デイブレイク役員インタビュー第一弾!今回は、元キーエンスでデイブレイクの営業・マーケティングを統括する下村諒さん。大手からベンチャーを選んだ理由、デイブレイクに感じるポテンシャルについてなど、胸の内を語ってもらいました。
新しい企業価値の作り方があるのではないか。ベンチャーへの転身を決意させた言葉
前職のキーエンスでは、営業のグループリーダーを経て、その後本社の販売促進グループに異動。国内と海外のマーケティング業務を担当していました。僕はキーエンスは組織として最強の集団だと思っています。転職してより一層強くそう感じるようになりました。前年の売り上げをどう伸ばすか、過去最大の売り上げをどう作るかを、妥協を許さず、皆が合理的に考え、判断をしています。よく営業が強い会社と思われていますが、営業はキーエンスという会社の一部でしかなく、商品企画・開発・マーケティング・物流などすべてがハイレベルな会社です。前職の上司が見ていたら怒られそうですが、最高の環境の中で働いているなあと思っている一方で、もっと別の形でお金を生む方法もあるのではないかと考えていました。
それが解けたのが、ヤフーCSOで慶応大学の教授の安宅和人さんの「スケール拡大から価値を生み出しづらい時代になっており、既存事業の拡大にほぼ答えはない」という話を聞いた時でした。安宅さんは、昨今の経済にはGDPが停滞している中で、市場の企業価値が伸びているという現象が起きている。この根本の変化を考えて事業を考える必要がある。というようなことをお話されていて、この話を聞いたときに、腑に落ちるとともに、やっぱりベンチャーでチャレンジしようと決意が固まりました。
与えられた環境ではなく、作り上げる喜び、チャレンジを選んだ
学生時代、3人しかいないベンチャー企業のインターンとして働いていたのですが、今ではその会社は50~60人のメンバーを抱えるまでに成長しています。3人の頃から知る会社がたくさんの仲間を集め、ビルを一棟借りて立派なオフィスを構える姿を見た時に、作り上げるっていいなぁと、心にじんときたんです。大手は大きなビジネスができますが、環境が整備されている分、作り上げる感覚は得られません。売上額の高い事業に携わっていたにも関わらず、作り上げていく感覚はなかった。整った環境ではなく、3人が60人になっていくような、作り上げることを自分は求めていると感じ、ベンチャーに興味を持つようになりました。
(写真:インターン生時代。タイでの市場調査)
キーエンスを辞めると言うと上司や家族からは猛反対されましたが、そこで面談を重ねたからこそ、その人たちの考え方が分かり、迷いが無くなりました。大手の人たちの判断軸は、基本的にロジックやリスク。もちろんそれはすごく大事なことですが、僕にはそういう考え方が肌に合わない部分がありました。リスクのことばかりではなく、チャンレンジとリスクのもっとうまいバランスがあるだろうと思いましたし、僕はどちらかというとチャレンジがしたかった。夢はないけれど安定した道を選ぶか、今は不安定かもしれないけれど、チャンレンジができて将来飛躍するかもしれない道を選ぶか。それを考えた結果、「これまでの環境を捨ててでもチャレンジしたい」という答えにたどり着きました。
冷凍は使い方によって常識を覆す破壊的なテクノロジー
デイブレイクに来る前は、冷凍は小さくてニッチな業界という印象で、無意識に冷凍を過小評価してしまっている部分があった気がします。でもここへ来て、冷凍や食品加工のプロフェッショナルの方々声を聞き、実際の技術を間近で見てからは、冷凍は使い方によってはすごく破壊的なテクノロジーだと捉えています。食品は、服や機械と違って、食品は消費期限が異様に短い。服で言えば流行、機械で言えば性能も一種の消費期限ですが、食品はそれが比べ物にならないほど短い。急速冷凍は、その問題(消費期限)を無くせる技術です。
今の冷凍の物流は、冷凍宅配は1便1,000円近くしてコストがめちゃくちゃ高いですし、溶けてしまったら一環の終わり。まだまだクリアすべき課題多いですが、仮にコストが見合って、いつでも美味しい状態が再現できるのであれば、常識を覆す技術になる。これまで不可能とされてきたことや、やろうとも思わなかった食の形を実現するポテンシャルを秘めていると思っています。今のデイブレイクは、お客様のものを凍らせる事業ですが、将来的には、食品業界のあらゆる流通シーンで役に立つ技術になると期待しています。
特殊冷凍に特化したからこそ着目され、裾野が広がった
デイブレイクは、大手が手を出さない「特殊冷凍」に特化したお陰で、今これだけ着目されていて、焦点を狭めたからこそ、逆に広いパイがとれている気がしています。もちろん、時代の変化がなければここまで注目されていないでしょうし、尖った商材に特化して品質を高めるやり方は、デイブレイクに限らずベンチャーの強み。デイブレイクの戦略だけが効いたとは考えていませんが、結果的にいい流れが出来てきているとは感じています。
冷凍は何十年も前から普及している技術ですが、飲食店の人達が、お店で作ったものを自分たちで凍らせて売る発想はほぼなかったと思います。当然、通常の冷凍をするとおいしくなくなるので商品価値が大きく下がるからです。無意識に選択肢から外していたはずです。できるとも思っていなかったし、やろうともしてこなかったでしょう。それが、「特殊冷凍ならいけるかもしれない」という希望をかけて、デイブレイクへ相談に来てくれています。冷凍技術を持った大手企業はいくらでもあるのに、なぜか我々に話が来る。その心の内ははっきりとは分かりませんが、「高品質な冷凍に特化したお陰で、自分たちの料理に自信やプライドを持つ人の心にも届いている」ということだろうなと感じています。これまで、冷凍させて品質が落ちることを拒み、冷凍で売る概念が無かった人達。普通の冷凍では到底ターゲットにならなかった人達が、「特殊冷凍ならできるかもしれない」と望みを託し、興味を示してくれています。
