シード期の採用で私が心がけたこと|NEXT UNICORN RECRUITING #1 EventHub CEO山本理恵氏

スタートアップにおいて、シード期の採用は最優先事項。ビジネスを軌道に乗せるため、即戦力人材が求められます。しかし、立ち上げ期の企業では知名度や採用リソースに苦しみがちです。優秀な人材を採用するためには、どのような施策や工夫が効果的なのでしょうか。

新連載『NEXT UNICORN RECRUITING』では、注目のスタートアップ企業の採用にフォーカスし、各フェーズにおける戦略や実際の取り組みについて聞いていきます。第1回は、1年でメンバーを10名から23名に増やした株式会社EventHubのCEO山本理恵氏に、シード期の採用について伺いました。

山本 理恵氏
株式会社EventHub CEO

イギリス生まれ、アメリカ・日本育ち。米ブラウン大学経済学部&国際関係学部を卒業後、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニー サンフランシスコ支社に入社。医療、金融、パブリックセクターの戦略立案・コーポレート・ファイナンスプロジェクトに従事。在籍中に出向制度で認定特定非営利活動法人Teach For Japanへ出向することを機に日本へ。マッキンゼー退職後は宇宙ベンチャーの海外マーケティングをフリーランスとして担当。2016年に株式会社EventHubを設立し、イベントのビジネスマッチングを加速するサービス「EventHub」を2018年から提供開始する。 
https://www.wantedly.com/id/rie_yamamoto_g

事業ピボットで問い合わせが急増。 ビジネスサイドの拡充に舵を切った

 

ーー本日はよろしくお願いします。はじめに、貴社のサービスについて教えてください。

私たちは、オンラインイベントのマネジメントツール「EventHub」を開発・提供しています。コロナが起こり、オンライン展示会やセミナーのニーズは急増しました。EventHubはこの需要に応えています。ツールの特徴は、イベント開始前から終了後まで一気通貫で参加者を管理し、エンゲージメントを向上できること。チケット販売や決済、アンケート、マーケティングオートメーションツールとの連動など、イベントの体験と効果を最大化する様々な機能を実装しています。

ーーEventHubはオンラインイベントが開催できるサービスを提供していますが、以前はオフラインイベント向けのビジネスを展開していたとお聞きしました。

その通りです。しかし、コロナ禍による需要変化を予測し、2020年2月にいち早く事業を転換。同年4月にはオンラインイベント向けの正式版サービスをリリースしています。

オンラインのニーズが高まったことで、約半年で利用企業は約3.5倍に、売り上げは約20倍になりました。急激な事業成長を背景に、2020年はじめに10名程度だったチームは現在23名に、さらに2021年は50名規模を目指して採用を進めています。

ーーピボットにあたり、採用ニーズはどのように変化していきましたか?

これは“テック系スタートアップの立ち上げ期あるある”かもしれませんが、2020年春の弊社は開発を担当する「プロダクトサイド」の比率が多かったんです。セールスやカスタマーサクセスを担当する「ビジネスサイド」は私を含めて2名しかいませんでした。開発層が厚かったため、製品のリリースまではスムーズでした。しかし、その後はお問い合わせが急増し、2名体制で対応を続けなければいけなくて…。あまりに忙しかったので春先の記憶はありません(笑)。この時からインサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスのポジションを包括する、ビジネスチームの拡充が急務になりました。

ーー採用にあたり、どのような施策を打ったのでしょうか。

活用したのはWantedlyのスカウト機能です。送ったスカウトは3ヶ月でおよそ700通以上になります。

ーーなぜこれだけのスカウト数が必要だったのですか?

