Voicyが27.3億円の調達でやること〜声の履歴書76〜 | 緒方憲太郎(Voicy社長)「Voicy社長の頭の中」/ Voicy - 音声プラットフォーム
音声放送チャンネル「緒方憲太郎(Voicy社長)」の「Voicyが27.3億円の調達でやること〜声の履歴書76〜(2022年7月20日放送)」。Voicy - 音声プラットフォーム
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この記事はVoicy代表・緒方のnote『声の履歴書 Vol.76』を転載したものです。
掲載元はこちら。
また、この記事は音声でもお楽しみいただけます。
こんにちは。Voicy代表の緒方です。
先日、Voicyは27.3億円の資金調達を発表しました。これにより累計調達額は36億円となりました。
このタイミングで僕らが打ち出したメッセージです。
Voicyは、音声とテクノロジーで、人々にとってワクワクする豊かな未来へ変えていきます。
このnoteではあらためて調達の目的とVoicyが目指す世界について、少し長くなりますが、語っていきたいと思います。
27.3億円の資金調達。今回は海外投資家も入ってくれて、既存の投資家からも再び資金をいただきました。新しい事業会社やVCも含めて、仲間が増えましたし、2018年に8億円の調達を受けてキャッシュアウトギリギリまで粘りながら、きちんとやり切ることができました。
そしてシリーズBです。前に「C向けサービスにはシリーズBの壁がある」と書きました。
シリーズAまでは「期待も込めて」という意味合いで支援をしていただけますが、シリーズBとなると、確実に成長が読めるところまで来ないと出資してもらえません。
今回Voicyがそこに到達したことは1つの自信にもなったのかな、と思います。
ほかを見回すと、ライバーやVtuber、ゲームなどの事業会社がシリーズBに進んでいますから、そのあたりに並ぶ成長市場であると認められた、というのも感慨深いです。
さて、この資金で何をするのか。私たちは何度も言っていますが、常に「パーソナリティファースト」を軸にサービスをつくってきました。発信する人が活躍できる土壌をもっと、もっとたくさんつくれるだろうと思っています。
サービス機能拡充や品質の向上、発信者のブランディングや地位の向上もしっかりやっていきたいですし、まだまだやりたいことの5%もできていないと思っています。手を付けたい課題は山積みです。
パーソナリティファーストでサービスを磨いていけば、成長は勝手についてくると思っていますし、いまのところそうやってきました。なので、リスナー獲得のための派手な広告を打ったり、CMを流したりとか、そういったやり方は考えていません。
ここで一旦整理しましょう。Voicyは2020年から現在まで、どのようなプロダクトに成長して、かつ何が強みになっているのか。
前提としてアメリカと中国ではすでに音声サービスがすごく伸びていて、音声市場がかなり大きくなってきています。対して日本はまだ市場の成長こそ小さいですが、着実に、ジワジワと成長してきている状態だと思っています。
Voicy自体は、はじめはマネタイズの機能もなければ、売上目標も何もなく、「とりあえず、使ってもらって喜ばれよう」とひたすらプロダクト開発だけをやってきました。2020年半ばから次第にリスナー課金や企業スポンサーなどマネタイズの手段を追加していって、いまでは年収1億円に迫るプレイヤーが生まれています。
それからコンスタントに毎月数十万円稼げるような人もどんどん出てきて、「誰もが自分の声で生きていける」という新しい仕事のチャンスが見えてきました。そこからオンラインサロンを開設する人もいれば、本を出版する人など、パーソナリティの人気が高まるにつれて、音声以外にも活躍の場が広がっていきました。
Voicyというプロダクトを経由して、ある一定の「スター」と呼ぶべき存在がきちんと生まれてきたということが、ここ3年でやってきたことの成果かなと思っています。それに合わせて、Voicyフェスみたいな大規模イベントを「音声だけで」開催することができたのもひとつの成功体験となりました。
ただ、まだここから何倍もできることはあります。パーソナリティがリスナーとより強固に繋がったり、リスナーにとってもVoicyが、いつまでも日々使っていて心地いい居場所になれると思っています。
Voicyの強みを挙げるとすれば、パーソナリティとリスナーをあわせた全ユーザーさんが「ずっと使っている」ということです。毎日アプリを使う人の割合や、長く使っている人の割合で、ユーザーのエンゲージメントの圧倒的な高さが明らかになっています。