デイブレイクは、冷凍技術やノウハウを売る唯一の会社
また、冷凍機・冷凍庫を売っている会社はあっても、冷凍の技術やノウハウを売りにしている会社は僕の知る限り他に無くて、デイブレイクは食品に最適な冷凍方法を研究・提供している唯一の会社です。教科書通りの答えを提示するのではなく、お客様と一緒に最適・最良を考えていく事業モデル。だからこそ、相談内容(食材)によって苦労する場面もたくさんあります。
例えば、原料系の肉、魚、なら比較的対応できますが、複数の食材が組み合わさると難易度が跳ね上がります。パスタなら、ペスカトーレはうまくいくけどカルボナーラは相性が悪いとか。同じだし巻き卵でも、使っている調味料の成分によって結果が変わることもある。組み合わせが無限にある中で、複雑な課題をひもとき、最適な提案をするのは本当に難しくて。これができるのはデイブレイクくらいだと思います。優秀なメンバーがチームとなって仮説・検証を繰り返していて、毎日発見がある。この難しさが、楽しさややりがいでもありますね。
食品業界はもっと進化する余地がある
食品業界の方々と商談していると、毎日驚きが絶えません。時代に反したアナログな習慣が根付いていることにも衝撃を受けましたし、前職では技術的なことの質問をされることが多かったのですが、食品業界では美味しいか美味しくないか。結果しか気にされないことにも驚きました。食べてもらう人のことを一番に考えるからこその習慣なんだろうと思います。
また、食品業界は歴史や伝統がある分、悪い言い方をすれば、変化を恐れているお店も少なくないと思います。ただ、コロナをきっかけに、変わろうという意識に一気に火が付いて、何とかしようとみんなが動き出している。危機的状況になってはじめて重い腰を上げるのは人の本質だと思いますが、これまで現状を守り続けた人が「変わろう」と決めたときの情熱、勢いには、凄まじいものがあります。変え難い、変わらない業界だったからこそ、それだけ発展の余地があるということ。今は非常事態でその動きが特に顕著ですが、食品業界は今後まだまだ進化できる業界だと思います。
サステナビリティが付加価値になる時代
デイブレイクはSDGsやCSVが事業のキーワードになっていますが、僕は、社会貢献を「次の富を生む一手」という観点で見ています。これまでは、サステナブル性が企業価値になり、お金になるなんて考えられませんでした。でも今は、米国企業のAllbirdsやEverlaneのように、サステナビリティに長けた会社に多額の投資が生まれ、それが企業価値になり、富が生まれる時代が訪れています。元々僕は社会貢献性が付加価値になるなんて考えてもいなかったので、一切想像していなかった事業モデルが成り立つことに衝撃を受けました。社会貢献性で大規模に成長したスタートアップも出てきている。そういう意味で、SDGsには興味を持ちましたね。
日本は海外に比べてそれらの浸透が遅い中、デイブレイクはそこに早くから着目していたので、時代の流れは掴んでいると思います。あとは事業をしっかり発展させられれば、世界から評価される可能性もあるのではないでしょか。
迷うなら、じっくり内面と向き合うべき。変わりたい理由はすり替わっていないか
僕は大手からベンチャーに来ましたが、もし誰かがその選択を迷っているなら、もう少し自分の内面と向き合って、時間かけて考えた方がいいと思います。辞めたい理由が「新しいことをやりたい」なのか「今の環境が嫌だから」なのかは、人によって違います。僕も、環境から逃げたくて辞めたいと思ったことが1年目のときにありました。でもその時に辞めていたら、磨けたスキルが身につかなかった。今はマーケティングや営業のスキルにそれなりに自信がありますが、それが無いと考えると、あの時辞めなくてよかったと思います。
「うまくいかないから辞めたい」が「環境がマッチしていないから辞めたい」に、いつの間にかすり替わっていることがあるんですよね。なので、素直な気持ちで向き合って決めるのがいいと思います。大手にいることは悪くないですし、むしろめちゃくちゃいい環境です。自分にとってのメリットデメリットを冷静に考えて、デメリットはあるけど自分はこれがしたいからここを選ぶ、という判断ができればいいんじゃないかと思います。
未知のことに挑戦し続けられる人にとっては、デイブレイクは恵まれた環境
木下さんの構想には非常に共感していますし、自分は大きな構想づくりができるタイプではないので、木下さんの構想をベースに、実務に落とし込んでいくのが僕の役割だと捉えています。木下さんは概念的な話が多いので、それを読み解いてメンバーに伝えていく。組織や仕組みを具体的に作っていく立場として、既存事業も新規事業も最高のプロ集団にすることが僕のテーマです。また、職人気質になりすぎると、こだわりが強いが故に意見の食い違いが出てきてしまいます。プロ意識は持ちながら、凝り固まった職人かたぎではなく、柔軟性にも長けたプロ集団を作り上げたいですね。
デイブレイクがこれまでやってきたことも、これまでやっていくことも、事例がなく、未知のことばかりです。大変なこともめちゃくちゃ多いですが、その分、楽しさやスキル、ネットワークなど、返ってくるものも非常に多いと感じています。デイブレイクのメンバーは、バックグランドや考え方、性格も様々で、ものすごく多様性がある。それでいて、めちゃくちゃ働いて、スキルも志も高い人達が集まっています。未知のことに挑戦し続けたい、挑戦し続けるの力がある人にはすごく恵まれた環境なので、そういう人が来てくれることを期待しています。