場の理論を用いて定式化し、最初の論文を査読付き雑誌に2013年発表しました。
※実験装置や予算に縛られず研究テーマが比較的自由に選べること、興味の赴くままにテーマを選ぶことができることが、私が実験物理学でなく理論物理学を選択した理由です。
それ以後はいくつかの関連する論文を出しつつ、PF理論の内容やその指し示す世界観を一般向けに講演するなどしてきました。
そしてそこで多くのスピリチュアリストや宗教関係者、自己啓発業界の人々と知り合いました。
それは超心理現象を扱うPF理論の性質上自然なこととも思えます。
2019年からは本格的にセミナービジネスを稼働させ、HPも整備して自分で集客し、稼働させました。
胎内記憶で名を馳せる産科医の池川明(横浜市金沢区在住)と知り合ったのもこの頃です。
彼は非常に協力的であり、自分のセミナーに私を招いたり、自身の著書に私を登場させたりもしてくれました。
胎内記憶の国際学会でも、私自身は不参加の中私の研究内容を紹介してくれました。
知名度がある彼の影響力は当時ビジネス駆け出しの私にとってはありがたいものであり、自分のセミナー用のスライドに彼を登場させるなど積極的に関わらせてもらいつつ、集客に役立たせました。
かくして多くのスピリチュアリストらと付き合いを始める中で、やがて気づいたことがありました。
それは世の中には多種多様な疑似科学が蔓延している、ということです。
これは大学の研究室にいたころは全く知らなかったことであり、いかに自分が井の中の蛙であったかを思い知らされました。
彼らはその多くが、「引き寄せの法則」その他の偽りの自然観や法則性を主張するニセ「量子力学」を信奉していました。
そこでは「エネルギー」「波動」「次元」といった科学用語、「ゼロポイントフィールド」のような科学っぽい造語が駆使され、あたかも科学的根拠があるかの如く脚色されたスピリチュアルな世界観がもてはやされ、そして講座を含む高額商材が売り買いされています。
私の講座にくる人たちは、本当に科学を学ぼうとしているのではなく、単にチェリーピッキング的に「科学の言葉」を欲していただけなのでした。
「量子力学によれば私たちの身体も波でできており、波長を整えれば健康になる。波長を整え良い波長を持てば同じような良い波長の人と共鳴して引き合い、より高みに行ける」というような、彼らにとって都合の良い科学の言葉を。
このことに気付いた時、遅まきながら私は大変ショックを受けました。
私のPF理論を学んで、自分たちが日々信奉し商売道具にしている占星術やら算命学やら胎内記憶やらに「科学的お墨付き」を与え、新たに得た科学の権威を笠により一層商売を繁盛させたいのです。
それに気づいて私は、すぐに自分のセミナー稼業を凍結しました。
同時にスピ関係の人との関係を一切断ちました。
この時までの関係構築が仇となって、(一)日本胎内記憶教育協会の講座の教科書には、今でも私のPF理論が載っています。
今さら削除しろとも言えず、痛恨の極みです。
その意味でも、科学思考の価値を広め訴えることは重要なことだと思っています。
スピの人たちと関わったこの頃の自分の行動を反省し、疑似科学批判とそれへの対策、科学的とはどういうことか、科学的にものを考えることはなぜ大事なのかをより多くの人に広めることに残りの人生をささげることを決意して、今があります。
ちょうどその頃、著名な理論物理学者がデマを流している実態を知りました。
※「デマを吹聴する『理論物理学者』保江邦夫」(ブログ”Beyond Visibility”)
https://note.com/parasitefermion/n/n057798f65487?sub_rt=share_pw
専門家がその専門分野で意図的に誤情報を流布するというのは、本当に悪質だと思います。
このことが私の決意をより一層強固なものにしました。
それ以来、私は著作やネットラジオ、動画配信、ブログ執筆を通じて、科学的思考の重要性を伝える活動を続けています。
単なる批判にとどまらず、「なぜ人は誤情報を信じやすいのか」という心理的背景や、「科学的であるとはどういうことか」という根源的な問いを、多くの人と共有し議論してきました。
疑似科学や風評は、単なる知識不足や無理解だけでなく、人の希望や不安、そして信じたいという欲求につけ込みます。
だからこそ、効果的な対策には科学的な正確さのみならず、相手の心に届く伝え方が不可欠です。
私は、理論物理学者としての厳密な思考と、現場で人々と接してきた経験をあわせ持ち、「批判」だけでなく「納得と理解」を伴う発信ができると自負しています。
科学の信頼性を守ることは、単なる学問的課題ではなく、社会全体の健全性を守る営みです。
私は、これまで培ってきた専門知識と経験をこれからもこの活動に生かし、疑似科学や誤情報に揺るがされない社会をつくるために、微力ながら力を尽くしたいと考えています。

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