【COO/CHRO代行のリアル②】事業は伸びるのに、社長は疲弊する。なぜか?
【サマリー】
事業は好調、売上は伸びている。でも社長は疲弊している。成長企業が必ず直面する「10億の壁」。その壁を越えるには「No.2」を育てる必要がある。CHRO代行として2年間、副社長候補を育成し、売上2.5倍・社長の負担50%削減を実現した実例を公開。
【この記事で分かること】
・なぜ、事業が伸びるほど社長は疲弊するのか
・成長企業の「10億の壁」とは何か
・「No.2」「右腕」を育てる具体的なプロセス
・質問力で気づきを促し、実務で育てる二刀流の育成法
【こんな経営者におすすめ】
・年商5〜10億、従業員10〜30名規模の成長企業
・事業は伸びているが、自分が動かないと何も進まない
・優秀な社員はいるが、経営判断ができる人材がいない
・「No.2」「右腕」を本気で育てたい
【本文】
事業は好調。でも、社長は疲弊している。
「売上は伸びている」
「顧客も増えている」
「でも、楽になった気がしない」
神奈川県で設備工事会社を経営する社長が、こう漏らした。
年商5億円、従業員12名。事業は順調に成長している。
でも、社長は疲弊していた。
なぜ、事業が伸びるほど、社長は疲弊するのか?
答えは、「組織が追いついていない」からだ。
事業が伸びるほど、
・顧客対応が増える
・社員の悩みが増える
・意思決定が増える
・トラブルが増える
全て社長が対応していたら、いつか限界が来る。
1日24時間。社長も人間だ。
いくら優秀でも、一人では限界がある。
成長企業の「見えない壁」
事業成長には、フェーズがある。
年商3億まで:
社長の営業力で伸びる。社長が全部やっても、何とかなる。
年商5億まで:
優秀な社員2〜3名いれば、何とかなる。社長が最終判断すれば、回る。
年商10億の壁:
組織がないと、絶対に越えられない。
この壁を越えるには、「No.2」が必要になる。
「No.2」とは何か?
社長と同じ視座で、事業を考え、判断し、実行できる人材だ。
・副社長
・執行役員
・事業部長
彼らが育てば、社長がいなくても、会社は回る。
でも、多くの企業では、「No.2」が育っていない。
なぜか?
「社長が全部やる」から、「社員が育たない」
社長は優秀だ。だから、自分でやった方が早い。
でも、それでは社員が育たない。
・社長が全部決めるから、社員は指示待ち
・社長が全部やるから、社員は考えない
・社員が考えないから、社長の負担が減らない
悪循環。
この悪循環を断ち切るには、「任せる」ことが必要だ。
でも、任せるのは、怖い。
「失敗したらどうする?」
「顧客に迷惑をかけたら?」
「自分でやった方が早い」
その気持ち、よくわかる。
CHRO代行として、私がやること
私がCHRO代行としてやるのは、
「社長が安心して任せられるNo.2を、育てること」だ。
ただし、私のやり方は、研修やセミナーではない。
実務を通じて育てる。
具体的には:
①任せる範囲を、段階的に広げる
・最初は小さな業務から
・成功体験を積ませる
・徐々に権限を委譲
②失敗を、学びに変える
・失敗しても、すぐに介入しない
・「なぜ失敗したのか?」を一緒に考える
・次はどうするか、を設計する
③週次MTGで、質問力で気づきを促す
・答えを教えるのではなく、質問で引き出す
・社長の判断基準を言語化
・経営者の思考をレクチャー
実例:副社長候補の育成──2年間のプロセス
神奈川県の設備工事会社で、副社長候補(30代)を育成した。
最初(0ヶ月目):
・全て社長に確認
・自分では何も決められない
・指示待ち
6ヶ月後:
・日常業務は自分で判断
・週次MTGで報告・相談
・小さな失敗を繰り返しながら成長
1年後:
・重要な顧客対応も任せられる
・社長の視座で考えられるようになる
・他の社員への指示も的確に
2年後:
・完全に自走
・社長がいなくても、経営判断ができる
・他の社員も育て始める
「No.2」が、育った。
