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突然の開発中止。そして、方向転換を経て生まれたプロダクト。LINEミニアプリ開発秘話

ヘルスケア・スタートアップのLinc'well(リンクウェル)は、LINEミニアプリ*「CLINIC FOR YOU」を提供しています。「CLINIC FOR YOU」はメッセージアプリ「LINE」上で、来院予約・変更や保険証の登録、「アレルギー検査」「総合血液検査」「PCR検査」の結果確認、検査結果の推移の確認などができるサービスです。

私たちは「ユーザーがどんなデバイスやプラットフォームを使っていても、Linc'wellが提供するサービスを利用可能にしたい」というビジョンを持っていますが、「CLINIC FOR YOU」はまさに、そのコンセプトを体現するようなサービスです。

「CLINIC FOR YOU」の開発プロジェクトは決して平坦な道のりではありませんでした。前身であるサービスの開発中止や方向転換などを経て、ようやく世に出たのです。システムの開発秘話とその経験から得た学びについて、CTOの戸本裕太郎が語ります。

*…LINEミニアプリは、「LINE」アプリ上で企業のサービスを提供可能にするWebアプリケーションです。「アプリのダウンロードや煩雑な会員登録が不要」という特長があるため、快適なサービス体験をユーザーに提供できます。また、企業はLINEアカウントに紐づいたユーザーデータを取得することで、サービスの改善や「LINE公式アカウント」などを通じたマーケティング施策に活用できます。
CTO 戸本 裕太郎
中部電力を経てLinc’wellに参画。中部電力ではCIS/ERPシステムの開発後、全社的なICT戦略の立案・実行、AI・ブロックチェーンを使ったオープンイノベーションを推進。2018年Linc’wellにエンジニアとして参画。現在はCTOとして、ハスラー+エンジニア的なムーブをしつつ戦略立案とプロダクトマネジメントに比重を置いて活動。

苦境から始まったプロジェクト。そして、開発の頓挫

――「CLINIC FOR YOU」のプロジェクト黎明期のことをお聞かせください。

「CLINIC FOR YOU」の開発が始まったのは2019年10月ごろで、もともとiOSアプリとAndroidアプリとして作ろうとしていました。LINEミニアプリとしてリリースする予定は全くなくて。そもそも、LINEミニアプリという市場があることも認知していませんでした。

サービスの開発を進めるため、まずはネイティブアプリの開発チームを組成する方針にしました。しかし、3~4か月後に蓋を開けてみると、サービスが想定していたクオリティに達していませんでした。かつ、プロジェクトマネジメントがうまくいっておらず、UI・UXもかなり悪い状態でした。

――危機的な状況からのスタートだったのですね。

かなり焦りましたね。立て直しのために私が代わりにプロジェクトマネージャーを担い、優秀なデザイナーやエンジニアに参画してもらいました。状況がだいぶ改善しましたが、ここで再び危機的な状況が訪れました。

――波乱万丈です……。

当時、サービスの目玉にしようと思っていた機能のひとつに、後払いがありました。この機能をONにしておくことで、クリニックでかかった料金を当日に払う必要がなく、クレジットカードで後から引き落とせます。

しかし、後払いを実現するには他社の会計システムAPIを呼び出す必要があるんですが、そのAPIの仕様では後払いの仕組みを意図した形で実現できないことが、リリース直前にわかりました。完全に詰んでしまったんです。そこで、「CLINIC FOR YOU」の開発プロジェクト自体をいったん止めることになりました。

差した光明。LINEミニアプリへの方向転換

――そこから、何をきっかけにLINEミニアプリを作ることになったのでしょう?

その後、同年2月頃から新型コロナウイルスが流行し始め、Linc'wellはより優先度の高いプロジェクトにリソースを集中するために、「CLINIC FOR YOU」のチームの人員を大幅に削減することになりました。地道な改善を続けていたものの、今後はどのような方針でサービス開発するか決めあぐねていました。

転機が訪れたのは同年5月ごろで、LINE株式会社から相談を持ちかけられました。LINEは2019年6月にLINEミニアプリの構想を発表してから、このプラットフォーム上でサービスを提供する企業を募っていました。そこで、私たちに声をかけてくれたんです。

相当にありがたい提案でした。LINEミニアプリならば、私たちがもともと持っていたWebアプリケーションの技術を転用できます。それに、LINEミニアプリという環境はWebアプリケーションと比べるとクローズドであり、チャレンジングな取り組みを試す場にできると思いました。そこで、LINEのオファーを受けることを決めました。

――良い知らせだったとはいえ、LINEミニアプリの開発は未知のこともたくさんあるでしょうから、苦労も経験されたのでは?

