このケーススタディは、自分のオンラインポートフォリオから再投稿されています。
英語また日本語の原文を読むには、是非、下記にのリンクにアクセスしてください。
プロジェクト概要
事業:東京でのカフェ、宿泊、インバウンド
任務:私はカスタマーエクスペリエンスマネジャーとして、チーム3名を指揮しながら、顧客へのアプローチ、データ収集と分析及び創造的問題解決、社内のステークホルダーへ実用的なソルーションの提供を迅速に行いました。
目標:当社が宿泊からカフェ事業に移行するにあたり、既存の顧客満足度を高め、売り上げに繋げる方法を確立すること。
成果
- 店内カフェの売上高を1ヶ月で8.5%増加させたこと。
- オンライン顧客満足度スコア(CSAT)を向上させたこと。
- 当社スタッフの満足度スコアを向上させたこと。
- ブランド再設計のための追加コストを800万円節約したこと。
チーム:カスタマーエクスペリエンス(CX)チーム、マーケティング担当、人事担当、店舗マネジャー、店舗また事務所スタッフ
主な活動:顧客満足度調査の実行、カスタマージャーニーマップ作成、ステークホルダーの説得、店内エクスペリエンスの全面的調整、スタッフ満足度調査の実行、動機づけ面接(motivational interviewing)、目標設定と行動計画、ブレインストーミングの指揮、部門間のコーディネート
目標
事業情勢
2020年新型コロナウイルス感染拡大の旅行業界への影響により、当社はフルサービスのホスピタリティ(宿泊・カフェ)から、カフェのみの事業へ移行することになりました。
私が指導したカスタマーエクスペリエンス(CX)チームは、既存顧客また宣伝しやすい顧客の飲食売上、満足度を高める方法を特定する任務を負っていました。
最初の仮説
当社の社長は、売上不振がブランドのイメージダウンに繋がるため、カフェに特化した新たな事業として紹介するために、新たなロゴの作成やマーケティングの再設計が必要と考えました。
しかし、不安定なコロナ禍で、全体的なブランドのオーバーホールに資金を費やすことはリスクが非常に高く、実際にカフェの売上に貢献するとは思えない状況でした。
私の計画
そこで、私の監督下でCXチームは、既存の顧客間で最も効果的に売上や評判を高める方法を検討し、また、以前に宿泊事業に従事してきたスタッフ達が競争の厳しい東京の市場で、より質の高いカフェサービスを提供できるように、迅速でより費用効果の高いニシアチブを手をつけていきました。
カスタマーエクスペリエンスの検討
カフェは上野の中心に位置しており、顧客基盤が非常に多文化的でした。
我々は来店客と直接接触し、居心地の良いカフェ経験談を伺い、顧客側から見た多彩な意見をより深く理解することを最優先事項としました。
すると、当カフェの実際のアピールポイント、またさらに改善する必要のある点がわかるようになるはずです。
顧客満足度調査
まず、できるだけ具体的で実用的なデータを収集することから開始しました。
マーケティング部のマネジャーと協力して、部門間の有用性を最大限に生かしたオンライン調査を開発しました。。
日本語、英語、また中国語のバージョンを作成し、多言語で同時に行いました。
CXチームとカフェ現場マネジャーが提携して、できるだけ多くの顧客に調査への参加を依頼しました。調査の初回目は、150人近くの参加者からの回答を受けました。
1対1の顧客との面接
オンライン調査に加え、私は顧客の同意を得て1対1の個人面接も自ら行いました。私は特にこの面接が有効であったと考えました。
- 当カフェの店内環境と経験に関してより細かく、具体的なフィードバックを取得することができました。
- 参加した顧客は、自分の意見を反映して貰えると感じ、大半の方はリピーターとなリました。
顧客からの意見の事例
カスタマージャーニーマップ
結果として、社長の仮説に反し、実際には当社のブランドやマーケティングは主な問題ではないと分かりました。
これを通じて、当社のブランドとのあらゆる接点に対して顧客の満足度を図り、特に重要となる主なペインポイント(痛点)を見出すことができました。
結果として、社長の仮説に反して、実際には当社のブランドやマーケティングは主な問題ではないと分かりました。
実際に調査した顧客には、その要素がアピールポイントであるとよく言われました。
一方で、今までに顧客の希望に沿っていないところは、店内飲食の経験そのものだと発見しました。
このペインポイントにより、顧客がより長くカフェに滞在し多く注文したり、口コミの投稿や、カフェを再訪する機会を妨げていました。それにより、既存客や宣伝しやすい顧客からの潜在的な販売力を逃す状態となっていました。
この情報を踏まえ、私とCXチームは、根本的な2つの質問を検討しました。
①どうすればカフェの居心地や使いやすさが上昇するでしょうか?