その要因はコンテンツの質の高さです。編集しない声だからこその他のサービスでは得られないようなコンテンツがVoicyにはあります。それは音声市場の中だけでなく、テキストや動画をあわせても独自性の高い良質なコンテンツが揃っていると自負しています。Voicyのパーソナリティは審査制です。応募通過率はわずか5%前後。その審査を通ったパーソナリティが集まることで、信頼度の高い音声コンテンツに毎日出会えるようになっています。
また、それと同時に企業がVoicy内でチャンネルをつくるようにもなってきました。企業の参入がすすんできたことも、ここ数年での大きな変化です。企業がパーソナリティのチャンネルをスポンサードしたり、自社でチャンネルをつくって運営したり、社内限定でセキュアに使える「社内報」としてVoicyを使ったりということも増えてきていて、企業がきちんと参加するプラットフォームになってきました。これも大きな強みになっています。これは実はまだPodcastでもできていないことだと思います。
もう1つは大事なこととして、会社組織がすごく良い状態であることも加えておきます。ただ良い人材が来ているから組織がいい感じになっている、ということではなく、会社全体が「組織も1つのプロダクトである」と捉えて、全員でいい会社にするために、本気で取り組める組織になってきた。最高の組織エンジンがないと最高のサービスは作れません。
たぶん、どのメンバーも仕事が好きで、お互いのことが好きで、「この会社をよりよくするためにはどうしようか」ということを、サービス開発と同じくらい本気で考えています。だからこそチームが一丸となっていますし、同じ方向に向かって走ることができる。本当の意味での組織力の強さが実感できています。
まずは人材と組織を拡充し、それによってまだ5%程度しかできていないVoicyプラットフォームをどんどん機能開発でアップデートしていきます。そこはしっかりとお金を使っていきます。
機能の話を軽くしますと、やりたいことはたくさんありますが、たとえばパーソナリティとリスナーがより高度にマッチングできるように、新しい出会いがたくさん生まれるようにする。これはまず取り組みたいことです。
それからより多様なマネタイズ方法も用意したいと思っています。そのためには発信者が自分のコンテンツを整理して、ユーザーに届けやすくなるようにする仕組みも必要です。挙げだすとキリがありませんね。
組織において大事にしたいことは、社内ではとにかく「社会に新しい価値を生む」「ユーザーが喜ぶ」ということを中心に話ができる環境にすることです。それ自体を幸せだと思う人に入ってもらいたいと思っているので、「自分のために会社やユーザーをステップにしよう」とか、「自分の経験の糧にしよう」みたいな感じの方は、少し違うのかな、と思います。
常に「ユーザー体験の最大化」を中心にして話ができる会社が理想です。
なので「ユーザー体験が向上した結果、価値が生まれ、売上も増えているけれど、売上のために事業をやっているのではない」という意識は、常に持っておきたいと思っています。そういう組織もサービスも、そのすべてが好きだ、という人たちと前に進みたいと思っています。誰でも、どんな立場にいても、組織について興味を持ってほしいんです。
組織について興味を持つ、組織のことを考えるとはどういうことか。言語化するのは難しいですけれど、その人がいることによって組織全体のアウトプットが上がるかどうか、周りの人のパフォーマンスが上がるか、ということだと思っています。そういう人達があつまると組織は相乗効果を持って成長します。
なので、その人の背中を見て下の子が育ったり、「一緒に働いていて気持ちがいいな」と思ったり、「やばいな、俺ももう少しやらないと」と思ったりとか。そういう人が「組織について興味を持っている人」です。
マネジメントをする・しないに限りません。どんなときも自分の行動や態度が、周りにどれだけいい影響を与えらえるのかを、考えられるかどうか。皆で同じ方向に行くときに、それに貢献ができるかどうか。これってけっこう大事ですよね。
私たちはこれから、スマートフォンの次の時代をつくっていこうと考えています。長期的には、五感の1つである耳の世界を全部とっていく。そんな途方もない挑戦をつづけられる人に来てほしいと思っています。挑戦はまだ始まったばかりです。まだまだ何も固まっていません。「勢いのある会社に入りたい」とか「自分の成功実績になるかな」みたいな感じにはめちゃくちゃ遠いはずです。「ゼロから挑戦したい」と考えられる人を待っています。
これまでも「音声なんて新しすぎてわからない。だからやってみたい。手を動かしたい」という人はうまくいっています。社会を変えていくからこそ、環境の変化によって、常にいままでの自分をアンラーニングしながら、新しいことを学んで、そこからさらに成長して挑戦していってほしいです。
私は過去にベンチャー支援事業をするなかで、いろいろな会社も見てきましたし、いろいろなベンチャー社長と一緒に走ってきましたが、魅力的なサービスをつくっているのに事業が上手くいかなかった会社もあれば、その逆もありました。