週次MTGで何をやったのか?──質問力で気づきを促す
毎週90分のMTGで、私はこの3つの質問を繰り返した。
①「今週、何を判断しましたか?」
→判断のプロセスを振り返る
②「なぜ、その判断をしたのですか?」
→判断基準を言語化させる
③「社長なら、どう判断すると思いますか?」
→経営者の視座に立たせる
答えを教えるのではなく、質問で気づきを促す。
彼自身に考えさせ、自分の言葉で語らせる。
この3つを2年間、繰り返した。
最初は答えられなかった彼が、1年後には自分の言葉で経営を語れるようになった。
しかし、質問だけでは育たない──実務で育てる
質問で気づきを促すだけでは、育成は完結しない。
実務を任せなければ、育たない。
だから私は、彼に実際の業務を任せた。
・重要顧客への提案
・新規プロジェクトの立ち上げ
・社員への指示出し
最初は失敗も多かった。
でも、失敗するたびに週次MTGで振り返り、次のアクションを設計した。
質問で気づきを促し、実務で経験を積ませる。
この二刀流が、育成の鍵だった。
育成の成果を、どう測るか?──「どんな言葉を聞きたいか」
育成の成果は、数値化しにくい。
売上や利益のように、明確な数字では表せない。
でも、だからこそ大切にしたのは、「どんな言葉を聞きたいか」だ。
副社長候補が育ったとき、彼からどんな言葉を聞きたいのか?
社長と壁打ちしながら、こう問いかけた。
社長は、こう答えた。
「『社長、この判断で進めます』と、自信を持って言ってほしい」
「『社長、この顧客対応は任せてください』と、頼もしく見えてほしい」
「『社長、次の一手はこう考えています』と、提案してきてほしい」
こうした言葉が聞こえたとき、それが育成の成果だ。
数値化できないが、確実に感じられる変化。
それを目指して、2年間、伴走した。
そして、2年後──社長が聞きたかった言葉
2年後、副社長候補は、社長にこう言った。
「社長、今週の経営会議、僕が仕切ります」
「社長、この新規案件、僕に任せてください」
「社長、次の採用計画、こう考えています」
社長は、涙ぐんでいた。
「ここまで育つとは思わなかった」
「No.2」が、育った瞬間だった。
結果:売上2.5倍、社長の負担50%削減
2年後、この企業は:
・売上:2.5倍に成長
・従業員:12名→18名
・社長の負担:50%削減
社長は、事業開発と経営判断に集中できるようになった。
副社長と、もう一人の役員が、日々のオペレーションを回せるようになった。
組織が、自走し始めた。
採用だけでは、組織は育たない
前回、採用の仕組み化を語った。
でも、採用はスタートだ。
入社後の育成、評価、キャリアパス。これがなければ、優秀な人ほど辞めていく。
事業と組織は、両輪だ。
・事業戦略(COO)
・組織構築(CHRO)
どちらかが欠けたら、車は前に進まない。
私がCOO/CHRO代行として提供するのは、この両方だ。
質問力で気づきを促し、実務で育てる──これが私の育成法
私の育成法は、二刀流だ。
①質問力で気づきを促す(週次MTG)
・答えを教えない
・質問で思考を引き出す
・自分の言葉で語らせる
②実務で経験を積ませる(ハンズオン)
・実際の業務を任せる
・失敗を学びに変える
・徐々に権限を委譲
質問だけでは、育たない。
実務だけでも、育たない。
質問×実務の二刀流が、育成の鍵だ。
社長が孤独から抜け出すために
年商5億を超えたあたりから、社長は孤独になる。
誰にも相談できない。誰も、経営者の視座で考えられない。
「自分が全部やるしかない」
でも、それでは限界が来る。
社長が孤独から抜け出すには、No.2、右腕が必要だ。
私がCHRO代行としてやるのは、「社長の孤独を解消すること」だ。
No.2を育て、組織を自走させる。
そして、社長が本来やるべきこと(事業開発、経営判断)に集中できるようにする。
次回予告
第3回:なぜ、地方企業ほど「採用の仕組み化」が効くのか?
地方企業の採用課題と、その解決策を語る。