そうですね。技術的に乗り越えなければいけないことが複数ありました。例えば、開発途中にLINEミニアプリではWebRTCの技術が使えないことがわかり、医師とのビデオ通話の機能を実現するのが難しいことが判明して。試行錯誤した末に、医師との口頭のコミュニケーションはビデオ通話をやめて電話によって実現することにしました。

それから、LINEブラウザの制約によりReactの仮想DOMを意図した通りにコントロールできないこともありました。ボタンが押せなかったり、うまくアニメーションが動かなかったりという事態がよく発生しました。その度にLINEの担当者に問い合わせをしながら、必死にプロジェクトを推進しましたね。

その甲斐あり、2020年8月にファーストリリースができました。プロジェクトが始まったのが2019年10月ごろでしたから、足掛け約1年のプロジェクトですよね。やっとリリースできたときは、本当に感慨深かったです。

LINEミニアプリ「CLINIC FOR YOU」では、以下の機能を提供しています。
1.来院予約・変更。
2.過去の受診歴の確認。
3.保険証の登録。登録された保険証はクリニックで内容の事前確認をするため、当日の受付時間短縮にも寄与。
4.マイヘルスのページから「アレルギー検査」「総合血液検査」「PCR検査」を確認。
5.検査結果の推移を確認。

一度は頓挫した後払い機能に、再びチャレンジする

――そうした経緯を経て、現在は何の機能を開発しているのでしょうか?

ここ数か月ほど、私ともう1人のプロダクトマネージャーで協力しながら、先ほどお話しした会計システムAPIを研究しています。そして、実は後払い機能を実現する方法が、徐々に見えてきました。

――実現できないと諦めていた機能ですよね。なぜ状況が変わったのでしょうか?

その話をするには、まず「なぜ私たちが、会計システムAPIの仕様では後払いの仕組みを担保できないと判断したのか」という経緯をご説明する必要があります。

問題になったのは、特定の患者が1日のうちに2回以上来院するパターンです。その患者が、1回目の診療を現金で支払い、2回目の診療を後払いにするケースがありえます。その場合には、その日付の会計情報をAPIから取得し、データを時系列順に並べ替えたうえで、どのデータを後払いの対象にするかを特定する必要があります。

しかし、会計システムAPIは同一日に複数のデータがあった場合、返却するデータの順序を保証していませんでした。つまり、どれが後払い対象なのかを判別できません。その仕様がネックになり、初期のプロジェクトでは開発が頓挫しました。

しかしその後、なんとしても後払いの機能を実現したいと考えて、私はAPIを提供している企業の担当者と交渉しました。「同一日付内に複数の会計データがある場合、本当に順序の特定はできないのですか」「もし実現できないのなら、APIの仕様そのものを変更してもらえないでしょうか」と、粘り強く議論を続けました。

情報を収集していくと、状況が改善してきました。実はAPIの特定項目を用いることで、同一日の複数データのうち、どれが後払いの対象になるのかを特定できると判明したんです。その項目は、本来そうした目的に利用するためのデータではないのですが、工夫することでデータの順序判定に活用できるとわかりました。ブレイクスルーが起きたんです。

「LINE」の特性を生かしてサービス展開していきたい

――紆余曲折したからこそ、実現できることが感慨深いですね。

機能を実現するために試行錯誤した甲斐がありました。

プロジェクトを成功させるには、単にシステムの設計・実装のことを考えるだけではなく、ステークホルダーを適切に巻き込むことが重要だという好例ですよね。プロジェクトにおける困難な状況を改善するには、社内外のステークホルダーとの連携が欠かせません。私たちはこれまで大変なプロジェクトをいくつも乗り越えてきましたが、難所の局面では必ず泥臭く地道な交渉や調整が求められました。

――多くの学びがあるインタビューでした。今後、「CLINIC FOR YOU」をどのように発展させていきたいですか?

過去のインタビューでも何度か語っていますが、私たちは「ユーザーがどんなデバイスやプラットフォームを使っていても、Linc'wellが提供するサービスを利用可能にしたい」というビジョンを持っています。医療関係のサービスは人々の日常生活を支えるものですから、どんな場面でも利用可能にしたいです。その状態を実現するために、AndroidやiOS、web、「LINE」など複数プラットフォームへサービス展開することは必須だと考えています。

こういう話をすると、スタートアップ界隈の方々からお叱りを受けることもあるんですよ。「まずは特定のサービスやプラットフォームにリソースを集中して、それがうまくいったら多角化すべきだ。はじめから複数プラットフォーム展開なんてとんでもない」と。もちろん、そうした諸先輩方の意見は真摯に受けとめていますが、それでも私たちは自分たちの信念を大切にして、サービス開発を続けたいと考えています。

それから、せっかくLINEミニアプリとしてサービスを展開しているので、「LINE」を活用してユーザーとコミュニケーションをとっていきたいと思っています。例えば、ヘルスケアに関する情報を発信して見てもらったり、何かの問い合わせに「LINE」で答えたり。今後もユーザーのことを第一に考えながら、サービス開発を続けていきます。

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