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ぼくらの100日間戦争~第二章「あなたの声が爆速で国を動かす」~

※この記事は、フローレンス みんなで社会変革事業部 広報マネージャーの岡水恵弥が、個人ブログにて発信した内容の転載です。新型コロナ緊急事態下でおこった緊急支援活動現場での様々なドラマ、裏舞台を個人的記録として1話1テーマ形式で残すものです。

前回まで:プロローグ第一章~たたかいの定理

【同情するなら金をくれ、の真実】

先日、お笑い第7世代の若手芸人さんが「昭和世代の先輩芸人がたとえで出す漫画とかプロレスネタがわかんなくて、僕ら愛想笑いツラ~。」的な発言をしているのを見て、ハッとさせられたアラフォーです。

ですから、「同情するなら金をくれ」(from家なき子。テレビドラマの名台詞です)を例に出しても知らん人多いよね・・・とは思うものの、1990年代ドラマ世代として毎度のことながら失礼します。すなわち、なにかに困ったり悩んでいる人がいて、その人が本当に必要としているものはなんなのか?という問題です。

新型コロナ感染症拡大の影響を懸念した政府が3月に「お肉券・・」と言い出した時に「おおおぉぉい!」と国民総ツッコミだった、あの感覚を思い出してください。あの時、私達は国民総出で「そうじゃない感」を発信したはずです。それで、お肉券やお魚券ではなく現金給付の施策に移行したのでした。

つまり、ニーズとマッチしないことをやってはいけない

これが、課題や問題にアプローチするときの鉄則ともいえます。

(私は”支援”という言葉はあまり好きではないですが)、例えばNPOやボランティアの「支援活動」においては、ニーズを把握し可視化することが、問題解決への近道だということが今回よくわかりました。

東日本大震災支援現場からの学び

2020年2月27日(木)、安倍首相による突然の「全国一斉休校要請」は非常にインパクトの大きな強硬手段でした。

近年日本で、学校が全国的かつ1ヶ月もの長期に渡りお休みになった記録はありません。(※実際には3月2日以降、4月の緊急支援宣言を受けて5月末まで継続することになり、結果的に3ヶ月間の小中高休校・保育園/幼稚園休園となりました)

共働きの子育て家庭に、どのような影響を与えるのだろうか??

保護者は、今いちばん何を望んでいるのだろうか?

子どもの学び、育ちへの影響は?

「これは、東日本大震災以来の災害だ。」社内で誰ともなくそう言いました。


東日本大震災の振り返りとしてよく言われることが、

「全国から寄付や支援物資やボランティアなどが最大瞬間風速的に山のように寄せられたが、被災者のニーズとマッチしないケースもあり、かえって被災地の混乱を招いた」

というものです。

つまり、支援の肝は「ニーズの正確な把握」とその「マッチング運営」にかかかっているということ。

今なにを必要としている?属性別のニーズ調査

その頃、フローレンスの社内でいちはやくニーズ調査の実施に動いていたのは「こども宅食事業部」でした。

※「こども宅食」とは、経済的に厳しいひとり親などの子育て家庭に定期的に食品を届けるあたらしい支援モデルです。宅配をきっかけにLINEや対面で繋がる機会を増やし、子育て家庭の孤立を防ぎます。フローレンスが事務局運営する「こども宅食応援団」を通じて、今、このモデルが全国に広がっています!



安倍首相の会見後の2月末、こども宅食の運営事務局では各エリアを通じて「こども宅食」の利用家庭に、一斉休校に伴うニーズ調査を実施する準備が進んでいました。

学校休校=給食がなくなり、家庭での食の負担が増えることが予想され、日中子どもだけでお留守番するお宅が増えるリスクも懸念されたからです。


3分間の意思決定

フローレンスの代表である駒崎さん(社内通称:駒さん)が、こども宅食事業部との打ち合わせ後、「えみりー(私の社内通称)、ちょっといい?」と声をかけてきました。

駒「こども宅食で、一斉休校で困ってる家庭のニーズ調査するんだけどさ。うーん、なんかさ。全国の親御さんが困ってるわけじゃん?」

私「はい、ほんと。私(男児2名小学生子育て中)もアタマ真っ白ですよ。」

駒「そうそう、我が家も同じ。
で、こども宅食のアンケートに一斉休校で課題になりそうなことをあぶり出す質問項目を盛り込んで、全国の各エリアで調査したらどうかとも思ったんだけど、やや難しくてさ・・・」

