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≪TB INTERVIEW≫chiica事業部 堀江健太郎さん「脱成長社会を目指して、自分ができること」

TBbaseより転載

設立10年目という節目に、前回からトラストバンクの「人」にスポットライトを当てた連載を始めました。今回も、どんなメンバーが、どんなことを考えて働いているのか。それを伝えることで、トラストバンクの素顔を見せられたらと思います。

第2回目に取材をしたのは、chiica事業部の堀江健太郎さんです。堀江さんは、昨年11月に入社したばかりですが、chiica、そして地域通貨に対する熱い想いを持ち、自治体と日々伴走しています。

前回連載で登場した菅原さんからは、「トラストバンクの入社理由に感動しました。ぜひみなさんにも知っていただきたいです」との言葉をいただきました。

前職でのお話やトラストバンクに対しての想い、そして、目指すべき社会についても話していただきました。


プロフィール:
堀江 健太郎(ほりえ けんたろう)
chiica事業部 マネージャー
2021年11月入社
東京都北区出身

目次

・自治体さまと「地域通貨の答え探し」をする日々
・コロナ禍で自分の価値観に変化が
・入社して初めて知った、自治体の熱意
・トラストバンクは、自分の信条に合う会社
・思い描く社会のためにできること

|自治体さまと「地域通貨の答え探し」をする日々

ーー堀江さんは、現在どんなお仕事をされているのですか?

chiicaという地域通貨のプラットフォーム事業を提供する事業部で、担当自治体さまにおける地域通貨運用のご支援や事業開発、アライアンス構築、採用などを行っています。その他、主に官公庁の方と地域金融支援の文脈で勉強会の開催なども行っています。

近年徐々に広がりつつある地域通貨ですが、その概念自体はかなり昔から存在し、栄枯盛衰を繰り返してきた歴史があります。昨今はスマートデバイスや分散台帳技術を中心としたデジタルシフトが後押しとなり、業界として盛り上がってきています。

地域通貨を導入している自治体は現在、26自治体あります。(2022年3月31日時点)事業への力の入れ具合は、自治体によって違いがありますが、例えば僕の担当する埼玉県深谷市とは、(これまで真の意味で地域通貨として機能し継続しているものがない、という前提のもと)地域通貨とは何か?という問いへの答え探しを一緒にやっています。

僕も埼玉県深谷市に住んでいるので、ビジネスモデルや、自治体としてやりたい取り組みについて、必ず週1回、丸1日かけてディスカッションをしています。

ーー今、深谷市に住まれているんですね。

そうなんです。僕は東京出身・東京育ちですが、トラストバンクに転職が決まった時、せっかくなら地域通貨に熱心に取り組まれている自治体に引っ越したいと思って。

chiica事業部長の岡部さんに、関東だと地域通貨はどこが盛り上がっているかを聞くと、埼玉県深谷市を勧められて、引っ越しました。


(毎週のように通っている深谷市役所)

|コロナ禍で自分の価値観に変化が

ーーこれまで、どんなキャリアを歩まれてきましたか?

2008年に新卒で外資系のコンサルティングファームに入社し5年間、経営コンサルタントとして、組織マネジメントのコンサルティングや、ポストM&Aフェーズの組織変革の案件を主に担当しました。

その後、2013年に自分の会社を立ち上げました。僕は海外旅行が好きだったのですが、当時は旅行にいくたびに、「カウチサーフィン」という民泊の無料版のようなサービスを使い、現地の人の家に泊まっていました。

もともと人種差別問題に関心を持っていて、こういった形で旅行先で現地の方との深い交流を中心にしたスタイルの旅行が広がれば、人種差別はなくなっていくのではないかと考えました。しかしカウチサーフィンは赤の他人と会うことになるため、特に女性にとって利用ハードルも高いものになっていました。
その一方でSNSを中心とした「ソーシャルグラフ」や「インタレストグラフ」が実名ベースでネット上に可視化されつつある時代背景もあったので、これらの仕組みを使うことで、安心して現地の方との交流を楽しめる仕組みが作れるのではと考え、旅行を通じて人種差別をなくすことをミッションにした会社、株式会社ワンダーラストを立ち上げました。

ワンダーラストでは主に、自分の旅行記を投稿したり、旅行記を見ながら自分だけの旅行プランがつくれる実名制(facebook認証を必須とした)のアプリを開発しました。

運営サイドの僕らはこのアプリ上でいつ・だれが・どこに旅行に行くかを見られます。それをグローバル展開することで、各ユーザーのソーシャルグラフや趣味嗜好・年齢層・性別から、現地にいる安心して楽しく過ごせる方との交流を演出できます。

あとは、海外旅行客や訪日旅行客向けに、旅行のウェブマガジンを制作したり、
飲食店やホテル向けに、訪日旅行客のエンゲージメントを高めてリピーターを増やせるようなサービスを、SaaS型で提供したりしていました。



(株式会社ワンダーラストでの日々)

しかし、コロナ禍でマーケットがゼロになってしまって。それとともに、コロナの影響で自分の価値観も変わりました。

ーーどう変わったんですか?

