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技術者であり続けた自分が、画コンテを描いている理由。

映像を作ることを仕事にしている私たちT601という会社は

主にプリプロダクション(企画制作)とポストプロダクション(撮影後の映像処理技術)という

両方の機能を併せ持つハイブリッドな映像制作プロダクションです。

昔はあまり見かけないスタイルでしたが、時代の流れとともにT601も変化してきました。

【掃除が宝の山だった時代。】

私が映像業界に足を踏み入れた頃の話をしましょう。

「薄暗い部屋にテレビがいっぱいあって、なんかカッコいい。」という理由のみで、

映像制作のワークフローが全く分かっていない素人の私は

ポストプロダクションでアルバイトからスタートしました。

なんかよくわからないが、ここに居れば映像が作れるようになる。

そう思っていました。

完全無垢な素人である私にできることは、テレビがいっぱいある部屋の掃除です。

朝誰よりも早く会社へ行き、全ての編集室の掃除をすることが私の最初の仕事でした。

フィルムで撮影し、現像してVTRへ変換(F-T)し、

オープンリールのVTRを何台も制御してダビングを繰り返す編集をしていたその頃、

仕事で使用した資料や画コンテなどはシュレッダーにかけることなく、

そのままポイッとゴミ箱に捨てられていました。

今では考えられないことですが、当時は当たり前のことだったんです。

朝、編集室の掃除をしていると

ゴミ箱には前日作業していた仕事の資料がよく捨てられていました。

それらの資料を拾って見ているだけで、もう映像業界のプロになったような気分に浸る。

それが朝一番に出社して掃除をする自分だけの特権でした。

特にディレクターが沢山メモを書き入れた画コンテは特別なお宝で、それを見るのが楽しすぎて

朝の掃除が全く苦にならなかったのを覚えています。

今にして思えば、映像業界特有の専門用語は、そのほとんどを朝の掃除の中で覚えたように思います。

自分もいつか、こんな画コンテを描いて映像を作る日がやって来る。

そう思って日々頑張っていたわけです。

ところが、いつまでたっても画コンテを描かせてもらえない。

【自分の立ち位置を知る日。】

毎日、編集のアシスタントやVTRコピー作業に明け暮れる。

で、先輩に聞いてみました。「いつ頃コンテを描かせてもらえるようになるのか」と。

「そんなん書くかいな。ウチ、ポスプロやで。」

ポスプロ?描けないのコンテ?ポスプロってなんや?

あんなにキラキラしていた朝の掃除の日々が、音を立てて崩れていくようでした。

この時初めて、映像制作ワークフローにおける自分の立ち位置というものを自覚したのです。

自分はポストプロダクションにいる。コンテ作業はプリプロダクションでやるもの。だから、できない。

【続けること・知ることは面白い。】

自分でアイデアを考え、コンテに落とし込んで映像を作っていく。という仕事を目指すのなら

立ち位置に気づいたこの時点で会社を辞め、制作会社に行けば良かったんです。

しかし全くのゼロスタートだった自分にとって、

かなり覚えてきたポストプロダクション作業は面白いものでした。

このタイミングでは、画コンテを描いてみたいと思う熱量を、

ポストプロダクションでの経験値が上回っていたんですね。

私は結局そのまま映像編集の仕事を続け、会社を辞めてフリーランスになり

その後T601の設立に参加することとなります。

設立当時のT601は、編集スタジオとCGスタジオを有するポストプロダクションとして歩み始めました。

そして時代の流れと共に会社も変化し、今ではプリプロダクションとしても仕事をし

気がつけば今では映像ディレクターとして、画コンテを描くことが大きな仕事の1つとなっています。

【「仕事ができる」って、ありがたい。】

人生はよくわからんものです。

大事なことは、目の前のミッションをひたすら大切にこなし続けるってことです。

こなし続けることで、何かのプロになれる。自分に胸を張れる肩書きが持てる。

そうしながら、強く思っていれば、違う道のようでもいつかは目標に辿り着ける可能性がある。

この業界に足を踏み入れて、もうすぐ30年になります。

それでも今、あの朝の掃除をしていた頃のキラキラした感じで仕事ができている会社って

ほんとにありがたいなぁと思っています。

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