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聖女として長年国に仕えてきたエミリア。王太子の婚約者で、王太子妃になるのも間近だった。だが半年ほど前に新しい聖女が現れた。孤児院育ちのエミリアとは違う、由緒正しき生まれで、初代聖女と同じ癒しの力を持つ聖女が。
婚約者を変えたほうがいいのでは――そんな声が聞こえるようになってはいたが、それでも婚約者がエミリアを心の底から大切にしてくれていれば気にしなかっただろう。
だがそうではないことを、エミリアは知っていた。
「エミリアが聖女で本当によかったよ」
婚約者の優しい言葉。それが嘘だということに気づいていたからだ。
嘘をつくと黒いもやが見える――それが、エミリアの持つ聖女の力だった。