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【代表インタビュー】技術提供屋から新規事業の実現屋へ - タビアンが描く新しい未来

はじめに

今回は代表取締役の難波に、タビアンのブランド刷新に込められた想いや考え方についてお話を伺います。

2022年から23年にかけて登場した生成AIにより、システム開発の現場で技術環境が大きく変化しています。また、開発プロジェクトにおけるエンジニアの役割も変わりつつあります。そんな中、これまでSaaS開発に特化したシステム開発会社として活動してきたタビアン株式会社が「開発駆け込み寺」サービスを立ち上げました。

なぜブランド刷新を図ったのか、また新しいブランドを体現するメンバーや事業への想い、タビアンが大事にするエンジニア観まで事細かにお伺いしていきます。

前編は、主に経営や事業の在り方について、中編は組織やチームの在り方について、後編は個人の成長やキャリアの在り方について、といった様々な視点からタビアンの新しい挑戦についてご紹介していきます。

▼難波 和之(なんば かずゆき)

タビアン株式会社 代表取締役。10歳からプログラムを書いてきた、根っからの実現屋エンジニア。東京大学工学部システム創成学科/東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学 出身。学生時代からエンジニアとしてプロダクト開発に携わり、学生の間に受託開発会社を創業。フューチャーアーキテクト株式会社の技術研究開発部門にて、先端技術研究や新規事業、SaaSプロダクト開発等に従事。新規事業の「プロダクト開発」の手法に熟練する。大企業〜スタートアップまで多数のプロジェクトに参画。100件を超える開発プロジェクトを再生した実績あり。

「開発駆け込み寺」ブランドを確立した経緯 - 市場が求める新しい存在へ

ーまず最初に、 「開発駆け込み寺」とはどんなブランドかを教えていただいてもいいですか?

「開発駆け込み寺」というサービスブランドは、一言でいうと「(自社の)開発プロジェクトがうまくいっていない時にいち早く相談できる存在」というコンセプトになります。

まず、開発が進まない、外注で失敗した、売上が伸びない、といった問題を抱えている開発プロジェクトを事業作りやプロダクト開発のプロであるタビアンが第三者的に診断します。診断結果を元に、実現可能なシステム、成長可能なサービスが両立する事業シナリオを作成します。さらに、最適な事業シナリオを元に、0→1の企画、開発、PMF、サービスグロースまで伴走する、といった一連のプロセスを表現しています。

ー 「開発駆け込み寺」というブランドはどのような経緯で生まれたのですか?

結構ノリで決めました(笑)。別に僕が駆け込み寺を目指したわけじゃないんです。仕事でお世話になっている友人に「自分たちで一回やってみたけど、うまくいきませんでした。なんとかしてください」というご相談が多いんですよ、というお話をしたら、『それ、(開発プロジェクトで)困った人の駆け込み寺ですね』と言われたのがスタートです。

『じゃあまずは小さく作ってみましょう』とか、あるいは『誰かに専門家に頼んで作ってみましょう』とか。困った時にその問題を解決してくれる、あるいは相談させてもらえる、愚痴を言うだけでもいいかもしれない。そういうことをしてくれる存在って、一般的な開発会社とか新規事業開発支援の会社にはあまりいないようなんです。彼らは「要件が最初から明確なお客さんと話したい」「一定の予算をお持ちの会社とお取引したい」と思うことが多い。なぜなら「ビジネス」だから。だから、みんな結構困ってるんだなというのを感じました。

ー このブランド刷新による変化はどのようなものがありましたか?

ポジティブな面とネガティブな面があります。まずネガティブな方からお話すると、それまでは僕らは開発技術を提供する会社だったんです。(SESという意味合いではないけど)人材提供と言ってもいいかもしれませんが。ある意味なんでもできますよという言い方をしてきたので、開発ベンダーとしては都合が良かったんです。色がないというか。

でも今回は絞りました。新規事業の実現と課題解決というところに。そうすると、ただ単純に人が欲しかった人からしてみると、ちょっと違う集団だなということになるので、できることとできないこと、やることとやらないことを分けました。一時的に受けられる仕事の量は減ってしまった印象がありますね。

ー 一方でポジティブな変化というのは?

ポジティブな部分は、ちゃんと会社としてのブランドを作っていくことができると思うんです。特に実現屋エンジニアという言葉は、どちらかというともっと根本的にそのエンジニアって何をするべきなのかというのを表現したものなんです。

このコンセプトが広まっていくことができれば、日本中で物作りに苦労する人というのが減っていくと思いますし、事業企画を実現をしていくエンジニア集団としても、実現していくことが大切なんだという布教活動にもなると思ってます。

ー 他社との差別化ポイントについて、もう少し詳しく教えていただけますか?

どちらかというと近いのは、新規事業の企画とかを支援しているコンサル会社が近いと思っています。なんですけども、彼らは開発やらないんですよ。僕らはあくまでもプロダクト開発をしていて、その延長で事業開発までを支援していきます。

どちらかというと、彼らがコンサルティングを提供しているのに対して、僕らはものづくりを提供します。もちろん、その一環で例えば役員に対してとか、社内に対して報告をする、あるいは啓蒙していく必要があるので資料作りが必要ですとか、課題の整理が必要です。あるいは組織の作り直しが必要ですとか、プロジェクトの進行を他部署と調整していく必要がある場合にはコンサルメンバーが入ってくるんですけど、それ以外に事業を立ち上げるために必要なものは全部ものづくりだという言い方をしています。

生成AI時代の到来 - 「技術力が強み」の限界を見つめ直す

ー タビアンの在り方を再定義する際に、生成AIという存在は影響が大きかったのでしょうか?

