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安定を手放し、夢を取り戻す。 「次の時代の旗」を立てる50歳からの挑戦
大学卒業後、27年にわたり大手広告代理店・ADKでキャリアを積み、シニアクリエイティブディレクターとして数々の広告を手掛けてきた田中壮太郎さん。順調なキャリアを歩んできた彼が、50歳を迎える節目に選んだのは、ベンチャー企業・ノバセルへの転職でした。
「クリエイティブで新しい夢を見たい」──。
安定を捨てて新たな挑戦に踏み出した理由と、今直面している葛藤。そして次の10年にかける想いを伺いました。
目次
安定を手放し、夢を取り戻す。 「次の時代の旗」を立てる50歳からの挑戦
27年のキャリアの先に見えた“はしごを外される”感覚
大手の恵まれた環境を離れて ── ベンチャーで再発見した仕事の本質
美意識が数字で否定される時代に ── クリエイターはどう挑むのか
《編集後記》 次の時代の旗を立てる、等身大の挑戦
27年のキャリアの先に見えた“はしごを外される”感覚
── まずは田中さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
田中: 1997年にADKへ入社してから、27年間在籍しました。最初のキャリアはストラテジックプランナーとしてスタートし、その後クリエイティブへ転身。CMプランナーやコピーライターを経て、クリエイティブディレクター、そしてシニアクリエイティブディレクターへと昇格し、最終的には30人規模の局を率いる局長職を務めていました。
── ストラテジックプランナーからクリエイティブへの転身は珍しいですよね。
田中:もともと絵や音楽などの創作が好きで、その得意分野を活かしたくて広告代理店のクリエイターを志望していたんです。ですが、残念ながら新卒で配属されたのがストラテジックプランナーで、正直お先真っ暗な気分で20代を過ごしました。
当時の広告業界にはスタークリエイターという明確なロールモデルがあったんです。雑誌を飾り、世の中を沸かせる広告をつくる ── 自分もいつかそこにたどり着きたい、とぼんやり考えていました。自分とは何の関係もない商品の広告になぜか救われたり、人生観を激しく揺さぶられたりするクリエイティブの魔法にすっかり取り憑かれた、青臭い若手でした。
とはいえ優秀な先輩方との出会いもあり、買いたい気持ちを科学するマーケティングの奥深さに面白さを感じるまでにはなってはいました。でも「だったらなおさら自分で制作したい!」というクリエイティブへの片思いを余計こじらせてしまい… 7年目に社内試験を受け、念願のクリエイティブへ転身を果たすことになります。その時ちょうど30歳でした。
── 順調にキャリアを積まれてきた中で、転職を考え始めたのはなぜでしょうか。
田中: クリエイティブディレクターとして成熟し、多くの顧客と向き合うようになると、それまでなかった良識や大きな予算を動かす責任感も強まり、考える変数も多くなります。そんな中、まだどこか「好きな創作の延長」でクリエイティブをやろうとしている自分に、だんだん「ビジネスごっこ」に興じているような嫌悪感を覚えるようになっていきました。また、信仰してきたレガシーなクリエイティブモデルがデジタルの波にさらわれて「はしごを外された感覚」にも悩むようになったんです。
「50歳からの10年をどう生きるか」──。その問いが浮かぶようになったのは、コロナ禍の頃でした。悩んだ末に辿り着いたのは「ちっぽけな勲章にしがみつかない」ということ。会社の看板で手に入れたにすぎない借り物の実績は捨てて、社会を変えたり、弱者を救ったり、人の幸福に貢献する「本物の仕事ができる個人」になりたい。その想いがノバセルのビジョンと重なりました。
クリエイティブは「チャンスを創り出す仕事」だと思っています。たとえば資本力のない中堅中小企業が事業成長する過程をアイディアで支援する ── これが「クリエイターをやりきった」という喜びを得るための、最後のキャリア選択だと思ったんです。
大手の恵まれた環境を離れて ── ベンチャーで再発見した仕事の本質
── 実際にノバセルに入社されて、いかがですか?
田中: これまで体験したことのないベンチャーの流儀やスピード感にもがく毎日です。仕事内容は大きく変わらないはずなのに、全くルールの違う競技に参加している感覚ですね。数字がモノをいい、目にみえる結果がすべての世界なので、クリエイティブ思考という無形のものを組織に活かすことの難しさを感じています。
前職はある程度の大手で「人・モノ・金」がすべて揃っており、本当に恵まれていたんだなあと初めて気がつきました。クリエイティブの仕事を「事業」という意識で捉えたこともなかったので、マネージャーとしての心理的負荷のかかり方も以前と違います。自分自身もフロントに出て案件化する覚悟がなければ、作るべきクリエイティブすら存在しない。その中で大きな資本に立ち向かうのは簡単ではないことも分かり、なんてことないと思っていた前職の存在が今は大きく見える不思議な感覚を味わっています。
なんというか… 半分魔界に迷い込んだ気分です(笑)。でも入社半年すぎた頃からこのカルチャーでの挑戦を、面白がれるようにはなってきました。
── 現在ノバセルではどのようなミッションを担われているのですか?
