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「自分の弱さと向き合うことでしか、もう前に進めないと思った」Teach For Japan創設者 松田悠介、退任とCRAZY参画の裏側

前例に流されることなく、「挑戦」する人生。2017年6月末、松田悠介は、創設以来7年間務めてきた教育系NPO「Teach For Japan」の代表理事を退任した。そして、スタンフォード経営大学院のフルタイムExecutive MBAプログラムへの進学を発表。

同時に明かされたのは、株式会社CRAZYへの参画だった。これまで社会課題の解決に立ちむかってきた松田が、なぜこのタイミングでいち企業への参画を決めたのか。率直な言葉で語られた決断の理由を、独占インタビュー。

コレクティブインパクトを創出するための、取捨選択。

–ご自分で創設したTeach For Japanの代表を退いてまで、なぜ今、新しい道を選ぼうと思ったのでしょうか?

松田悠介(Yusuke Matsuda)
日本大学を卒業後、体育教師として中学校に勤務。その後、ハーバード教育大学院教育リーダーシップ専攻で修士号を取得。卒業後、PwC Japan にて人材戦略に従事し、2010年7月に退職。そして、Teach For Japanを創設。日経ビジネス「今年の主役100人」2014年への選出や、世界経済会議ダボス会議Global Shapers Communityへ選出。奈良県奈良市「奈良市総合計画審議会」委員、「奈良市教育振興戦略会議」委員。Learning For All の創業者でもあり、Water Dragon財団の日本代表、京都大学特任准教も務める。2017年7月からスタンフォード経営大学院に進学。著書に「グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」(ダイヤモンド社)がある。

立場をリセットして、自分の変化とフラットに向き合いたいと思ったんです。Teach For Japanの7年間では、教員免許を持たない人材を教育現場に派遣するモデルの確立や、寄付文化がないと言われる日本において、寄付金を増やすなど、残せた成果もあります。

一方で、組織をマネジメントすることの難しさを痛感しました。自分の力不足で、スタッフが辞め組織が崩れていった過去。経営していく中で一番辛かったことは、人が辞めていくことでした。想いをもって飛び込んでくれたのに、その想いを活かしきることができなかった。

そういった中で、私自身、孤独を感じても、前に進む選択をし続けました。というよりも、自分の確固たる強いビジョンとミッションを心の拠り所にして、進み続けるしかなかったのです。

しかし、その代償はあまりにも大きくて、昨年は心と身体の病にかかりました。実際にソーシャルインパクトを創出するためには、一人でやれることは少なく、社会の力や周囲の力を結集して(コレクティブに)、インパクトをつくり出せる状態を目指さなければと考えるようになりました。

そして、組織をマネジメントできない理由は、人を信用できない自分にあることがわかっていきました。教育の道に進む原点にもなった、14歳で受けたいじめの影響が、未だに大きな影を落としていて、人を信頼して傷つくことを恐れてしまう。

信頼しないことが自分を守る唯一の手段になっていました。これが、経営していく中での最大の弱みになっていると気がついたときは、とても苦しかったです。ただ、今自分が変わらなければ、次のステージには進めないことは明白でした。

変わるためにはこれまでの道のりをしっかりとリフレクション(振り返る)する必要がある。そしてそれは、経営をしながらできることではないと判断しました。私は不器用な人間なんです。複数のことを同時にはできない。だからこそ、退任して何者でもない立場となり、自分と向き合うことだけに集中しようと思いました。

それから、退任の背景には、Teach For Japan の事業フェーズの変化もあります。これまではリーダーが様々なリソースを集めてくるフェーズにありましたが、これはあまりにも属人的で持続的ではありません。

これからはリーダーにとどまらず、職員・派遣しているフェロー・子どもたちの変容のストーリーが人々の共感を集め、経営資源を集めるようにしていかなければいけない。私の後任として代表に着任した白田直也氏は、まさにその実現のための適任者だと思っています。

留学先のスタンフォードでは「コレクティブインパクト」をテーマとして、ソーシャルインパクトを創出するための戦略や組織マネジメント・リーダーシップなどを、2年間かけて学ぶ予定にしています。

大人の変革に影響を与えることができる、CRAZY WEDDINGの事業

–スタンフォードへの留学だけではなく、株式会社CRAZYにかかわることも選択したのは、なぜでしょうか?

これまで10年間、子どもたちに最高の教育を提供するために何が必要なのかを考え続けてきました。そして現場に立つなかで気がついたのは、子どもたちが悪いことは何ひとつなく、全ての教育課題は大人側にあるということです。

子どもに「プログラミングや英語が大切だ」と言う大人ほど、自分でプログラミングや英語ができず、「お互いを尊重しましょう」と言う大人ほど、多様性を受け入れることができていないことが多い。つまりは、言行一致していない大人があまりに多いのです。

子どもに大きな影響を与える、大人たちが変わらなければ、日本の教育は絶対に良くならないと思うようになりました。そう考えたとき、CRAZY WEDDINGの事業は、単なるウエディングにとどまらない、大人に対する教育事業だと感じました。

結婚式というライフイベントをきっかけに「自分は何者か」「どういう価値観を持っているのか」「これからどういう人生を歩んでいきたいのか」を明らかにする。つまりは、人生におけるビジョンが明確になるわけです。そして、それを結婚式という場で大切な人たちに伝え、承認を受ける。これは、非常に大きな成功体験です。

また、スタンフォードでの学びはインプット、CRAZYへの関わりはアウトプットだと捉えています。理論ベースで得た学びを、CRAZYで深めていくつもりです。

そして、CRAZYのメンバーは、強い相互信頼があり、新たに迎える仲間に対しても、その関係性を求めます。心を閉ざしがちな自分にとっては、信頼し信頼されることを大切にしているこの環境に身を置くことで、変化せざるを得ないし、人間として大きな成長の機会になるだろうと思ったことも、CRAZYへ関わる選択をした理由のひとつです。

ビジョンを持つための本質は、過去にある

–松田さんのこれまでの歩みやお話しされる言葉からは、強い意志を感じます。確固たるビジョンは、どうやってつくられたものなのでしょうか?

