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プロジェクトを最も美しい最終形に仕立て上げる「組み立て屋」仕事。L&Gで目指す、クライアントと並走するコンサルの形

L&Gには、多様なバックグラウンドを持った人材が集まっている。

大丸勇気さんは、L&Gに入るまで、15年以上、建築や不動産の世界でキャリアを積み、数多な空間を生み出してこられた、不動産開発・活用に大変強いお方。水星(L&Gのコンサル事業部門)でもキャリアを発揮しながら、現在、佐世保エリアの総合的な開発などに取り組まれている。

弊社は「ホテルはメディアである」と掲げているが、「自分がメディア(媒介)となる」と話す大丸さんの、コンサル事業における思いを聞いた。

プロフィール
大丸勇気:1976年生まれ。長崎出身。大学で建築学を学び、京都の設計事務所に入社。その後、義兄の経営するリノベ会社や不動産会社を経て、2019年にL&Gに入社。入社後は、外部のコンサル事業を統括するマネージャーとして活躍している。

建築・不動産の世界で、東奔西走した20代

――L&Gに入るまでの経歴について教えてください。まず、どのような大学時代を送っておられましたか。

夜間大学の建築学科に入学しました。「建築を学びたい!」と、ものすごく確固たる思いがあったというわけではないのですが、もともと北欧の建築やデザインにはなんとなく惹かれていたんです。それは、ケアマネージャーとして働いていた母の影響。実は今も現役なのですが、当時、特別養護老人ホームで働いていた母親から、「北欧の国は社会福祉が充実していていいよね」という話を聞いて、北欧に関心を抱き、雑誌などでおしゃれな建築を目にしたのがきっかけでした。

大学に入学してすぐ、教務課や先輩に相談し、先輩の紹介で住宅メーカーで働かせいただけることになって、昼間は仕事をしながら夜に大学に通っていました。

ただ、阪神淡路大震災の年だったので仕事が山のようにあり、毎日現場や事務所で仕事をしていました。9時出勤で、大体いつも日付が変わるくらいまで会社にいましたね。なので、1年目は全然授業に出られませんでした。

僕が大学卒業の年は、ちょうど就職氷河期。僕は幸い、所属していたゼミの先輩に、「北欧の住環境や社会制度に関心があるなら、ここがいいと思うよ」と、京都にある建築設計事務所を紹介していただけて、ゼミの先生の推薦で就職することができました。北欧建築のハードとソフトの融合のようなことを研究をされていた方の思想を踏襲した会社で、グループホームなど高齢者施設をメインに、普通の住宅や大規模な施設も含め色々な空間の設計をしていいました。そこで、4年ほど働きました。

――その次に就職された会社では、どのようなお仕事をされていたのですか。

25歳で結婚し、義兄が立ち上げた会社に入ることになりました。そこは、職人から始まり、デザインから施工までワンストップで行うような、いわゆるリノベ会社でした。大阪で順調にいき、東京に出店したいということで、僕に声がかかったんです。そこから単身赴任が始まり、平日は東京で仕事をし、週末は大阪に帰ってくるという2拠点の生活スタイルを、結局10年ぐらい続けましたね。東京と大阪を何百往復したか分かりません。

東京では、本当にゼロからのスタートで、マンションの1階の元家具工房の小さい部屋を借り、そこにベッドとデスクと複合機を置きました。最初の頃は、毎日バンで現場を駆けずり回り、本当にバンの中で生活しているような感じでした。関東一円の商業施設や遊戯施設の改装の仕事を受託し、職人さんたちを取りまとめ、現場を納めていました。

その後、義兄の会社を離れることになったところ、もともとクライアントだった会社にお声掛けいただいたんです。その契機になったのが、グランフロント大阪の開発。その開発の一部を、某大手広告代理店の企業が取り仕切っておられて、そこにクリエイティブエージェンシーとしてその会社が入っていました。広告代理店側のニーズとして、建築だけでなくデザイン・企画など多領域に渡って色々できる、その上、大阪と東京を行き来できる人材を求めておられていることを、そのクリエティブエイジェンシーからお聞きして。そうして、いったんクリエティブエイジェンシーに、そこからさらに広告代理店に出向するという立て付けで、グランフロント大阪の開発の業務と、クリエティブエイジェンシーのクライアントワークのお仕事を2年間ほどさせていただきました。

その間も大阪と東京行き来していて、夜行バスにもしマイルがあったら、多分地球3周ぐらいできるぐらいは持ってますね(笑)。

グランフロント大阪が開業し、一旦その業務も終了、契約も満了、というタイミングで、子供も大きくなったこともあり、大阪と東京を行き来するような生活は終わりにして大阪に戻ることにしました。