生成AIの登場は大きなキッカケの1つだと感じています。生成AIが出てきたタイミングで、別に何か致命的に自分たちに影響があったわけじゃないんですけど、生成AIは相性が良い技術だということがすぐにわかりました。世の中にどういう変化があるかわからないけど、少なからず変化があると思っていました。

最初は生成AI自体を売っていこうとしていて、すぐにプロトタイプのプロダクトやソリューションを開発して、2023年5月の AI・人工知能EXPOという展示会にも出展しました。反響はとても大きくて、お取引に繋がる顧客との出会いもあり手応えを感じていました。

一方で、おそらく世の中のほとんどの企業が気づいたと思うんですけど、生成AI自体を売るのはすごく難しくなりました。すごく変化が激しいですし、その技術を作ってるのは日本の企業ではない。例えば日本国内だったら、生成AIを使って企業向け研修をしてる会社さんが、ある程度ヒットしてたりとか、生成AI使ったDX支援みたいなところをやってる会社さんが儲かってたりとかはしてます。

会社として、AIの在り方(人間とAIとの接点がどのような形になっていくか)を捉え直していこうとしています。生成AIは小さいシステムとして動くのが良いだろうと。イメージとしては、システムそのものは今までと同じような形でも、その中に隠れるような形で複数のAIが動いている、ユーザーがAIというものを意識せずに自然にシステムを利用しているっていう状態が良いでしょうと。エンジニア目線での言い方をすると、今までは技術実現上の課題でif文やデータクエリ1本で書けるロジックにしていたところを、ロジック単位で生成AIに置き換えていくことで、作り手都合を減らして違和感の少ないUI/UXで要件を満たせるようになります。

ー その中で、自分たちの価値をどのように見直されたのでしょうか?

それまでは、結構、先端技術を組み合わせてタワーみたいな形で売ってきたんですけども、生成AIが大きく出てきて、技術だけで何とかなるとも言ってられなくなってきました。一方で、「課題解決屋です」という風な言い方をしていても、大手のITコンサルとか、新規事業コンサルの人たちとかと比べると、よくわからないポジションになっちゃいます。

自分たちはどういう風な位置付けがぴたりとハマるのかと模索し、これまでのプロジェクトをお話を貰う段階まで遡って紐解いてみたんです。そうしたら、やっぱりオフショアで開発して失敗したプロジェクトの作り直しとか、自分達で作ってみたけどユーザーが定着しない・買ってもらえないプロダクトを相談したい、というのがすごく多かったんです。今までは自分たちが技術ができるから技術を使って何でもやれる「なんでも屋」というポジションで売ってきたつもりだったんですけども、そこで外部からの視点(市場でのポジションニング、顧客にどのような貢献ができるか)を入れた時に、自分たちの得意領域を再定義することができました。

ー 生成AIの登場といった急激な外部環境の変化にアジャストする中で、タビアンの存在意義が変化してきたのを感じます。

変化したというよりは磨かれた、ぼんやりしていたものの輪郭がハッキリしたという感覚の方が強いですね。「開発駆け込み寺」というタビアンが提供できる価値というか、サービスブランドが明確になったことで、自分たちが社会においてどういう存在であるべきかというコーポレートビジョンも刷新されたものが見えてきました。それが、新規事業を実現するチームであり、「新規事業の実現屋」というビジョンです。

「なんでも屋」から「実現屋」へ - 新たな価値提供への転換

ー それが「新規事業の実現屋」なのですね。なぜ、一定のニーズがあった「(先端技術を使って開発する)なんでも屋」としての立場から転換を図ることになったのでしょうか?

世の中のニーズの変化と、自分たちの会社の成長を支えられないという思いがありました。世の中側の変化でいうと、先程申し上げた通り、生成AIが出てきて、今までは技術で作れますというところだったんですけども、生成AIを使ったらなんでもできちゃうような形になってきた。

「なんでもできること」は、技術において色々制限が多かった世界では、その制限を打破するために魅力的な手段だったんです。ところが、生成AIが登場して、色々な制限がとてつもない速度で突破されてきています。また、事業を立ち上げるのがすごく難しくなっていて、ほとんどの課題というものが解決されてきていて、課題解決型の事業の立ち上げは難しいんです。どちらかというと、ストーリー提供型だったり、体験提供型だったりしなければ、なかなか世の中に受け入れられていかない。

そういう状況になった時に、「なんでもできます」という強みは、そこまで優先順位が高くなくなった。なんでもできますというのが、実は非常に柔軟な姿勢を打ち出しているように見えて、すごい受け身なんです。言い換えると「何か言われたらやります」なんです。そんな受け身のスタイルでは、世の中の変化に対して追いつけなくなってきているというのを感じています。

じゃあどうするか。待つんじゃなくて、自分たちで積極的に働きかけていく側になりましょうと。実現屋になるためには、自分たちでも実現をしていかなきゃいけない。クライアントワークとして事業やサービスの実現をやっていくんですけど、実現したいものを持ってる人たちと一緒に実現をしていく。

割と自分たちの中でも発案したものを育てていこうということもしてたりしますし、コラボレーションで他の人が思いついたことを私たちが一緒に立ち上げていこうという動きをしてたりもしています。以前の待ち・受けのスタイルから、自分たちで動くというスタイルに変わってるんです。

まとめ - エンジニアリングの本質を追求する

いかがでしたでしょうか?

タビアンの変革は、生成AI時代における新しいエンジニアリングの形を模索する挑戦です。技術提供だけでなく、事業の実現に向けて能動的に関わっていく。その姿勢は、開発の現場で困っている人々の「駆け込み寺」として、確かな存在感を示し始めています。

次回は、このような新しい方向性を支える「オールスタックエンジニア」という考え方と、タビアンが追求する「しなやかさ」について、詳しくお伝えしていきます。

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