ビジョンのベースには、原体験があります。私の場合で言えば、14歳で受けたいじめの経験です。絶望的ななかで、一人の先生に救ってもらった。だからこそ、自分の一生をかけてその恩を返したいと思っています。

ちなみに、ビジョンを描くときに「自分は何をやりたいのか」と未来に考えを巡らせる人は多いですが、私は、未来ではなく過去に本質があると考えています。当時、何が楽しくて、何が悔しかったのか。何に怒って、何が悲しかったのか。

過去の原体験は、向き合いたくない辛いことである場合が多いので、距離を置いてふたをしてしまう人が多いですが、その喜怒哀楽から逃げずに向き合うことで、自分の価値観や「自分は何者なのか」がわかるようになります。これがわかれば十分で、将来何をやりたいのかは、チャレンジしながらリバイズしていけばいいのです。

そもそも、世の中の不確実性が増していることを考えると、未来を描くことがとても難しいのは当然なのです。たとえば、AIが出現する時代になったらどうするかなど、外的要因に影響されたうえで物事を考える必要もあります。

一番大切なことは、外的要因にかかわらず、自分の在り方を見つけること。そうすれば、どんな時代であっても、ブレずに生きていくことができると思っています。

そしてもうひとつ。どれだけ大変であっても、掲げたビジョンの実現に向けて全力を尽くすこと。本当に成し遂げたいと願うならば、誰しも、最も優先順位高く注力するはずです。前回のハーバード、今回のスタンフォードへの留学もそうですが、この機会を得られなければ、もう前に進めないと心底思っているから、努力をしているだけなんです。

新しいチャレンジを、サンプルにする

–松田さんがCRAZYに感じている最大の魅力は、何でしょうか?

「人」です。何を実現するかはもちろん重要ですが、誰と一緒にやるのかも、とても重要です。
CRAZYは、自分を大切にして、志に向き合っている人ばかり。ビジョンを実現するにあたって、価値観が異なる人たちと、そのすり合わせから始めるのは相当な労力が必要になります。ですが、CRAZYではそのストレスは最小限で済む。

そして「独自の組織文化」も一つですね。CRAZYは人間性を大切にしながらも、生産性も追い求めています。そして、生み出された利益で、仕組みづくりに再投資していく循環を繰り返しながら、高速で拡張していこうとしている。手づくりの昼ごはんをみんなで食べる取り組みも、そのひとつと言えます。一緒に食卓を囲むことで、人間関係を良好にするだけではなく、体にいい食事を摂ることで全員が健康になっていく効果がある。

メンタルもフィジカルも良好になると、仕事の生産性も上がっていきます。そして、いい仕事ができるようになると、自ずと売上や利益も上がり、上がった利益を健康などの医療にも再投資することができるというわけです。

医療費を無料にしたいという話は、代表の森山が折に触れて話すことですが、メンタルとフィジカルが健康になれば免疫力も上がって、病気になりにくくなる。
そうすれば、現行の保険料の3割負担を無料にすることは、大したことではありません。私自身、近い将来実現可能だと考えています。

創業以来独自の組織文化を育んできたCRAZYは、第二創業期を迎え、内部のインフラ体制を再整備するときがきています。だからこそ、スケールアップに耐え得る、制度や教育プログラムをつくる挑戦のすべてに、私のスタンフォードでの学びを活かしたいと考えています。

医療費の無料化だけでなく、会社に託児や子どもの教育機能を整えたり、より多くの大人たちが自分らしくいられるプラットフォームづくりを実現していく。これらのエキサイティングなチャレンジのすべてが、サンプルになっていく。私はそう確信しています。

(END)

松田さんの経歴を目にして、いい意味で違和感を感じる人も多いと思います。一人の体育教員がハーバードへ留学したという「転身」だけでもそうですが、NPO「Teach For Japan」の創設者が、いち企業にかかわりを持つという「選択」もインパクトがあります。一方で、そう感じるのは、私がつまらない固定概念にとらわれているからなのかもしれません。

インタビューを通じて、松田さんは、自身のビジョンの解像度を上げることに集中し、そのビジョンを実現するための最善のルートを得るべく、惜しみなく努力を重ねてきた人なのだと感じました。「やるか、やらないか。やらない人は本気じゃないだけ」と言い切る様子には、強烈な強さがある。けれど、辛く苦しい14歳の原体験から注意を逸らすことなく歩みを進め、人を信頼したいとCRAZYに飛び込む。そういった人間らしさも持ち合わせていることこそが、松田さんの魅力。

松田さんの影響によって生み出されるサンプルはきっと、過去の常識を軽々と超えて、これからの時代の新しい当たり前になっていくのだろうと思います。

(株)CRAZY 's job postings
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