その頃から、何となく、「グローカル」(グローバルとローカルを掛け合わせた造語で、グローバル視点で考え、ローカル視点で行動するという考え方)という言葉が出始めていたんです。僕は、それに関心があって、地元の泉南の方のローカルデヴェロッパーに入りました。主に、建築家と工務店をコーディネートして、クリエイティブの高い住宅をつくるような業務を行なっていました。

しかし、住宅に限らずもう少し幅広く多領域のことに関わっていきたいという思いが強まり、不動産部門の会社に転職しました。そこでは、リノベーションなどによって、遊休不動産の活用や、建物の収益をどう最大化していくかということを、住宅に限らず、オフィスビルやテナントビル、また、地方の空き地や工場跡地などにおいても取り組んでいました。

「コンサル」という言葉のイメージに縛られないコンサル事業に取り組みたい

――そこから、L&Gに転職したきっかけは何だったのでしょう。

そこで働いている中でも、過去お仕事や東京で築いてきた繋がりで、多方面からのご相談を受ける機会が多くあり、その会社では受けきれないようなお仕事は、仲間内に紹介をしたりしていました。

その中で、不動産屋の知人から、京都の伏見にある遊休不動産をホテルにしたいというご相談をいただきました。ちょうどインバウンドのマーケットがどんどん拡大している頃でしたし、伏見稲荷のすぐ近くで、そんなに大きくはないものの、ちょっとした宿を始めるにはちょうど良いような物件でした。

その時、僕が仕事でおつきあいのあったライターの方にご意見を伺うと、「それだったら、Magasinn Kyoto(マガザンキョウト)の岩崎さんに相談すると良いかもしれない」と、岩崎さんに取り次いでくださいました。お会いしてお話ししていると、岩崎さんから、kumagusukuの矢津さん、そして翔子さんと、「泊博」というレーベルを始められたところだというお話があったんです。

それが、僕が翔子さんを知ったばかりのタイミングでした。というのも、これとは別件で、南船場でのホテルの企画のお話もあり、音楽をテーマにして例えば全客室にレコードプレーヤー置くのはどうか、といった案が出ていたんですね。僕も結構乗り気で、そういうホテルって他にあるのかと調べてみたところ、HOTEL SHE, OSAKAの記事が出てきたんです。そのホテルの作り方も、弁天町という場所も、大阪の不動産界隈のアプローチでは通常しないようなもので、すごく面白いなと思ったんです。その時、翔子さんの存在も知りました。

そこに、偶然にも岩崎さんからそのお話があって、ご縁を感じましたね。

その伏見のホテル企画は、事業主さんの判断で見送りとなりましたが、その後も、色々なご依頼を受けてそのような企画に取り組んでいました。その中で、佐賀・唐津の「HOTEL KARAE」のお話をいただき、そのプロジェクトにL&Gをアサインさせていただいたんですね。

先ほどお話したように、普通ならホテルなんてできないような場所でしっかり事業を成功させているL&Gという会社を、かねてから興味深く思って見ていましたし、「自分がこの会社に入るということはあり得るのだろうか…」と思って、ご相談してみたんです。そこから始まって、入社に至りました。

――どういうところに、この仕事の楽しさを感じたり、この会社らしさを感じますか。

集治さんが「動物園っぽい」という表現をされていましたが、本質的に同じように思っています。

「ここに自分が居る意味をしっかり形にしたい」全国のホテルと人々を繋ぐCHILLNNマネージャーの、異色の経歴と未来への覚悟 | 株式会社L&Gグローバルビジネス
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この会社で、考えたり取り組んでいったりする時、枠がないんですね。慣習や既成概念にとらわれていなくて、ある意味余白だらけ。でも、しっかり実装化してちゃんと収益を上げているところが、面白いなと思っています。

僕はL&Gの株式会社水星で、いわゆる「コンサル」業務を主に担当しているのですが、実は「コンサル」という言葉は、個人的にはあまり好きではないんです。

どう捉えるかにもよると思いますが、コンサルって、平たく言えば「こうした方がいいですよ」と提案すること。その通りではあるんですけど、僕は、それよりも、クライアントと並走して一緒に取り組むようなことをしたいと思っています。水星は、分かりやすさを重視して「ブランドコンサルティングファーム」と掲げていますが、何かよりしっくりくる違う表現がありそうな気もします。と言っても、僕も具体的な良い代案があるというわけではないのですけどね。

