近年のIT人材需要の高まりと反して「2030年には従来型IT人材は10万人余る」という試算も経済産業省より発表されました。世情で加速するデジタル化に伴い企業が求めるのは即戦力となるエンジニアや先端IT人材にフェーズが移りつつあります。求職者はまずどのような業態、どのような企業で経験を積むのかが、将来の市場価値が決まる分かれ道となるのではないでしょうか。
今回はキャリアステップの第一段階である「Sler」と「事業会社」への就職。それぞれの違いや魅力について実際にSlerから事業会社へ転職し両方の経験をされた情報システム部開発5課課長の石川さんにお伺いしました
Slerと事業会社を解説
Slerとは?
SlerとはSystemIntegrator(システムインテグレーション)業務を担う企業を指し、一般企業や官公庁など様々な業種のクライアントからシステムの構築や導入などを請け負い、企業課題の解決をしていきます。その中でもSES、受託開発、自社開発(Saas系サービス、Web系企業)など様々な働き方の選択肢があります。
長ければ1年以上のプロジェクトもあれば、2ヶ月程の短い期間のプロジェクトもあります。
事業会社とは?
事業会社では、自社の事業成長をサポートするための様々なシステム開発における企画、要件定義、構築、運用保守、インフラといった広範囲の業務に携わる事ができます。
システムを利用するユーザーは社内にいるので、ダイレクトにユーザーと意見を交わしながらシステム開発ができるため、フレキシブルで開発スピードが速いのが特徴です。
それぞれの特徴は?
まず同じ『システム開発』という括りでは大きく違うとは思いませんし、どちらにも良し悪しはあります。
Slerはお客様から仕事の依頼があり、案件によっては要件定義からプロジェクトに携わることもありますし、開発をする上ではその会社のビジネスモデルや業務知識が必要不可欠なので、自分がこれまで関心のなかった分野にも関われるという点では、自己成長に繋がることも多いです。
ですが、これは良い現場に限られた話。良くない現場ですと、ずっとテスト業務ばかりやらされることもありますので、現場に左右されてしまいます。
また『契約上の部分的なフェーズに縛られてしまう』ということも一つ上げられます。例えばバックエンド側のAPIの開発を依頼されたとしても、結局はプログラムの範囲だけになってしまうことも。
事業会社(当社)の場合は、上記例で言うとAPIに関するインフラ周りのことも自分で触れますし、チャレンジしたいプロジェクトに入っていけるというのは違いとしてあるのかなと思います。Slerならではの「次にどのプロジェクトに入るのか」という不安も事業会社では明確になっているので、長く向き合っていけるというのは事業会社の良さの1つですね。
Slerと事業会社、それぞれに合う人とは?
Slerの場合は、契約の範囲内で開発をするため、自分で能動的に動くというよりも、どの現場に決まったとしても指示された事を着実にこなしていく必要があります。
スキル上、指示がある方が開発しやすいと感じる方は、一度Slerとして経験を積んでみても良いかもしれません。
一方で、『ユーザーの声をキャッチアップしながらサービスを育てていきたい』という思いが強い場合は、事業会社の方が技術選定から挑戦できる機会が多く、長期的にプロジェクトに関わることができます。Slerの場合は契約範囲の業務しか関わることができず、規模の大きい会社ですと新しい技術を取り入れるのに足踏みする傾向がありますので、能動的に仕事をしたい人は事業会社がオススメです。
Slerから事業会社への転職をする上で、どんなことが求められますか?
弊社でもSlerから転職して活躍されている方は多いですが、やはり共通しているのが「まずは何でもやってみよう」というプラス思考の方ですね。
その時の技術レベルで無理だと判断されてしまうと、そこでプロジェクトは足踏み状態になります。否定的な意見よりも、まずはやってみた上で企業の方針に沿って柔軟に動ける対応力も必要なのではないでしょうか。
まとめ
Slerのメリット・デメリット
メリット:様々な業種に関わることが出来るので自身の知見を広げることが出来る。
デメリット:良い現場に就ければ幅広いスキルを習得できるが、場合によってはテスト業務ばかりなど現場に左右されやすい
事業会社のメリット・デメリット
メリット:意見を出せば自分次第でプロジェクトを動かせたりと、やりたいことに携われる機会が多い
デメリット:常にキャッチアップする姿勢がないと、周りに取り残される可能性がある
今回はSlerと事業会社の違いについて両方を経験した石川さんにお伺いしました。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、ご自身の適性を鑑みながらどのステップを踏み出せばよいのか、是非今後の参考になればと思います。