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ABOUT
■背景
大学教育機関、民間企業数社と共同で、CLTパネルを用いた中低層向け建築システムの研究・開発を行っています。
その中から2017年10月に実施した、実大振動台実験の事例をご紹介します。
■新たな木質空間の創出
新しい木質材料であるCross Laminated Timber(以下、CLT)は、従来の面要素に比べてはるかに高い面内の剛性・耐力を有した厚みのある大きな木版であり、主に壁や床パネルで構成した壁式木造が可能となります。
一方で、非住宅建築を合理的に設計する上では、開放的な空間の確保や、設備開口への対応等が必須であり部分的に柱や梁の軸要素を組み合わせる機会は少なくありません。
本構法ではCLTパネルの高耐力を活かしたコアと在来軸組による柱梁フレームの併用に着目し、
自由度の高い新たな木質空間の創出を可能にします。
■開発構法の実証の場として
実大振動台実験は2017年10月から11月にかけて、防災科学技術研究所の大型耐震実験施設にて行われました。
実大3層試験体は保有水平耐力計算により必要性能を満たすよう設計しており、振動実験により耐震性の検証及び余力の確認を行います。
また試験体の施工課程では、新たに開発した金物の施工性を確認します。
CLTと在来軸組の接合部は施工性と美観性に配慮した収まりとなっており、金物が表に出てきません。
現場では金物とCLTパネルの加工精度の違いなどから、施工が上手くいかない場面もあり、施工性向上のための様々な知見を得ることができました。
入力波形はBSL波やJMA神戸波を使用し、建築基準で規定される想定レベルに応じて倍率を設定しました。
加振後の損傷状況はJMA神戸波(100%)に対してもCLTパネルの損傷はほとんどなく、設計性能に対して十分な余力を有していることが確認できました。
実験結果や事後解析の内容については日本建築学会大会にて発表させて頂きました。
■3Dデータを活用し設計から製造シームレスな連携を
今回の実験では試験体の検討段階から全面的にBIMを活用しました。
躯体CLTパネルには通常の接合金物に加え、錘固定治具や倒壊防止治具など様々な実験治具が取り付きます。
それに伴い、CLTパネルには様々な先穴加工を施す必要があり、それらの加工形状や位置情報を整合性を保つにはBIMモデルの3Dデータが必要不可欠でした。
今回は試験体イメージの確認から金物の干渉チェック、最終的にはパネル加工機へのデータ連携まで、
設計から製造までの各場面で3Dデータを有効活用することができました。