こんにちは、ミラティブでHRを担当している野呂です。普段は、HRBP部という主に採用と組織開発の機能を持った部の部長を務めています。
今日はAIを活用したHRの取り組みについてお話しします。
先に結論を言うと、開発経験ゼロの僕が、Claudeと壁打ちしながら約10時間で採用ダッシュボードを作りました。 コードは1行も自分で書いていません。
「いやいや、そんなことある?」と思った方にこそ読んでほしいnoteです。
ただ、このnoteで一番伝えたいのは、ダッシュボードを作った話そのものではありません。「AI × HRのスキルを実戦で磨ける環境が、ミラティブにはある」ということです。
その具体例として、まずは僕が作ったものの話から始めます。
作ったものの紹介
まず何を作ったかというと、採用管理システム「HRMOS」のエクスポートデータと連携して動く、採用ダッシュボードです。Google Apps Script(GAS)ベースで、権限を付与された社内メンバーであれば誰でもブラウザからアクセスできます。
主な機能はこんな感じです。
※スクリーンショットは全てダミーデータを使用しています。
ファネル分析 — 応募から内定承諾まで、各ステップの通過数・通過率をワンクリックで可視化。求人ごと、年度ごとにフィルタリングできます。これまでスプレッドシートでピボットしていた作業がゼロになりました。
逆算シミュレーター — 「内定承諾1人を達成するには、応募は何人必要?」を過去の通過率から逆算します。実績の通過率をワンクリックで反映でき、楽観・悲観シナリオも試せます。ファネル分析のページで目標との乖離も確認することができます。
日次進捗トラッキング — シミュレーションの目標値に対して、今日時点で順調なのか遅れているのかを、ステップ別にグラフで表示します。定例mtgでこの画面を開くだけで「どこがボトルネックか」の議論が始められます。
面接官分析 — 面接官ごとの面接回数や評価傾向(通過率・評価グレードの分布)を可視化。面接官間の評価基準のバラつきや、特定メンバーへの面接負荷の偏りが一目でわかります。面接の質を組織として担保するために、かなり重宝しそうな機能です。
その他にも、月次推移、応募経路分析、エージェント比較、リードタイム分析など、採用のPDCAに必要な分析がほぼ入っています。権限管理も作ったので、各部署のマネージャーは自部署の求人データだけが見える仕組みです。
10時間の内訳
トータル約10時間の内訳はざっくりこんな感じです。
- 要件整理・設計の壁打ち:1時間
- コード生成・デバッグ:4時間
- UI調整・追加機能の実装:5時間
「10時間って言っても、元々プログラミングできるんでしょ?」と思われるかもしれませんが、本当にできません。HTMLとCSSの違いもふわっとしか理解していないレベルです。Claudeに「こういう機能がほしい」「ここの表示をこう変えたい」と日本語で伝えるだけで、コードが出てきて、動くものになりました。
ちなみにこのダッシュボードはまだ進化途中で、次は評価コメントからのインサイト抽出に取り組もうとしています。面接官が書いた評価コメントをAIで分析して、「この求人ではどんな観点で見送りが多いのか」「通過者に共通する特徴は何か」といった傾向を自動で浮かび上がらせる機能です。これも数時間でできそうだと思っています。
特に面白かったのは、使いながら改善できるスピード感です。完成した後に「やっぱり日次で見たいな」と思ったらその場で伝えて30分後には実装されている。「棒グラフを積み上げにして」と言えばすぐ反映される。
ただ、これは「エンジニアに頼まなくてよくなった」という話ではありません。正直に言うと、今回のダッシュボード開発を通じて、普段エンジニアがやっている仕事のすごさを改めて実感しました。むしろ伝えたいのは、AIのおかげで「HRがエンジニアの工数を使わずに解決できる課題」の範囲が広がったということです。
エンジニアには、エンジニアにしかできない難易度の高い課題に取り組んでいただき、HRの業務改善は、HRが自分でやる。お互いのプロフェッショナリズムをリスペクトした上で、組織全体の生産性を上げていく。そういう関係性がミラティブにはあります。
きっかけは全社の「AI祭り」だった
実はこの取り組み、僕が一人で始めたわけではありません。ミラティブでは全社的にAI活用を推進する「AI祭り」が開催されていて、エンジニアに限らず全職種がAIを使って業務改善に取り組むムーブメントが起きています。
