現代社会では、人間という「労働力商品」への対価である賃⾦だけを⽬的として働く労働の退廃が進み、市場経済が⽣活の隅々まで浸透したことで⼈々の結びつきが希薄化しています。しかし、お⾦があっても、働くことがつまらなくて孤独な社会が幸福な社会といえるでしょうか。 私たちの事業は、「労働」と「コミュニティ」の分野で社会課題の解決を⽬的とするソーシャルビジネスです。ソーシャルビジネスの概念はまだ一般的ではありませんが、営利目的の一般企業とも、市民運動的なNPO法人とも異なり、事業の継続と拡大に必要な収益を得ながら貧困率の低減といった社会的インパクトの拡大を目的とする新しい事業形態です。バングラデュッシュから世界各地に広がったグラミン銀行、アメリカの貧困地域にコミュニティの遊び場を作り続けるカブーム！、1930年代から中小企業専用通貨を発行するスイスのWIR BANKなどがその代表格です。 私たちは、小学生から大学生までが一緒になって働く「こども夢の商店街」というイベントを通じて「おむすび通貨」という補完通貨を発行しています。2013年から始まったこども夢の商店街は、今では全国の企業からCSV事業として注目されるようになり、おむすび通貨は約1000店が加盟する日本最大規模の地域通貨に成長しました。

日本社会には様々な「働く人」の問題が山積しています。うつ病、引きこもりといった極端な問題にまでなっていないとしても、労働に疎外感を感じている人は多いようです。ある調査によると、働くことにやりがいを感じている人は全体のわずか30-40%です。 本来働くことは、相手に感謝されたり、社会貢献できたり、自分の成長につながったりする、やりがいのある創造的なことですが、働くことで得られる「お金」に執着してしまうと、本来あるべき働き方とは違う働き方になってしまいます。そして、そのようにお金を目的として働くと、結果的に収入も少なくなります。私たちは、地域の人々のつながりを作り出すと同時に、貯蓄して増やすことができず、執着の対象になり得ないおむすび通貨を地域社会に流通させることで、働くことの本質的な喜びを広げていきたいと考えています。 そもそもお金を目的とする行為は、ギャンブルを最たる例とする「稼ぎ」であって、「働く」ことではありません。逆に、専業主婦がいる家庭は「共働き」とはいわれませんが、専業主婦は家庭の中で働いてます。働く人の意識も、働く環境を作っている企業も政治も、「働く」という行為を「稼ぎ」におとしめてしまっていることが現代労働の根本的な問題なのではないでしょうか。 誰にも強制されず必要に迫られていなくてもこども夢の商店街でイキイキと働くこども達は、働くことで得られるお金はその副産物でしかないということを、私たちに気づかせてくれます。

こども夢の商店街の当日は、50人前後の学生とともに数千人の来場者を迎え、子供達の働く笑顔を引き出します。子供達が生き生きと働く様子に、会場の誰もが自然と笑顔になります。 こども夢の商店街を開催するためには、子どもだけでなく、地域全体に「はたらく笑顔」という一つのビジョンをセットすることが必要です。地域の事業者や学校を訪問し、おむすび通貨の受け入れとボランティア派遣を依頼する中で多くの人との出会いがあり、年間2千人以上の学生ボランティアと事業者がこども夢の商店街に参加しています。このように全国各地にローカルなネットワークがあることが私たちの最大の強みであり、私たちの主な仕事はこうした仲間達との関係づくりです。

現行の経済システムそのものが、構造的に、自然環境を破壊し、格差を助長し、労働から人間を疎外し、コミュニティを解体するものだということに、多くの人が薄々気づき始めているように思います。 現代を覆う閉塞感の本質は、社会そのものがもはや経済システムに埋め込まれてしまっていて、民主主義社会であろうとなかろうと、私たち人間は現行の経済システムの枠組みの中でしか物事を変化させる力を持っていないということです。 おむすび通貨は、時間と共に減価し、中小個人の事業者の間でだけ流通するお金として生まれました。今は、こども夢の商店街を通じて微々たる紙幣が全国各地で散発的に流通しているに過ぎませんが、それでも人口の1％程度がおむすび通貨を手にする状況を5年以内に具現化できる見込みです。 もし人口の1％でも、時間と共に減価し、中小個人の事業者の間でだけ流通するお金を実際に使った経験を持ち、そのうちの相当な人たちが日常的にそのお金を使うようになると、そのお金の流通市場は補完的な経済システムとして機能し始めたと言えるのではないかと思います。 現在のおむすび通貨は、紙幣であるために流動性が低く、紙幣であるために時間と共に徐々に減価するという形を取ることができません。 この仕事は、おむすび通貨を電子マネーとして流通させるためのシステムを、世界各地で使われている決済システムであるCyclosをベースにして開発を進めていただくことです。 https://www.cyclos.org/ 一気呵成に作り上げるのではなく、少しずつ、本当に少しずつ、ニーズを作りながら、機能を加えながら、最終的なシステム構築を目指します。 より良い世界、希望の持てる社会の創造に、自らの高度な技術を活かしたいという方、ぜひご応募ください。お待ちしています。 【応募条件】Cyclosをベースに、メルカリ的なシステム全体の仕様設計ができ、フロントエンドを構築できること。国籍・居住地は不問です。