弊社はまだ知名度が高くありません。リソースも少なく、認知を高めるための採用広報に力を注げていませんでした。ファネルの入り口が弱いなら、自ら接点を作るしかないと思い、ひたすらスカウトを送り続けたんです。2020年の夏ごろには努力が実り、SaaS企業出身のマネジャー経験者など、マーケティング・セールス・カスタマーサクセス分野の優秀な人材がジョインしてくれました。

面接は、経営者自ら「投資家へのピッチ」と思って臨んだ

 

ーー即戦力人材は転職市場で取り合いになりがちです。スタートアップに共通する課題として、知名度が低い中で採用を進めなければいけません。その中で貴社は、なぜ優秀な人材とマッチングできたのか、採用の工夫を教えてください。

ビジョンや現状を明確に伝えられるよう、1次面接では私か共同創業者の井関が対応していました。意気込みは強く「投資家へのピッチ」と思って臨むようにしています。

また、ミスマッチが起こらないよう、候補者へのヒアリングを重視しました。事業に魅力を感じてもらえても、ご本人のやりたいことと合致しなければ不幸せだと思います。転職は大事な意思決定です。候補者ひとりひとりに、目指すキャリアや職場に求める条件を聞きました。

ーーなるほど、創業者が自ら面談の場に出れば、候補者に意気込みが伝わりますね。ほかにはどのような施策を講じているのでしょうか。

マネジャークラスなど、ハイレイヤークラスの面接では、機密保持契約を挟んで社内データを公開することもあります。その後ブレストを行い、具体的な施策や実行期限を話し合います。小さな組織だからできることではありますが、一緒に解決法を模索すれば、入社後の働き方が互いにイメージしやすい。候補者と期待値をすり合わせるために必要なプロセスだと思っています。

並行して、直接交流できる場も提供しています。シードからアーリー期の規模では、カルチャーフィットが最も重要です。オフィスの雰囲気を感じ取ってもらえるよう、コロナ禍の第三波が起こる前は、感染拡大に考慮しながらオープンオフィスを行っていました。それらの施策の結果、徐々に採用活動が軌道に乗ってきたんです。

一方でスカウトなど、プッシュ型の採用手法にはリソースの観点で限界を感じていて。採用は順調でしたが自然流入が少なく、採用広報に着手しなければ、と考えていました。

ーーなるほど、「スカウトの発信」や「創業者が面談に対応する」手法は、企業が動かなければ人が採用できません。採用広報が成功すれば、候補者が自ら応募してくれる状態が作れます。今後の採用拡大を考えて認知獲得に舵を切るべきだと考えたのでしょうか。

それもありますし、内定者からアドバイスをもらっていたんです。「公開情報が少なく、カルチャーを理解するまで時間がかかった」「入社すれば魅力がたくさん見えてくるのに発信できていない」など、改善点が見えてきました。諸々の採用課題を解決するために、採用広報専門のポジションが必要だと考え、副業メンバーにジョインしてもらったんです。手始めに事業転換をテーマに記事を公開したところ大きな反響があり、Wantedlyのウィークリートピックスにも取り上げられました。

ーー幸先の良いスタートですね。

そうですね。1本目の記事に手応えを感じたので、2020年の秋頃から採用広報に力を入れていきました。自社サイトの採用ページを充実させたり、Wantedlyに各ポジション担当者のインタビューを投稿したり。優秀なメンバーに集まっていただいているので、彼らのマインドや背景など、ひとりひとりを掘り下げていきたいと思っています。

ーー採用広報の方針は企業によって異なります。EventHubではどのようなことを心掛けているのでしょうか。

コンテンツ制作では読者目線を重視しています。たとえば、入社したメンバーに「選考中どの記事を読んだのか」「意思決定する中でどのコンテンツが響いたか」「既存記事にない、知りたかった情報は何か」をヒアリングしています。読者目線を取り入れると発信すべき情報が見えてくる。これをヒントに次の記事を制作していきました。

ーー内定者の意見はとても参考になりそうですね。今後、採用広報で実現したい目標はありますか?