駒さんが唸っている理由が、すぐにわかりました。

今、途方にくれているのは限定的な属性・エリアの親子だけではなく、全国津々浦々の子育て家庭すべてである。そこをフローレンスとしてスルーしてはいけない気がする。

一方で、こども宅食事業部では、事業として今やるべきことにフォーカスしたい。


混乱の中一斉休校が始まった3月2日、まだ民間も行政も大規模調査に乗り出していません。
子育て支援のNPO周辺で全国規模のアンケートを数日で速報までやりきってメディアに売り込んでいける団体は少ない…。

私「そしたら、宅食とは別に、広報でまったく別の全国調査アンケートとして立ち上げましょうか!」

駒「・・・やっぱ、そうだよね!」

「(確信犯・・・!)」

駒「全国の親御さんに向けて、一斉休校で不安に思うこと、困ることはなにか?緊急全国アンケートしよう。いっちーがやった”多胎児家庭の育児の困りごとに関するアンケート”みたいに、生の声を集めて国に届けよう」


いっちーの”多胎育児支援”とは…2019年10月にフローレンスの社員である市倉加寿代さんが双子育児に大変な思いをする友人を見て、【多胎育児のサポートを考える会】を個人で立ち上げ。多胎育児家庭に不足していた支援策を数ヶ月で法制化した驚くべき革命案件
https://note.com/k_ichikura

「どうやりますか?」

それから全国緊急アンケート調査実施にかかる費用、メンバーの編成、スケジュール、成果目標についてバババッと打ち合わせて、「一斉休校に関する緊急全国アンケート」の実施が決定されました。

「えみりー、ちょっといい?」からカウントして、3分間くらいの出来事です。


こんな風にフローレンスでは非常に速く意思決定する場面もあれば、事業モデル開発から法制度化までのをロードマップを描いて長期戦を戦っていくこともあります。

今回のコロナ緊急支援の現場では、バドミントンのスマッシュ並の速度で意思決定が日々繰り返されています。

あなたの声が国を動かす


●臨時休校になり、学童でも私語禁止、休憩時間等もなくずっと自習です。弁当を食べる時ですら私語禁止。嫌がる子供を学童に連れて行くのが辛いです。

●マスクをつけて子供だけでゴミ出しに出ただけ、玄関でバットの素振りをしていただけなのに知らないおじさんになんで外にいるんだとどなられた。


●子供のストレスと運動不足が気になります。 これまでなかった些細なことで怒ることがあり、心配です。 子供の心の声を聞いてあげられる親以外の存在が欲しいです。

●学習の遅れが心配。低学年は一人で進めることができず、大人がつきっきりになる必要があるけど、現実は一日You Tubeやテレビを見せておくだけになっている。

●家庭が荒んで、こどもをかなり強く怒鳴りつけてしまいました。あと少しで手が出るところでした。この一線を超えてしまう親もいるのではないかと思い戦慄しました。


●1人で留守番させたことがないため、とても困ります。そのためどこかに預けるしかなく、本当に困ります。 4年生以上は1人で留守番ができると思われる基準がわかりません。

● 新型コロナに関しては恐ろしいと思っていますが、それよりも生活が破綻しそうで恐ろしいです。


全国からたった3日間で1万人を超える子育て中の保護者から、不安と生活に困難を感じる悲痛な声が寄せられました。

フローレンスでは3月6日(金)から土日を挟んで3月10日の4日間、【一斉休校に関する緊急全国アンケート】と【医療的ケア児 一斉休校に関する緊急全国アンケート】の2本の全国アンケートを走らせました。

