オフィス★イサナは、バブルがはじけたあとに設立した会社でした。でも、言われたままに作るというのではなく、クリエイティブにこだわって仕事をしてきたので、リーマンショックあたりまでは、わりと明日のことなんて心配せずに好きな仕事だけやってればいいや、という感じで過ごしてきたのです。
ところがリーマンショックのあと、それなりに影響を受け、仕事を選んでる場合じゃないぞ、となっってきました。世の中の景気が打撃を受けた以外に、僕たちが一緒に仕事をしてきた広告代理店が、経費を削減するために外に仕事を出さずに内制し始めたという構造的な打撃も重なりました。
まあ、それでも、それなりに仕事をしてきたのだからと、汲々として嫌な仕事をしなくても、と余裕をかましながらやってきました。というか、余裕をかましているフリをしてきた気がします。そんなこんなで、経理担当からは「ちょっと、そろそろええ加減にせなあきませんよ」と大阪弁で言われたりするようになりました。ちなみに、僕も経理担当も関西の兵庫県の出身、ヤブウチさんは四国の香川出身。広いくくりで関西人ばっかりの会社です。
えらいこっちゃ、ということで、僕たちはかつて一緒に仕事をした人たちに声をかけたりしながらなんとか仕事を続けることが出来ました。ただ、かつての僕たちの仕事を知っている人たちは、僕たちにできるだけ大きな仕事、クリエイティブを発揮できる仕事を回そうと頑張ってくれたようです。実際に僕たちはここ10年近く、古巣のリクルートの仕事はあまりやらず、パンフレットやウェブ制作など、大きめの仕事を中心に頑張ってきました。
それは同時に、コピーライター、デザイナーとしての仕事に専念して、いわゆる制作ディレクターとしての「仕切り」の仕事をあまりやらない、ということに徐々にスライドしていったのです。ちゃんとコピーライター、デザイナーとしての仕事に専念できる、というのは本当に有りがたいことだと思います。
ただ、仕切りをやらない、ということは、仕切ってくれる会社や仕切ってくれるディレクターとだけ仕事をする、ということを意味します。
実はここが問題なのです。昨今、クリエイティブをきちんと理解してくれるクライアントはずいぶんと減りました。理解してくれてはいても「オーソドックスにやってください」と言われることも増えてきました。そして、これはもう広告業界だけではなくどこででも言われることですが、コミュニケーションがうまくいかないことが増えてきた気がします。
そんなとき、僕たちの仕事は間に介している人が多い分、ややこしいことになるケースが増えてきたのです。