コロナ禍で会社の業績が下がり続ける中、政府の対応に疑問を持ったところから、「どうして現代社会はこんな風になってしまったんだろう」と学び続けるうちにスケールが政府>社会>地球と拡大していった結果として、気候危機の深刻さを知ったことです。

特に、有名な方ですが環境活動家のグレタ・トゥーンべリさんの主張や活動には衝撃を受け、僕の背景に見える”感銘を受けた本コーナー”にも、グレタさん関連の書籍を複数飾っています。


(堀江さんのお部屋に飾ってある、グレタさん関連の著書)

気候問題の原因の一つとして、いきすぎた競争主義があげられます。各企業が時には消費者の求めていないところまでマーケティングでニーズを捏造し、目先の利益だけを考えて少しでも安く、少しでも高品質なものを作ろうとする過程では多大な温室効果ガスや人々の精神的疲弊が発生します。

気候危機に対するアプローチは複数あるかと思いますが、個人的にはもう既に、国民や各企業のちょっとした努力の積み重ねでは巻き戻せない段階まで危機が進行していると考えています。
そのため経済や社会のルール、そこに紐づく個人の価値観の体系から変わる必要があると考える中で、脱成長主義、脱成長コミュニズムなどと呼ばれる、資本主義的な価値観や経済成長に捉われず、コモンズ(共有資源)の概念化と活用を軸として、地球環境と人々の精神面での幸福に配慮していく考え方に興味がわきました。

それからどうすれば、そういった思想レベルの話を社会実装していけるのかを考えるようになり、実現手段の一つとして地域通貨に関心を持ちました。

色々な会社を見たのですが、やはり地域通貨事業は、自治体と連携してやるべきもの。トラストバンクは、すでにほとんどの自治体と関係をもっていたので、この会社以外では自分のやりたいことが成し遂げられないと思い、入社しました。

|入社して初めて知った、自治体の熱意

ーー入社して3か月経ちますが、会社に慣れましたか?

まだ慣れていない部分が大きいですね。

自分がやっていた会社は、一番大きい時でも30名の規模だったので、単純に企業としてのサイズが違います。それに、初めて話す人たちとフルリモートで始めることも、結構大変でした。

先日、初めてchiica事業部のみなさんと直接お会いしたので、そこでようやく気持ち的に楽になりました。

ーー慣れない環境下で、自分なりに意識したことはありますか?

リアルの場面でもそうですが、余計なことは考えないで素直なコミュニケーションを取るように心がけています。

フルリモートだとテキスト上のコミュニケーションがメインになります。文面から、何か意図があるのかと深く読み取ることで、本来は相手が意図していないことまで考えてしまう。逆もまた然りだと考えているので、そういう状態にならないように、僕自身もテキストのコミュニケーションにおいては、書かれていないことまで読み取ろうとしない、意図を込めたテキストは送らないよう心がけていました。

ーートラストバンク入社後で、印象に残っている出来事はありますか?

トラストバンクに入社して、たくさんのすばらしい方々と出会えていますが、そのなかでも印象的なのは深谷市で地域通貨事業を進める部署の職員さんです。

その方は、地域政策学の博士号をもっていて、 EBPM(Evidence-Based Policy Making)と呼ばれる、証拠に基づいて政策を出す考え方や、事務事業評価のリアルタイム化をデジタルの力で行政に実装するビジョンをお持ちで。地域通貨も、それを実現するパーツの1つと考えられています。

そのビジョンがとても面白くて、毎週そういったお話ができるのがとても楽しいですね。僕も深谷市に住んでいるので、たまに飲みにも連れてってもらいます。

ーートラストバンクで働く魅力を教えてください

自治体の熱意を間近で聞けることです。市民に関わる職員さんたちが、どんな想いで、どういうところで悩んでるかを聞ける。やりがいのある環境で働けています。

本当に失礼ですけど、この会社に入るまで、地方公務員は安定志向の人ばかりだというステレオタイプを持っていました。でも、実際接してみると熱意のある人ばかりで。
深谷市の方々は、「市民のために」を常に有限実行されていて、頭が上がりません。

ーー深谷市に住んでどんな魅力を感じていますか?

