1
/
5

スキルだけでなく、心も磨く。被災地・女川町で研修を続ける理由

2011年3月11日(金)東日本大震災発生。
甚大な被害が出た場所のひとつ、宮城県女川町。

GCストーリーは女川町にサテライトオフィスを構え、定期的に社内外へ向けた研修を行っています。
なぜ女川町で? 何のためにどのような研修をしているのか?GCストーリーの社員として参加した1人の目線で、ご紹介します。
※研修に参加した、鳥居さんのレポートです。

東日本大震災と女川町

GCストーリーが女川町とご縁を持ち始めたのは、ある親和性を感じたことがきっかけでした。
それは、利益重視ではなく、お互いの幸福を尊重した意思決定が各人の連携を通じて行われる「全体意識」です。

女川町は、防波堤を乗り越えた数波に及ぶ津波により、町人口10,014名のうち、死者・死亡認定者は827名、住宅の全壊は全体の66.3%、漁業及び水産加工拠点や商店街などの産業基盤はほぼ失われるなど、甚大な被害を受けました。津波浸水高は最大20.3メートルにも及びます。

震災からわずか1ヶ月後に民間が主体の組織「女川町復興連絡協議会(FRK)」が立ち上がり、女川町の復旧復興のために動き出しました。
FRKは「まちづくり創造」「水産関連」「商業関連」「サービス関連」「建設工業」の5つの委員会から形成され、業界を超えて全体で共有して統合を進めました。
公民連携の必要がある部分は行政と進め、民間で進められることはどんどん事業を立ち上げていきました。女川町は、民間と行政が一緒につくった町なのです。
(参考:『女川 復興の教科書 復興8年の記録と女川の過去・現在・未来』㈱プレスアート発行)

心の成長を大事にした研修の目的

女川研修の目的は2つ。

自分自身や自分のいる場所の当事者になること。
そして、明日からはじめる新たな一歩を持ち帰ること。

GCストーリーは、会社の成長のためには、スキルだけでなく経営者や社員一人ひとりの心の成長も大切になると考えています。

そのために、事前に配られた研修用資料には「この研修中に心に留めておきたい3つのポイント」が次のように書かれていました。

①自分の感情を大切にする
②経験や考えを追体験する
③もし自分だったら…の視点で味わう

研修1日目は、見たり聴いたりを通してインプットから①~③を行う。
2日目は、これからの未来で何をしたいか、自分らしいアクションを描いてアウトプットを行うプログラム構成です。

1日目

10:00 仙台駅に集合 レンタカーで女川へ向かう
11:30 女川地域医療センターにて震災展示パネル見学
12:00 女川駅到着 昼食
13:00 セッション 女川の震災について伺う
19:00 入浴
20:00 女川町の方々と懇親会 

2日目

9:00 ワークショップ 自分と組織の現状を考える
12:00 ワークショップ 自分の明日からの1歩を考える
15:00 プレゼン
17:00 女川駅出発 レンタカーで仙台駅へ向かう
18:30 解散

【1日目】震災の爪痕と復興を感じる

女川町へは、女川サテライトオフィスに在中しているナビゲーター役の社員の運転で向かいます。

女川駅というJR東日本の最寄り駅があるにもかかわらず、仙台駅から1時間ほどかけて車で移動します。なぜなら、現地周辺を知りながら行くことにこの研修の意味があるからです。

「道路横の斜面の色が違うの見えますか?あそこまで波がきた跡です」
「この辺りは入り江の入り口が狭いので、津波はさほどこなかったそうです」
「新しい家が並んで建っているのは、全部流されて一斉に新築にしたからです」

現地社員から被害についての解説を聞きながら進む道のりは、少ししんみりした空気に包まれました。

女川町に着いてまず向かったのは、海抜16メートルの小高い丘の上にある女川町地域医療センター(前 女川町立病院)です。建物の目の前にある駐車場から眺めた海は、200メートルほど先に広がっていました。

あの日、津波は病院の1階天井近くまで達しました。

当然ながら、駐車場に避難していた人々は波にさらわれます。私が海を見た同じ場所に立っていた、おそらく亡くなってしまった人は、どんな気持ちでせまる津波を見たのだろうか。その絶望を想うと胸が締め付けられました。

全国からの支援を受けて「町民の希望の灯りになろう」と医療活動を続けた病院の軌跡は、今でも2階の展示室に資料があります。参加者はみな、無言になって展示パネルを見つめました。

震災直後の空撮写真パネルより

女川駅に着くと、まっすぐ駅から海の方向へのびるシーバルピア女川の通りが、すがすがしい風で出迎えてくれました。

地元市場ハマテラスで昼食にいただいた海鮮丼は、女川港で水揚げされた鮮魚介類で宝石箱のよう。というのも、女川はもともと水産業が盛んな地域で、震災時に壊滅状態になった水産業が復活を遂げたのでした。


復興の当事者のお話

シーパルピア女川に並ぶ、まちなか交流館へ移動します。
研修用の会議室に入り席に座ると、震災当時FRKの中心にいた青山貴博さん、当時町役場に勤めていた山田康人さん、土井英貴さんが今までのことを語り始めてくれました。