――大変なことはどういうところですか。

正直、大変なことってないように思います。

僕はもともと建築が好きで、アトリエ系の設計事務所に入りましたが、アトリエ系の設計事務所に入ることを「丁稚奉公」と言われたりもするんですね。そのくらい、ビジネス的な合理性とはかけ離れたような世界にいました。さらに、その後、身内の義理の兄の会社に入って。そういう道を歩んできたからか、公私やオンオフをはっきり分けるという考え方が、僕にはないんです。別の言い方をすれば、仕事が好きなことで、好きなことを仕事にできているとも言えるかもしれませんね。

だから、「大変だな」と思うことってほぼありません。それよりは、「感謝だな」「ありがたいな」と思うことの方が多いです。現在、コロナ禍でキャッシュエンジンだった宿泊代が減って、そのリカバリーに対してのプレッシャーがあることはありますが、それも「大変だ」と思うというより、こういう状況下においてもお仕事させてもらえることへの感謝の思いの方が圧倒的に強いです。

バラバラなものや欠けているものを繋ぐ媒介役、「組み立て屋」

――今後取り組んでいきたいことはありますか。

今でも、例えば佐世保の事業など、やりたいことをさせてもらっていて実現出来ていることは、ありがたいことに多少なりともあります。

「コンサル」という言葉は好きではないのと同様、「地方創生」という言葉もなんだかしっくり来ないんです。「リライト」っていうステイトメントずっといいなと思っていて、書き換える、光を当てる、そのための媒介的なことをにしていきたいです。

「ホテルはメディアである」というときの「メディア」も、ダブルミーニングだと思います。1つは、発信するものとしてのメディア。もう1つは、媒介としてのメディア。僕は、この媒介的なものになりたいんです。

その役割に名前をつけるとするなら、林厚見さんの記事を読んで見つけた「組み立て屋」という言葉がしっくりくるなと感じています。

組み立て屋の仕事は、そこかしこにあるアイディアの欠片を組み合わせたり、足りないところを埋めたりしながら、最終的に「勝ち筋事業」に仕上げることです。組み立て屋となるには、それなりのスキルが必要ですし、相当な時間もかかりますし、僕もまだまだ力をつけていきたいと思っています。

やはり自分の経歴的には、建築・不動産の領域あるいは広告の領域で、ビジネス的な観点とクリエイティブ的な観点から、様々なものの融合やそれらの最大公約数を探していくみたいなことに、今は力を発揮できているかなと思っています。例えば、建築のハードとソフトとの通訳的な媒介ができたり、あるものとあるものの間に存在する触媒をつなぐ広告のようなことができたり。まだまだ実践できていない夢も多いので、今後、自分自身も力を磨きながらどんどん取り組んでいきたいです。あと、僕は割とそういう仕事に向いているのではないかと思います。

具体的な対象があるというより、これから生み出されていくもの、生み出そうとしているものに対してですね。企画や組織において、足りないところは埋め合わせ、個々に独立して存在するものを組み合わせ、最も美しい形として完成するよう、組み立てたいと思っています。そういう仕事ができた時はとても楽しいしやりがいを感じるし、1つのプロジェクトからまた新しいプロジェクトに繋がったりすると、最高だと思います。

物事が動き始めるきっかけや、何かと何かを結びつけられることに喜びを感じるという点では、広い意味での「営業マン」かもしれません。

あとがき

人、場所、文化、アイディア…この世にあるどのようなものも、それぞれ何かしら良さを持っている。しかし、それらの価値が発見されないまま埋もれていたり、力を発揮できないまま眠っていることも多い。また、個々に存在している時よりも、何かと結びついた時にそれらの魅力が最大化されることもある。

大丸さんは、そういったものを見逃さず、拾い上げて繋いでいき、1つのチームとして「組み立て」、さらに、全体をより良い方向に導いていくプロだ。

私はこれまで、「コンサル」と言われると、どこか他人行儀なビジネスの印象があった。だが、この記事の執筆し、「コンサルって、自分が想像していたよりもっと、愛や心のこもったビジネスなんだ」と思うようになった。少なくとも、大丸さんの行うコンサルにはそういう温かみを感じている。

これからも、大丸さんの手で、色々な場所で、色々なものが、色々な形で繋がって、たくさんの素敵な企画や空間が世の中に生み出されていくに違いない。彼は、コンサルという手段によって、豊かな社会をも組み立てているように思う。

インタビュアー:杉本 尚美
写真:金井塚悠生
文:西岡 ゆり絵

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