②どうすればスタッフと顧客の間で思い出に残るやりとりが作れるでしょうか?
これらの質問を基づき、私は2件のイニシアチブを指導することにしました。 1件目は、カフェの店内飲食の飲食経験の改善にフォーカスし、2件目はより良い接客環境の育成を行うことを目標としました。
下記は、私が両方の問題を解決できた経緯を示します。
店内の経験を改善
店内の観察
私とCXチームは2週間カフェ現場で働き、顧客の行動を直接観察し店内での経験のハードルの原因を見極めることに取り込みました。
気になったポイント
観察を通じて、顧客がバーカウンターに座ることが滅多にないことに気づきました。
以前顧客から取得したフィードバックを参考した上で、私はカフェの設備の配置により、顧客がバーカウンターに座ったりスタッフとスムーズに接触したりすることを妨げている、と考えました。バーカウンター上のスペースの多くは、ウォーターサーバーやデザートケースのような大きい設備に覆われている状態でした。
こちらは改善前の状態です。
解決方法
私たちは、「お客様に提供したい本当に必要不可欠なものは何だろう?」と問いました。1つずつ状況を確認し、カフェの現場マネージャーと協力して以下の変更を行いました。
- 数多くのメニューの代わりに、ダイニングエリアの全ての客席から見える、バーの後ろにある大きなメニューボードを据え付けました。
- テイクアウト・デリバリーの器などをカウンターの後ろに置けるスペースに片付けました。
- ウォーターサーバーを、邪魔にならずお客さんが手軽に利用できるレジのそばに移しました。
- デザートメニューをメニューボードに掲載するようにし、デザートケースを完全に取り外しました。
改善後はこのようになりました。
これまでは、お客さんの注意を引く要素が多すぎました。
これらを整理し、簡単に並び替えただけで、お客さんが気軽に着席し、スタッフと繋がり、くつろいで注文ができる環境を整備することができ、全体の売り上げに繋がる大きな一歩となりました。
顧客・スタッフの経験を築く
もう1つの問題が残りました。どうすればスタッフと顧客の間で思い出に残るやりとりが作れるでしょうか?顧客にとって、接客とサービスの寒さは主なペインポイントとして挙げられました。
この接客の問題は、2つの要因とつながっていると考えました。
- 当社のスタッフは元々、宿泊事業のために雇用されました。おそらく、カフェ事業の接客のニーズに上手く対応できるようになるには、追加のトレーニングが必要になるかもしれないと考えました。
- 当社のスタッフは非常的に多文化的でした。日本人のみならずアジア、アフリカ、ヨーロッパ等、様々な人種からなるメンバーで構成され、仕事経験や日本語・英語の能力が人によって大きな差がありました。各スタッフは、当社の最近の事業変化に対し、それぞれ独特で個人的な感性で反応しているであろうと考えました。
スタッフ満足度調査の実行
間違えなく、この状況を有効に検討するには、データが必要でした。
スタッフが職場環境についてどのように感じているかを正直に評価するためには、私はCXチームに、匿名の調査票を作成し各スタッフに配布するように指示しました。
いくつか肯定的な回答もありながらも、スタッフの間共通の、これまでに対処されていない問題点が浮き彫りとなり驚きました。
スタッフからの意見の事例
2つの主な問題が浮き彫りとなりました。
1. 経営部と現場スタッフとの相互コミュニケーション不足
スタッフ対して、企業の理念や方針の変更に対する説明が不十分で、突然に変更となるため、自分の意見は、経営部に届いていないと感じていました。
2. 将来に対する不安
私が推測していた通り、スタッフは新規カフェ事業の環境、またそれに伴う接客のニーズに慣れていませんでした。
私の指揮の下、CXチームはその問題を下記のように対応しました。
マンツーマンでの動機付け面接
スタッフがより積極的に仕事ができ、会社側からより良い評価を受けられるように、また、調査で挙がった懸念に建設的に対処するために、私は各スタッフと個人面談を行いました。
アクティブリスニングと自由形式の質問による「動機付け面接」という面談の技法を活用しました。「動機付け面接」は、この目的に特に有効であると考えます。
- 個人の長所と短所からなる自己分析を誘導すること。
- 個人的およびキャリアの目標を定めること。
- その目標に達するためのハードルになる点を特定すること。
- ハードルを乗り越えるために行動を調整する能力や意欲を評価すること。
- 成功のための具体的なゴールポストと、目的に向かって取り組むための実行可能な計画を作成すること。
