中国のモバイル決済市場は、WeChat PayとAlipayで90％以上を占めています。QRコード決済は、スマホアプリを開発して、利用者と加盟店に提供すればサービスが開始できるので、クレジットカードなど他の決済に比べて、参入障壁が低いのが特徴です。

そうはいっても、言うは易し行うは難し。参入は簡単でも、利用者や加盟店を増やしていくことは簡単ではありません。

では、WeChat PayとAlipayはどのようにして決済サービスを普及させることに成功したのでしょうか？両者のビジネスモデルを分析してみたいと思います。

消費者の不安・不便を解消するサービス

WeChat PayもAlipayも、もともとはQRコード決済サービスをするために生まれた会社ではありません。

■WeChat Pay

WeChatという音声メッセージサービスからはじまり、後に決済機能のWeChat Payを追加。

中国は電話料金が高いためメールを利用する人が多かったが、文字入力が面倒という「不便」を解消するために、電話で話すようにやり取りできる音声メッセージを開発。これが中国人に受けて、「電話未満メール以上」という地位を確立し、爆発的に普及。

■Alipay

タオパオというCtoCのECサイト向けの決済サービスとして生まれたのが、Alipay。

個人間でお金をやり取りする仕組みだと、「買い手が支払わない」「支払ったのに売り手が商品を発送しない」というトラブルが起こる可能性が大きい。

こうした「不安」を解消するために、発送前に買い手がお金を支払ってAlipayにプールし、商品到着後に売り手に支払われる仕組みを構築。ランサーズなど日本のクラウドソーシングでも、同様の仕組みが使われている。

利用者を囲い込み、増やす戦略

主力事業がQRコード決済でない中で、どのように利用者を増やし、利益を上げているのでしょうか。WeChat PayとAlipayは、具体的な施策こそ違うものの、実は、同じ戦略を取っています。

■WeChat Pay

WeChat Payを提供するTencentは、ゲームや動画配信サービス、広告などが主力事業。より便利におもしろく使ってもらえる機能を増やし、利用者を囲い込む。

■Alipay

一方、Alipayを展開するAnt Financialの場合、親会社アリババグループの主力事業はEC。使えば使うほどメリットを享受できるようにする仕組みで、利用者の離反を防ぐ。

このように、

魅力的なサービスで利用者を増やし、

→ユーザーを囲い込むことで、

→他のサービスの利用が促進され、

→利益が増える

…という好循環が生まれるというわけです。

さらに、他の事業で十分な利益を生み出しているからこそ、決済手数料が0.6％と、限りなくゼロに近く抑えることができているのです。

審査なし！加盟店がどんどん増える仕組み

決済サービスを普及させるには、加盟店を増やすことも必要です。WeChat PayとAlipayでは、企業の規模にかかわらず、審査なしで直接ネットから加盟店申請ができるようにしました。

申請後すぐに、情報配信やクーポンの発行、決済処理をワンストップで運用でき、利用者の囲い込みができることは、店側にとっては大きなメリットになります。こうして、一気に加盟店を増やすことに成功しました。

ちなみに、日本的な感覚だと「審査をしなくていいの？不正利用されない？」という不安が出てくるかもしれません。

もちろんこの点は、仕組みでクリアさせています。

決済トランザクション（決済の流れ）を常にチェックし、不正利用や怪しい場合には注意喚起または利用を停止します。加盟店側からすれば、不正利用をするメリットはないため、審査をしなくても健全な決済ネットワークが運用できるというわけです。

日本における戦略と将来性

中国ほどのレベルではないものの、日本でも一般的なクレジットカードの加盟店手数料と比べて、WeChat PayとAlipay のQRコード決済手数料はかなり低く設定されています。

しかも、両方のサービスを同時に扱ってはいけないという制限もないため、導入にあたってのデメリットは、ほとんどない状態です。

加えて、Ant FinancialとTencentは、訪日外国人がまだまだ増えるとの見込みから、日本国内で積極的にキャンペーンやイベントを展開し、利用の促進を目指しています。

訪日観光客のWeChat PayとAlipayのニーズや利用が増えることにより、日本社会でもQRコード決済が広がっていくことは、間違いありません。

キャッシュレス社会は、もうすぐそこまで来ています。時代の最先端をいくサービスを一緒に作り、社会を変えていきませんか？あなたからのご応募を、お待ちしています。