「震災直後、昼間は家やお店のあった場所に行って家族を探したり物を探したりした。夜はプレハブに集まり、町がどんな感じだったかの報告と、これから町をどうするかを話した。」

「やるしかなかった。自分たちのことは自分たちでやる。そうしてやる気のある人を集め、結束力を高めていった。」

「FRKの設立総会で、当時60歳だった㈱高政の高橋会長が『俺たち還暦以上は口を出すな。知恵出しや金集め、人集めをして責任はとるが、30~40代中心にやらせよう』と言った。痺れた。」

「色々な人がそれぞれの信じる復興をしようと思って集まるので、それぞれの信念や情熱を大切にしてまとめていた。」

「100年後も人々が住み残る、住み戻る、住み来る町という理念を打ち出した。」

「同じような津波がまたきても大丈夫なように、町の構造を根本から考え直した。防波堤が圧迫感を持たないように、そもそも防波堤の高さに地板を上げる。商業施設等は海側に、住宅地はさらに海抜が高い位置においた。もう二度とあの被害を出さない。」

三名のお話は、時に笑いも交えながら進みます。
とはいえ、つらい経験と大変な復興をされてきた方の体験談なので、涙腺のゆるい私は涙なしには聞くことはできませんでした。

参加者で感想共有をしてから、女川駅上にある女川温泉ゆぽっぽにて入浴。
「私だったら、計り知れない絶望の後に未来を信じて頑張れるのだろうか…」と考えながら湯船に浸かりました。

夜は「ガル屋Beer」という、地元のみなさんも愛用するクラフトビールバーにて交流会です。女川町長やハマテラスでお店を営む方々も集まり、にぎやかにわいわいと夜は更けていきます。

【2日目】当事者として次の一歩を考える

研修2日目は、自分が今いる場所で踏み出す1歩を考える時間です。

まずは自分が所属している会社に対して、どう感じているかを書き出して分類します。
分類4軸は「強み」⇔「弱み」と「現在」⇔「未来」。

完成したマップを共有すると、参加者それぞれの捉え方が反映されていました。
同じ会社にいて、同じものを見ているはずなのに、こうも捉え方や感じ方が違うのかと再確認します。

その後、自分が今いる場所で踏み出す1歩を考えます。

ひたすら自分に向き合う時間が、たっぷり3時間ありました。

平日のお昼下がり、駅前の大通り沿いにあるテラスの椅子に座りながらノートを広げ、自分を振り返りながら遠目に海を眺めます。
きらきらと光る海は、9年前に沢山の幸せをさらっていった海と同じものとは思えないような穏やかさで、未来を考える場になっていました。

最後に参加者でプレゼンを行って、相互理解を深め、女川をあとにしました。

最後に

私ははじめ、この研修に参加することに対して、とても気が重かったです。
震災の記憶にふれることは、当時の恐怖心を思い出すような行為だと思っていたから。
けれども研修で待っていたのはそうではありませんでした。

つらいことに向き合わないのではなく、目の前のことをがむしゃらにやるだけでもなく。
立ち止まって感情を反芻し、向き合い、現在地を確認して、糧にする。
自分の大切にしたいものを再確認して、軌道修正するようなものだなと思いました。

女川研修の翌日、いつも通り会社に出勤した私は、いつもと少し違う気分でした。

沢山のやるべき仕事も、悩んでいた人間関係も、一時の儚い出来事に思えるのです。儚いからこそおざなりにするのではなく、何を大切にして一歩として進めていくのか。

自分と向き合って再確認した大切にしたいものが、心の底で根を張っているような、どっしりとした気持ちです。

これからもGCストーリーは女川町とのつながりを大切にし、たくさんの人が未来を考えるきっかけとして研修を続けていくでしょう。

是非おすすめしたい2日間でした。

▼GCストーリーと女川町の関わりは、こちらからもご覧いただけます。

「幸せな町」女川プロジェクトーー社員や社会に還元するはじまりの物語
gCストーリーでは社員がより幸福に働ける環境を模索する中で、宮城県女川町と出会いました。その女川町に見た「幸せ」を具現化して発信することに使命感を持ったのは社長秘書の甘利友紀。gCストーリーと女川町との物語をご覧ください。 ...
https://award.atwill.work/stories2018/490/
#女川プロジェクト|GCストーリー|note
ひょんな出会いから、女川にサテライトオフィスを創りました。社長秘書が女川と東京の2拠点生活をしながら、この2つの土地を繋ぐべくプロジェクトを担当しています。女川の組織づくりを学ぶ研修を、近々事業化予定です。
https://note.com/gc_story/m/m6d13332fb9c6

▼女川町観光協会

おながわたび|女川町観光協会公式情報サイト
本町では、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、マスクの着用、うがい手洗いの徹底、体温管理などの対策を講じています。 また、宮城県からの休業要請及び本町からの休業協力依頼により、休業又は時短営業等の対策を講じている店舗がございますので、あらかじめご了承願います。 ...
http://www.onagawa.org/

文/鳥居有葉 編集/櫻庭実咲 デザイン/鳥居有葉

GCストーリー株式会社's job postings
3 Likes
3 Likes

Weekly ranking

Show other rankings