スタッフとの動機付け面接により、どのように自分の個性をより自信を持って表現するか、個人の多様な経験やスキルをカフェの職場で活用したりできるかを、積極的に調査し評価することができました。
チームブレインストーミングの指揮
私とCXチームは、面接を通じて個々の懸念の対処に加えて、スタッフと経営部の間のコミュニケーションとチームワークの意識をより強く育む必要がある、と考えました。
社長と人事係の承認を得た上で、全社でのブレインストーミングセッションを2回計画、実行しました。
このブレインストーミングセッションでは、主な目標は3つありました。
- 会社での地位を問わず、全ての意見が平等に共有できるように、全員が参加としました。
- 宿泊からカフェ事業へ移行するための、ブランドを開発するアイデアを創造しました。
- チームワーク、コミュニケーション、及び部門の間の協力の意識を企業理念として設立しました。
ブレインストーミングのテーマは単純で、「今からどのようなカフェを作っていきたいですか」としました。
カフェについてのアイデアを数多く考えだしたことに加え、ブレインストーミングセッションに参加したスタッフや管理者側両方から貴重な機会であったと好評を得ました。
事後の調査では、スタッフは自由かつ積極的に話に参加する機会が与えられたことに感謝し、会社を活気づけられたと感じ、また同様に経営部は、スタッフの熱意や提供されたアイデアの質の高さに印象が残ったそうです。
スタッフとの共感ワークショップ
私は、スタッフが記憶に残るカフェのカスタマーサービスを提供できていることに対する自信を持たせたいと考えました。
このために、私はカフェのカスタマーエクスペリエンスの主要なタッチポイントにフォーカスしたロールプレイのワークショップを主導しました。
1. 暖かい歓迎
何よりも第一印象が大事!初めての方でもリピーターでも、全ての顧客が入店するとすぐにくつろげるような環境を整えるべきでしょう。
2. お客様のニーズを把握
時々、顧客はコーヒーを飲みに行くだけではなく、 リラックスして仕事をするための静かの場所であったり、または社交の場である場合もあるでしょう。各顧客がその瞬間に何を求めているかを理解することは、最適なサービスを提供するための鍵です。
3. おすすめを提案する
顧客が最も気分に合う席、口に合う食品や飲み物を提案して見つけ出すことは、個々の売上を増やすだけでなく、顧客満足度に大きな影響を与え、好評な口コミとリピートになることを招くでしょう。
4. スムーズな注文と支払
この重要なタッチポイントを顧客のためにできるだけ明確かつシンプルに表現すると、カフェのエクスペリエンスをより長く楽しめる時間を与えられるでしょう。
5. 聞き取り、言い返し
フィードバックがプラスであろうとマイナスであろうと、顧客の気持ちを積極的に傾聴し対応することは、カフェと顧客間の関係を育むために必要不可欠でしょう。
6. 感謝を表現し再来を期待する
顧客に挨拶し、来店に対しての感謝を個人的に伝えることは、記憶に残るカフェのエクスペリエンスとなり、今後その顧客が再度来店する機会を与えることに繋がるでしょう。
成果
両方のイニシアチブの結果は、すぐにはっきり見えてきました。
☆店内カフェの売上高は1ヶ月で8.5%増加
☆オンライン顧客満足度スコアを向上
☆ブランド再設計のための追加コストを800万円節約
この2つのCXイニシアチブにより、翌月すぐに店内の売上が増加し、改善後の接客サービスにより、当カフェに対するオンライン口コミの件数も評価も順調に増えました。
さらに、以前に提案されていたブランドのオーバーホールのための追加コスト等含め、800万円程度を節約できました。
私の行なってきたイニシアチブの成果は、特に2020年のコロナ禍の金融不安の中、当社は宿泊からカフェの事業への難しい移行を迫られた状況にも関わらず、売上を安定させ上方に転じることを可能にしたことから、会社に対し有益な貢献ができたと考えます。
勉強になったこと
優れたカスタマーエクスペリエンスを提供することは、チームの協力あってのことであり、CX担当の役割は、全てのメンバーがチームの目標に対しての理解や動機を共有していることを確認し、認識させることです。
それに加え、顧客が会社のサービスと接触する全てのタッチポイントを理解した上、どんな小さな事でも、可能な限り好印象な記憶として残させることが重要です。
CX担当としての経験を通して、従業員の満足度や社内のコミュニケーション等の内部事情が、同様に外部の状況にも重要な影響を与えることを学びました。
CX担当という役割は、会社の内外の全対象を把握し、顧客と従業員の両方に共感を持って耳を傾け、より有意義な方法で接客のポイントの改善に繋がる行動を取ることが必要であると考えます。