Vol.06 第1章:すべては、あの日から始まった
Vol.06「金か、心か」第1章:すべては、あの日から始まった
そこで、ひとつのことを始めることになった。
イベント企画団体を立ち上げた。
名前は「高等遊民プロジェクト」。
高等遊民とは、夏目漱石の小説『それから』の主人公、代助のような、
高い教育を受けながらも経済的に困らず、働かずに読書や研究に時間を使って生きる人のことを意味する。
ここでも「金」を意識して、このような団体名にした気がする。
イベント会場となるディスコを借り切り、協賛スポンサー企業を探し出し、
他大学のサークルに声をかけ、
いわゆるパーティーのチケットを売る。
今思えば、完全に“事業家ごっこ”だった。
学生の身分でありながら、どこかで自分はビジネスをやっているつもりだった。
だが実態は、まだ何もわかっていなかった。
ただ、あのときの自分にはひとつだけあった。
「金の側に行く」と決めた以上、何かをやらなければならない。
だから動いた。
見よう見まねで人を集め、
それっぽく企画を立て、
それっぽくビジネスをしている気になっていた。
だが、現実は甘くなかった。
人は思うようには動かない。
チケットは簡単には売れない。
計画通りには何も進まない。
そして気づく。
「自分は、何もわかっていない」
ビジネスをやっている“つもり”だっただけで、実際には、ただの素人だった。
それでも、当時の自分はどこかで見栄を張っていた。
「自分は違う」
「普通の学生ではない」
そんなふうに思いたかったのかもしれない。
だが、現実は違う。
結果が出ていない以上、それはただの思い込みでしかない。
ここで、最初の挫折を味わうことになる。
思い描いていたようにはいかない。
簡単に稼げるわけでもない。
むしろ、やればやるほど、自分の未熟さがはっきりと見えてくる。
「こんなはずじゃない」
何度もそう思った。
だが、それでもやめなかった。
なぜなら、もう決めていたからだ。
金の側に行くと。
そのためには、現実を受け入れるしかない。
ここで、ようやく気づく。
ただ動くだけではダメだ。
「どうすれば勝てるのか」
それを考えなければ、意味がない。
このとき、初めて“本当の意味でスタートラインに立った”気がした。
そしてここから先、何度も突きつけられることになる。
金を取るのか、心を取るのか。
その問いから、逃げることはできないのだと。