田中:まずは、ノバセルのクリエイティブを統括するマネージャーとして新しいクリエイティブの型をつくり、それを武器に中堅企業がひしめく市場でビジネスに直結させることです。それも含めて、質のいいクリエイティブワークを再現性高く生み出せる環境をつくり、組織全体の底上げを図りたいです。まだなかなか手が回り切っていないのですが…。
また、プレイヤーの立場でも、シニアクリエイティブディレクターとして大型顧客を獲得し事業部の収益安定化につなげることも求められています。
── 特に「型づくり」について詳しく聞かせてください。
田中:属人性の高いクリエイターの思考回路を、AIを活用して組織の形式知にすることを目指しています。かなり難しい取り組みですが、質の高いアイディアをメンバー全員がアジャイルに生み出すフレームワークを、コンペなどの日常業務で実戦投入できるといいと思っています。
AIでクリエイティブもコモディティ化に向かっていますが、そんな中で「AIに再現できないアイディアの金脈に手が届くラストワンマイルをどうすればクリアできるのか?」、ゆくゆくはこの原理を解明し“理屈じゃないものを、理屈でつくれる仕組み”まで辿り着きたいです。
マス広告制作においても数千万円レベルだった相場感や、数ヶ月を要した制作期間も、近い将来一気に短縮される可能性も出てきました。そうなると全く新しいクリエイティブビジネスの市場が生まれる可能性があります。アイディア開発からデリバリーまで「クリエイティブで期待できるノバセル」にすることを中長期的なゴールに見据えています。
美意識が数字で否定される時代に ── クリエイターはどう挑むのか
── ノバセルのデータドリブンな文化で、特に苦労されている点はありますか?
田中:長年クリエイティブ制作をしていると、「こういうものが作りたい」という美意識が自然に育ってしまうものですが、それを数字に否定されるとフォームを崩してしまいがちです。もちろん、効果を売るのに作風など必要ないと分かってはいますが、個性を封印されてうまく出力できない感覚を何度か感じました。こういった悩みからクリエイターを解放する意味でも「組織としての型」が必要なのかもしれません。
また広告効果を測定するために、表現をカットやレイヤーなど個別のパーツに分解して分析したりしますが、それに抵抗感があり… 動画なら文脈があるし、編集のリズムや”間”といった「全体の印象を支える演出」も広告評価に大きな影響を与えていると思うからです。「なんかダサい」「なんかステキ」みたいな生理的反応は、トーン&マナーや世界観から生まれることも多いですが、ここは言語化しづらくPDCAでコントロールすることが難しい領域です。最終的な仕上がりを頭の中でイキイキと想像でき、ターゲットの反応を「経験的に計算できる」ことが、クリエイターの最後の砦なのかもと、今は思ったりしています。
こういった「正しい」と「面白い」がなかなか両立できないクリエイティブの壁をこの会社で突破したい、と考えています。
── その壁を乗り越えるために、どのような意識が必要だと感じていますか?
田中:「正論」と「正解」を、取り違えないことです。
日々数字と向き合って論理の矛盾がないように追い込むほど「この勝ち筋しかない」という偏った正義感が芽生えることがあります。でも、「筋が通ってるものが、ビジネスの正解とは限らない」ケースって結構ありますよね。例えば、CMの提案でどう見ても客観的に確からしいデータを経営者に突きつけて「正論」をぶつけても、「もっとインパクト重視がいい」「こっちの企画の方が面白い」「それよりタレント一発で行きたい」とあっさり取り下げられることも多々あります。その時は理不尽に思えますが、後から思うと視座の高い経営者の直感の方が「正解」だったなんてことも意外とあるものです。
とにかく合理的で正論しか言わない頭のいい人より、多少出来が悪くても愛嬌のある人の方がお客さんに可愛がられたりもしますよね。面倒くさい人と組んでも、仕事は楽しくならないからです。そういった人間の非合理的で矛盾だらけの部分を受け入れ、現場に生かせるのもビジネスの技術であり、実はクリエイティブで最も必要なスキルだと思っています。
── 挑戦を続ける原動力は?
田中: 気力や体力が続くか不安もありますが、「次の時代のクリエイティブビジネスに旗を立てたい」という気持ちを諦められないからです。新しい流れを生み出し、業界に新しい“型”を残したい。「クリエイティブはチャンスを創る仕事」と言いましたが、自分がそれをやらせてもらえるチャンスが今ここにあると思うからこそ、踏ん張れています。
また、年齢の限界を超えてまだ成長したいですし、自分に期待したいからでもあります。周囲はほぼ年下で優秀なメンバーばかりですが、違和感なくやれているのは教わることが多いからかもしれないですね。
いつか、いまの若い人たちが50歳になった時に「そういえば無謀にもベンチャーに飛び込んで成功したおじさんがいたなあ」と思い出して、勇気を与えられる前例になっていたいです。
《編集後記》 次の時代の旗を立てる、等身大の挑戦
田中さんとお話ししていて印象的だったのは、27年間の豊富な経験を持ちながらも、謙虚に新しい環境を学ぼうとする姿勢でした。今の環境を「まるで魔界」と表現したのも、大手しか知らなかった自分にとって、ベンチャーの世界がそれほど新鮮で衝撃的だったから。未知の世界に飛び込む怖さと同時に、そこでしか得られない発見があることを象徴する言葉だと感じました。
50歳からの新たな挑戦は決して容易ではありません。しかし、安定を手放してでも「夢を取り戻す」と決意した田中さんの姿は、年齢に関係なく、私たち一人ひとりに勇気を与えてくれます。次の時代の旗を立てる ── その強い信念が、クリエイティブの力で人の幸福に貢献する未来を切り開いていくのではないでしょうか。
🦅 田中さんのように、新しい環境に飛び込み、自分の可能性を広げたいと考える皆さんと、ノバセルでお会いできることを楽しみにしています!