当面の目標は、幅広い層に共感してもらえるよう、コンテンツでポジションを網羅すること。やりたいことは多いです。たとえば、弊社はIT企業出身者が多いので、他業種の方も共感できる記事をつくりたい。今後はオフィスの雰囲気やカルチャーを伝える記事も作りたいし、SNSで拡散もしていきたいですね。

一人目の採用担当者は、絶対に妥協したくなかった

 

ーー話は変わりますが、採用担当者はどのように選んでいるのでしょうか? 採用の入り口をコントロールするポジションなので、立ち上げ期に与えるインパクトは大きいと思います。

実は、採用担当者は2021年の1月に入社したばかりです。それまでは私が担当していたんですよ。

カルチャーへのインパクトが大きいポジションなので、「一人目は絶対に妥協しない」と決めていました。もちろん、全ポジションにおいて妥協はありませんが、一人目の採用担当者へのカルチャーフィット期待度は非常に高くもっていました。

2020年は企業からの問い合わせが増えたこともあり、即戦力を求めてしまいがちでした。

ところが、スタートアップにありがちなスキル優先の採用を進めてしまい、一部のポジションではミスマッチも起きていたんです。この経験からマインドセットやカルチャーフィットの大切さを再認識しました。しかし、カルチャーは数値化が難しく、100%言語化することもできません。だから一人目の採用担当者は「この人ならフィットするだろう」と確信できる人を選びました。

ーーちなみに、どのような経歴の方なのでしょうか。

長年私と付き合いがある人を選びました。私は過去に教育系NPOに勤めたことがあり、当時は教師を採用して学校に派遣していたんです。今回採用した一人目の採用担当者は、前職のNPO時代に私が採用した方です。人事は未経験でしたが、やり抜く力やマインドセットを知っていたし、当時の働きぶりから人柄も深く理解できていた。タイミングを見てお声がけしたところ、OKをいただくことができました。

一人目採用担当として入社した磯さんが公開したストーリー記事

50名の壁を越えるために、 フラットに議論できるチームを目指す

 

ーー2021年に50名規模のチームを目指し、採用を強化していくと聞いています。組織拡大にあたり、チームのビジョンを教えてください。

意思決定のプロセスを共有しつつ、ファクトを交えてフラットに議論できる会社にしていきたいですね。一人ひとりが意思決定でき、全員が課題解決できる組織は強い。なぜかというと、答えは現場にあることが多いからです。各分野で私より長けた人を採用しているので、現場で意思決定してくれた方がスピード感を持って進められる。逐一私が指示するのはおこがましいですし、組織経営において把握できないことがあるのは当たり前だと思っています。

ただし、ロジックが共有できていない状態で現場の意思決定を優先してしまえば、チームは混乱してしまいます。今後は現場が動きやすいよう、メンバー間で共有できる意思決定のガイドラインを構築していきたいです。

ーー今後の事業成長を目指すうえで、最も重視している採用ポジションはありますか?

今後は、セクション間をつなぐ「ハブ人材」を採用したいです。2020年はマーケターやインサイドセールスなど、セクション別に採用を進めていました。しかし、組織が大きくなるにつれて間をつなぐ人材も必要になってきて。たとえば今は、デザイナー・エンジニア・セールスを束ねるプロダクトマネジャーが必要です。

弊社の規模では「事業をグロースさせたい、そのためになんでもやりたい」と考えてくださる方がフィットするはず。今後はポジションにこだわらない採用も進めていきます。

ーー今後は、より多様なチームになりそうですね。最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

EventHubは2020年に「このプロダクトが本当に売れるのか?」と検証するフェーズを超えました。一方で、人数はそこまで多くありません。2021年は、セールスのブラッシュアップやグロースの土台づくりなど、組織体制をしっかり整える時期に差し掛かります。個々のメンバーに推進力が求められますが、心の底から成長期のスタートアップをグロースさせたい方には面白い環境になるはずです。

ーーオンラインイベントのニーズは増え続けているので、今後の成長が楽しみですね。本日はありがとうございました。

(取材・執筆協力/鈴木雅矩)

著者プロフィール

鈴木雅矩

Writer

1986年静岡県浜松市生まれ​。2014年の開業から現在まで、約300件のインタビュー記事を執筆。 2016年6月から、オウンドメディア特化型の編プロに所属。退社後は再びフリーライターへ。現在はスタートアップや採用広報などビジネス領域を中心に執筆中。

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