(※のちの4月8日~13日には【ひとり親家庭向けのアンケート】も実施)

署名活動やアンケートの実績はありましたが、この規模の緊急アクションは、団体初の挑戦です。

この2つの調査で明らかになった全国保護者のニーズは以下。

一斉休校によって「困っている」と答えた家庭は約7割と全国共通でしたが、一般の保護者と、重い障害や基礎疾患を抱えた医療的ケア児家庭では全く違うニーズが浮かび上がりました。



全国規模のアンケートを2本設計し、それぞれ3日間/4日間という短期で実施、膨大な調査結果を1日たらずで分析してまとめる。(WEB広告で一斉拡散する費用と、マクロミルのデータベースシステム利用費用を村上財団さんから秒で資金提供いただき実現しました)

可視化されたニーズをもとに提言内容を確定し、プレスリリースの形で発表する。SNSで拡散

マスメディアのプロモーションを進め世論を最大化しつつ、水面下で議員さんに交渉し厚生労働大臣などに直接提言を持ち込むアポイントを取り付ける。

全国の休校対象の保護者の不安を和らげる施策と、医療的ケア児家庭が必要とするニーズに対応する施策を、その場で文科省大臣や厚労省大臣に検討いただき指針のお言葉を得る。



プロジェクトは「広報チーム」と、大手外資市場調査会社から転職してきた調査分析のプロ「ちぃさん」、フローレンスの障害児保育事業部が事務局を兼任する”全国医療的ケア児者支援協議会”の責任者「くろけん」、ロビイング隊長「駒さん」を中心に進めました。


※写真は広報チームの仲間。全幅の信頼を置くメンバーです。超仕事デキます!

3月10日に「一斉休校に関する緊急全国アンケート」、3月12日に「医療的ケア児 一斉休校に関する緊急全国アンケート」結果を発表。

テレビ、新聞、WEBなど多くのメディアで取り上げられ、同じ週に野田聖子議員・荒井聡議員を通じて加藤厚生労働大臣へ、萩生田文部科学大臣には直接要望をお渡ししました!



その結果、調査結果をお渡しした3月13日その日のうちに、全国の各自治体・各学校施設に通達されるQ&Aが更新されました。

3月14日には、安倍首相が会見で、子どもたちについて「安全な環境の下、屋外に出て運動の機会も作ってください」と発言しました。


また、同日3月14日に全国の医療的ケア児家庭のために、枯渇していた消毒用エタノール4,500本政府から供給されることが決定!


全国の”保護者の声”が、数日間のうちに国の方針を動かしたのです。

あなたの声とあなたの声とあなたの声と・・・・×たくさんの「あなたの声」が集まれば、数日で社会は変えられるんです。

いよいよ現場支援のマッチングへ

医療的ケア児家庭/一般家庭/ひとり親家庭/生活困窮家庭への緊急ニーズ調査を行う中で、ニーズが可視化されました。

緊急事態下において特に迅速な支援が必要だと明確になったのが

「医療的ケア児家庭」

「ひとり親家庭」

「生活困窮家庭」

でした。

それぞれの属性によって、必要とされている支援は「マスクやエタノールなど医療物資の供給」「食品・生活用品の宅配」「訪問支援」「保育サポート」「おもちゃやお菓子」「相談支援」・・・など様々です。


これらを必要としている人に、必要なだけサポートを手渡していくために#すべての親子を置き去りにしない !新型コロナこども緊急プロジェクトを始動しました。


あまり知られていませんが、この支援マッチングの運営にこそ膨大なノウハウとコストがスーパーかかるのです・・・!

そのお話はまた今度。
今回はNPO緊急支援現場はニーズと生の声を可視化することで、適切な打ち手とプランが素早く立てられるという内容でした。

私が広報チーム所属なので、少しうちわっぽい広報・ソーシャルアクションに寄ったエピソードになってしまいました!
次回は超現場寄りの話にフォーカスしていきたいと思います。

次回予告:「命がけの最前線と、経営陣の涙」

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