HRチームもこの波に乗らない手はないと思い、「じゃあ自分たちも何かやろう」とみんなで一斉にスタートを切りました。メンバーそれぞれが自分の業務課題に対してAIを使い始めて、気づいたらチーム全員がAIを業務に組み込んでいる状態になっていました。
ダッシュボードだけじゃない
ここまで読んで「ツール作りの話か」と思われたかもしれませんが、本当に伝えたいのはここからです。
ミラティブのHRチームでは、ダッシュボードに限らず、メンバーそれぞれが自分の業務課題をAIで解決しています。 具体的にはこういうものがあります。(予定含む)
- 求人票の自動生成 — ポジションの要件を伝えるだけで、求人票のドラフトを自動生成。過去の求人票のトーンや構成を学習させているので、ゼロから書くより圧倒的に速い
- 採用オペレーションの自動化 — 選考ステータスの更新通知、面接日程のリマインド、定例レポートの生成など、繰り返し発生する作業をAIで自動化
さらに、ダッシュボード系も採用管理だけでは終わりませんでした。採用広報ダッシュボード(noteやテックブログの発信実績、採用アンケート結果を横断的に可視化)や、パルスサーベイダッシュボードも内製化しています。パルスサーベイについては、内製化することで年間およそ60万円のコスト削減になっています。
これらは、全部HRメンバーがそれぞれ自分の業務課題に対して、自分で設計・構築したものです。
AIで「ジャッジ」はしない
ミラティブのHRチームには明確なポリシーがあって、AIによって人を評価したり、選考の合否を判断したりすることはしません。 候補者のスクリーニングをAIに任せるとか、AIによって選考評価を決定するとか、そういう使い方は一切していないし、今後もするつもりはありません。
AIを使う目的は、人間がより良い意思決定をするためのサポートです。情報を整理する、データを可視化する、定型業務を効率化する——そうして浮いた時間を、候補者と向き合う時間や、チームの課題を考える時間に充てる。ジャッジするのはあくまで人間です。
もちろん、候補者の個人情報保護にも細心の注意を払い、 AIへの入力や出力の取り扱いは社内規程に従い、適切に管理しています。
このポリシーがあるからこそ、安心してAI活用を推進できるし、候補者や社員に対しても胸を張って「こう使っています」と言える。ここはブレずにやっていきたいと思っています。
「安心して使える」土台がある
ポリシーに加えて、セキュリティの担保も必須です。
ここはCTOや情シスチームが、AIツールへの入力情報が社内のセキュリティポリシーに照らして問題ないかを即座に判定できる入力チェックの仕組みを整備してくれました。「何を入力していいか、何がダメか」が明確になっている状態が最初からあります。
この土台があるから、僕たちHRチームも安心して新しいチャレンジができる。「使っていいのかな……」と躊躇する時間がゼロなのは、地味に大きいと感じています。こういう環境を技術サイドが作ってくれていることにも、感謝しかありません。
本当に伝えたいこと
ここまで色々紹介してきましたが、最も伝えたいのはツールの話ではなく、「AI × HRのスキルを実戦で磨ける環境が、ミラティブにはある」ということです。
HRの世界でも「AI活用」「DX」は流行語のように使われています。でも、日本国内においてHRメンバー自身がAIで業務ツールを設計・構築し、日々改善し続けている会社は、正直かなり少ないのではないかと思います。
ミラティブのHRチームにいると、こういうサイクルが日常になります。
- 業務の中で「ここ、もっと良くできるな」と気づく
- AIに相談して、動くものを作る
- 使いながら改善する
- チームに展開して、フィードバックをもらう
このサイクルを回し続けた結果、気づいたら「AIと協働して成果を出せるHR」という、市場でもかなり希少なスキルセットが身についている。これは座学やe-learningでは手に入らないもので、実務の中で手を動かすからこそ得られるものだと確信しています。
HRのオペレーション業務はAIによる効率化がどんどん進んでいきます。その中で、「AIを使いこなしてHRの成果を最大化できる人」の市場価値は、これからますます上がっていくと考えています。
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