ずっと東京の都心に住んでいたのですが、深谷に来て初めて気づいたことが、人口密度の高さはそれだけでストレスになるということ。今はいわゆるQOLがとても上がっていますね。

あと、僕は山など自然に飛び込むのが好きなのですが、そういった場所がとても近い点も魅力です。花粉は都心より大変ですけどね(笑)



(深谷駅前と市内の名山「鐘撞堂山」からの景色)

|トラストバンクは、自分の信条に合う会社

ーー今、トラストバンクをどんな会社だと感じていますか

「自立した持続可能な地域」をミッションとして掲げており、地域通貨はそれを経済の側面から体現する役割を負っていると考えています。

例えば、ふるさと納税や給付金などで住民にお金が入っても、ほとんど都心、外資に資本を持つサービスに使われていることが実情です。それを、きちんと地域内で循環させることを本気で目指しています。

ーー堀江さんは色々な会社さんをご存知だと思いますが、そういう会社は珍しいですか?

そうですね。自治体さんと伴走して、収益はその結果、という考え方が強い会社だと感じます。

ーー会社の雰囲気はどう感じていますか?

入社前に代表の川村さんが言っていましたが、全員が基本的にいい人というところがとても良いですね。採用面で、そういう人たちが入るようなブランディングができているのかもしれません。

トラストバンクでは、フルリモートでも可能な限りストレスがないコミュニケーションができていて、良く設計されているなと思います。

|思い描く社会のためにできること

ーー今後トラストバンクでどんなことをしていきたいですか?

これは今回の取材で、僕が一番話したかった内容です(笑)

改めてchiica事業部が目指すものを説明すると、地域外から入ってきたお金を外に出さず、内部で循環するような状態をつくることです。しかし、今の状態のchiicaを導入してもそれが実現できないのが現状です。


(資料をつかって説明してくださいました)

自治体は、chiicaのポイントを発行し、ユーザーは、コンビニのATMやクレジットカードで地域通貨をチャージして、お店などで使います。
本来であればお店に入った地域通貨はその後、お店の従業員の給与や仕入れに使って頂き二次流通、三次流通に繋がっていくことで域内乗数効果を生み出すのですが、法的な制約等から、加盟店と行政とのやり取りの中で、一次流通の後で現金に戻されてしまうのです。

循環できているようで、まだまだできていない。だから、他の電子マネーとかとさほど変わらない、本当は「地域通貨」と呼ぶことには違和感がある状態なんです。

chiicaにはそこを突破して、域内乗数効果を理論上の最大値に近付ける地域通貨プラットフォームになって欲しいですし、それによって地域が豊かになることを、色々な自治体さんに伝えていきたいです。

あくまで理論値にはなりますが、地域通貨が現金に戻せない世界では、例えば初年度に1億円を地域通貨に投資してもらい、翌年からは1,000万でも2,000万でも足してくれれば、地域内のお金は外に出ていかず、増え続けますよね。

そうすれば、小さい単位でもかなり豊かな経済がつくれます。毎年地方には地方交付金が入りますが、一部だけでも地域通貨に変えられたら、地域が疲弊しません。
それどころか、地域通貨で給与を支払うことで、地方の企業が東京の企業より高い給与を支払う世界も考えられるわけです。
これは地方が抱える人口減少問題の解決に繋がるのはもちろん、「持続可能な地域」どころか「発展可能な地域」づくりにも貢献できる可能性があると考えています。


ーーこのビジョンに対し、堀江さんはどんな活動をしていますか?

深谷市が今取り組んでいる問題として、地域通貨自体の持続可能性という問題があります。

chiicaを導入すると、弊社に対してのシステム利用料や、ユーザーがクレジットカードでチャージする際に発生する手数料がかかります。さらに、最初はユーザーを増やすために、自治体が原資を負担してポイントバックキャンペーンなどを行います。

それらが自治体の大きな負担になり、長期的な運用が非現実的になる可能性が出てくるのです。

これから税収が減っていく中、追加のコストをカバーすることは、かなり難しい。運用コストをどう下げるのか、トラストバンク側もどう利益を得ていくのかを、深谷市さんと一緒に検討しています。

僕としては、深谷市で地域通貨事業成功の先例をつくることも目指せればと思っています。実際に地域通貨を導入すると、地域内の経済がどうなるか、目に見える結果を出して、それを他の自治体に横展開して、一つでも多くの豊かな地域づくりに貢献したいです。

ーー堀江さんの今後のキャリアプランを教えてください

冒頭でもお話した脱成長コミュニズムの社会実装に長く携わっていけたらな、と思っています。正直、長期的な人生設計はあまりないんです(笑)。性格的にも行き当たりばったりの人生ではあったので。

今は「社会はこうあるべきだ」というビジョンを強く持てているので、それに貢献できるような仕事をしていきたいです。
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次回の「トラストバンクの人」お楽しみに。

(取材執筆=広報渉外部インターン・佐々木あさひ)

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