社長百景 4 「縁のあるもの」
社長になると、あちこちの金融機関からお誘いが来る。
金やプラチナを買いませんか?株が買い時ですよ? などなど。
一体どこで調べるのだろう?と思うけれど、
まあ、「蛇の道は蛇」で、どの世界にも、
その世界独自のやり方が存在し、世界は回っているのだから、
それはそれで良いと思っている。
私はあまり金融商品には興味がないが、
子供の頃から不動産には目が行く、というか、呼ばれる気がする・・・。
楽園を創りたいからではないかと思う。
親に聞くと、3歳で三輪車にまたがり、
「鯉のぼりのある家」を目指して、道の真ん中をつき進む私の後ろで、
車が渋滞を起こしていたらしい。
小学生になると、自転車にまたがり、街のあちこちに行っては、
お気に入りの家を見て回っていた。
現在シエナの本館がある場所は、白金台駅から1分なのに、
だれも見向きもしない、かなり長い間使われてない古屋が建っていた。
その日も私は、折り畳み式の小さな自転車で街を見て回っていた。
建物の裏側に回ると、猫が木陰で昼寝をしていた。
「猫が安心して昼寝できる場所」というのは、
人にとっても、かなり居心地が良い場所だ、という事を、
子供からの街の観察で、私は知っていた。
ここをサロンにしたら、都心なのに、まるで軽井沢のようだ,
ゲストも心地良いはず。
それから私は、土地に魔法をかけた。
まるで既にあったかのように未来の事を綴る「未来日記」を描いた。
3年後、主人公であるYOCCOが、
完成したサロンの3Fテラスで、小鳥たちに餌をあげる休日の朝のシーンだ。
その後、当たり前の日常が積み重ねられた3年後、
未来日記に記した日付より、一週間早くそれはそのまま実現した。
自分でも魔法の威力に半分驚いた。
半分と書いたのは、もう半分はやっぱりそうだったか、
という感覚があったからだ。
人には、何か縁のあるものがあると思う。
言い方を変えると、どうすれば良いか、何故か知っているものだ。
大体それは手に入るし、やってくる。
私の場合、たぶん街や、家、猫に縁がありそうだ。
例えば、
人間が土地を選ぶだけでなく、土地の方も、人を呼んだりする感じだ。
私は、この土地に呼ばれ、猫に呼ばれ、
今その土地はサロンとして再生し、猫が住み着いている。
あの時の猫の子孫だと思うから、
どこか運命と感謝の気持ちを併せ持っているので、とても大切にしている。