僕が、なぜ起業したのかというと、社会に新しい価値を生み出したかったからです。誰もやっていなくて、オリジナリティがあって、大振りするものでも、ちゃんと事業になって誰かに価値あるものを生み出せることを証明したかった。
僕らが自分の可能性を拡張して、いい未来がつくりだせるようなステップの1つになりたいな、とも思っています。
だから、Voicyがあることで社会やユーザーが次のステップに一歩進んでいけるように、そういった文化を社会にインストールしたい。人に喜んでもらいたいし、活躍する人が増えたり、関わってくださる人に「関わってよかった」と思ってもらいたい。それが自然増殖される仕組みができつつあることは、とても幸せなことだと思っています。
Voicyのミッションとビジョンはずっと変わらず、「音声×テクノロジーでワクワクする社会をつくる」ことと、「声で社会をリデザインする」こと。
会社のミッションとして「ワクワクする社会をつくる」と言っているように、関わる人の笑顔がよく見えて、課題解決型ではなく、価値創造型の事業をつくるということは、あらためて大事にしていきたいです。
それに加えて、今回の調達報告で伝えたかったメッセージは「声で、未来を変える」でした。
私たちは今回、「実際に未来を変えられる」という確信にまた一歩近づきました。これまでも実際に未来が変わったパーソナリティが出て、未来が変わったリスナーが出て、社会の中で少し未来を良い方向に変えてきた。それに賛同してくれる人たちから大きな出資を得て、「よし、もっと大きな未来を変えてやるか。社会よ、覚悟しておけよ」という狂気の集団。それがいまのVoicyです。
未来が変わる、社会が変わる、それってすごく大げさに聞こえます。では実際にいま足元ではどんなインパクトが起きているのか。
具体的な話をすると、たとえばnoteやSNSは「コンテンツの一般大衆革命」だと思っています。そういったサービスが出てきたおかげで、誰でも気軽に発信できるようになりました。
ただ、それに加えて私は、魅力的な人たちをよりエンパワーメントさせて、より良い情報をより多くの人に届けたいと思っています。
誰かのロールモデルになる人、生き様の参考になる人をどんどん届けたい。そうやって社会の中にポジティブな情報を浸透させよう、という思いが強いのです。はっきり言ってしまうと、ネガティブだったり、誹謗中傷していたりする人たちにたくさん発信してほしいとは、そもそも思っていません。誰でも自由に好き勝手発信できることが社会の幸せになるという前提に疑問を持っています。
社会には刺激の強いコンテンツが溢れてきました。摂取してる情報の発信主みたいになりたいと思わない人の情報がどんどん飛び込んできます。「もっといい人がたくさんいるんだよ」ということを、きちんと伝えたい。Voicyは誰でも、どんな忙しい人でも、スマホに向かってしゃべるだけで簡単にコンテンツを発信できるようにしました。
Voicyで活躍しているのはこれまで手間のかかる発信することができなかった多忙な人が多いです。発信の手間のほうをどんどん下げて、そこに本人性という声だからこその特徴を足し、彼らが自分のノウハウを外に出せるようにしました。忙しい人に発信をさせるということは、それだけ価値のある人間が発信できているわけですから、結果として自然と良質なコンテンツが集まってきます。
それから人を煽っても伸びないように、しっかりと好きになってもらえるような人しか伸びない仕組みにしています。SNSやアルゴリズムによって、少し派手といいますか、ネガティブな情報ほどウケやすい、みたいな社会になりつつあります。そうならないようなハックできない設計を目指しているところもVoicyの特徴だと思います。社会や受け手にギブできる人は無駄にバズらせて多くの人を巻き込みたいと思いません。そこに対する唯一の希望になりたいです。
私たちはいいプロダクトをつくりたい。その上でいい未来をつくりたい。「あなたの声があってよかった」とか「話すことで / 聴くことで未来が変わったね」と言われるようになりたい。
ただ、これはいまのVoicyだけで、いまの僕らだけでできるものではないと思っています。あくまでもプラットフォームなので、その上で活躍してくれる全員が主役で、彼らとつながってくれるみんなが主役。私たちはその土壌をつくる会社だというふうに思っています。
Voicyがあることでパーソナリティもリスナーも未来が変わっていき、より豊かに生きることで社会がより豊かになっていく。Voicyはいわゆる社会のGDPを上げるサービスに、社会の豊かさを増やすサービスになる所存です。
ひきつづき、Voicyを応援してください。難易度の高い事業です。みなさんの応援がとても力になります。そして一緒に挑戦してくれる人も、お待ちしています。