JICOは兵庫県の日本海側、山陰地方の静かな温泉町の中にある小さな工場です。
この街の古くからの工業資産は「針」です。17世紀から針金の産地として有名だったこの街は、江戸時代の末期に「縫い針」を朝廷御用達の京都の老舗針問屋に納品していました。その針工場の8代目が今の社長です。
第二次世界大戦前の1930-40年代エジソンの作った蓄音機は世界初のパッケージ音楽メディアの再生機として世界を席巻し、マレーネデートリッヒ等のシンガーや、キューバのタンゴ、フランスのシャンソン、アメリカの古き良きビッグバンドJAZZ等、音楽界は78回転のSP盤と言われるレコードを次々とリリースしていました。縫い針の生産に行き詰まっていたこの街は、「蓄針」と言われる蓄音機の針の大量生産技術を開発。製造を開始。40の国と地域に輸出を始めビジネスを大成功させたのです。
蓄音機はステレオに変わり、SP盤はLPレコードに変わりました。今から60年前、JICOはダイヤモンドを使って、レコードの針の生産を始めました。世の中にある2000を超えるカートリッジやプレーヤーの全てにフィットする替え針の提供。樹脂成形の金型も全部自分たちで作りました。針先にダイヤモンドを取り付ける治具も全部作りました。そして今も何十年もメンテナンスしながら、当時の道具を使い続けています。
レコードは1990年代、あっという間に消滅しました。それでも、先代の社長が世界に一人でもレコードを聴いている人がいる限りレコード針の生産を続けようとコミットメント。だからずっと作り続けています。でも根性だけで続けているわけではありません。パーツ内製化100%。治具も金型も自前で、とっくの昔に償却すみ。外注企業のMOQに左右される事はありませんので、お客様のご注文一個からでも喜んでお作りします。このプロセスであればレコード針を辞める必要がなかったのです。
また、レコード針を作り続けたおかげで、JICOはダイヤモンドを金属の棒にくっつける融着技術を磨き上げました。会社の名前に「宝石工業」と付いているのはそのためです。ベアリングを精緻に磨く、精密砥石の目立てに使われるダイアモンドドレッサ。世界中の歯医者さんで使うドリル。また高速で動く動体の特性を測るゲージ等、硬いダイヤのチップでなければ出来ない「替えの効かない道具」を手作りで、フルカスタマイズで、一品から作っている世界でもあまりない、「替えの効かない企業」となりました。
昨今レコードがまたブームとなり、レコード針はフル操業が続いています。このブームもいつまで続くのやらと思うこともあります。しかし、CDがレコードを瀕死に追いやった時代とは違って、Apple MusicやSportify, ハイレゾが世の中に存在する中でのレコード復活です。オールドメディアの淘汰とはちょっと違うのかなと。マーケットが嗜好してレコードを音楽媒体として選んでるわけですからね。
現在レコード針は90%近くはアメリカとヨーロッパに輸出しています。
そんな小さな温泉街の小さな工場は兵庫県や経産省からも高く評価されています。
2018年我々は東京でのオペレーションを開始いたします。
セールス、マーケティング、エンジニアを大々的に募集したします。