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Basics 2 Tips ; 事業という観点から見た「スピード」感

フィードバック・ループ

マーケティングにおいては、“取り組みの大半は上手くいかない”というのが大原則である。
これは確率論で、10のうち7は失敗する。残りの3を見つけるのが重要なのだ(これをテストマーケティングという)。じゃあ、正解の3を見つけるためにどうするか?じつは、さっさとテストをすればいいのである。当たりの3を見つけるためには、7の失敗が必要なわけで、そのプロセスをさっさとやったほうがいい。どうせ失敗するのだから、失敗を早くして、当たりを見つけるべきなのだ。

商品を販売したら、それが必ず「当たる」という前提でビジネスプランを描いちゃいけない。それは前提ではなく、希望的観測。簡単な言葉でいうと、宝くじに当たるという妄想に近い。大切なのは、大抵の施策は上手くいかないと知っておくこと。だとすれば、何が上手くいって何が上手くいかないか、その情報を手に入れているか入れていないかで、業績に大きな差が生まれる。素早くやれば、その情報は大量に手に入るわけだ。


スピードが早いということは、良かれ悪かれ、フィードバックが早いということだ。自分がやったことに対して、それが良かったのか悪かったのか、効果的だったのかダメだったのか?素早くフィードバックが返ってくれば、誰だって素早く修正、対応できる。そして、その修正、対応した行動に対して、また素早くフィードバックが返ってくれば、また素早く修正、対応できる。これを延々と繰り返していくと、だんだん求めている方向に近づいていく。

このフィードバック・ループをぐるぐるぐるぐる回すと、事業はあっという間に成長する。人の成長でも、フィードバックを早くもらえる人のほうが圧倒的に簡単に成長できる。ゆっくりやれば、その情報はちょっとしか手に入らない。


やったことの結果が半年後にしか出ないような取り組みには、意識をフォーカスし続けることはなかなかの意思力を必要とする(簡単に言うとしんどい)。ところが、スグに反応が返ってくるものに対しては、人間、意識を集中させることは非常に簡単なのだ。

なぜ、スピードが重要なのか? ここにその理由がある。


「売れる商品」を最高にする

さて、商品をテストするといっても方法はいろいろある。
1つは、誤解を怖れずに言えば、最初からいい商品を作ろうとしないことだ。商品開発の経験を積んでくると、少なくとも「標準レベル」のものをお届けしなきゃダメだろう……と考えるのが人情ってもの。しかし、現段階で重要なのは「何が売れるか?」という情報だから、この段階では顧客満足は必要ない。とりあえずリリースしておいて、売れた商品をどんどん改善し、そこから素晴らしい商品にしていけばいい。その際、改善する前の商品を買った人には「アップデートしました」と、別途届ければいい。

大切なのは、「売れる商品」を最高の商品にして、たくさんのお客さんに満足してもらうこと。「売れない商品」を最高の商品にして、自己満足することではない。そう。売れない商品を最高にするのは、ただの自己満である。

売れる商品を最高の商品にするには、「何が売れるか?」「何が売れないか?」を爆速で把握しなければいけない。んで、売れない商品はとっとと破棄して、売れる商品に全リソースをつぎ込まなければいけない。スピードが早いとなぜいいのか、なぜ事業が成功するのか、なんとなく分かってもらえただろうか?


コストカットでいくら利益が増えるか?

フィードバックのループを素早く回転させるのが非常に重要だという話は、お金の観点からも言える。
たとえば、ある商品の販売予定がズレにズレているとしよう。その場合、その商品を販売することで得られるお金の入金が遅れるだけではない。固定費まで余計に発生する。1ヶ月遅れれば1ヶ月分の固定費、4ヶ月遅れれば4ヶ月分の固定費が赤字になる。

スケジュールはちょっとしたことで簡単に遅れてしまう。結果的に1ヶ月遅れるなんて話はごろごろある。1ヶ月の固定費が200万円だとしたら、1ヶ月の営業日が20日で、1日10万円。商品リリースが1日遅れるごとに、10万円の損失になるということだ。

このとき、印刷コストやらなんやらを何日間もかけて、「安く」する必要があるだろうか? 相見積もりを取って、値切り交渉して、2週間遅れて、5%安くなった。それに何か意味があるだろうか?

誤解しないで欲しいが、価格交渉に意味がないと言いたいわけではない。「コストカットは無条件で正しい」と考えるのが「間違い」だということだ。出るお金を減らすというのは正しいように思えるが、それによって「お金の入り」が遅れる(時間をロスする)のであれば、それは必ずしも正しいとは限らない。支払うお金のコストより、浪費する時間のコスト(スピードのコスト)のほうが大きい場合がよくあるからだ。


1つのキャンペーンで粗利が500万円稼げるとする。そして、それにかかるコストが100万円とする。そのようなキャンペーンを月に4回できるとすると、

(500-100)万円×4回=1600万円

一方、めちゃくちゃ交渉して、コストをなんと3割もカットしたとする。言うまでもないが、これは驚異的なカットである(100万円の3割カットは70万円)。しかしそれによって遅れが出て、3回しかキャンペーンをできなかったとすると、

(500-70)万円×3回=1290万円

では逆に、特急料金でコストが3割も上がってしまったが、スピードが早かったので、キャンペーンを5回できたとする。

(500-130)万円×5回=1850万円

コストは3割も上がってしまったが、最終的に残った利益は大幅に上がる。この感覚が非常に重要なのだ。


「スピード」が大事な理由

スピードが早いほうが収益性がよくなるのは当たり前だ。なぜなら他の人が1年で12ヶ月分の仕事をしているなか、1年で16ヶ月分の仕事ができるわけだから。

時間をロスすると、たとえコストカットによって利益率がアップしたとしても、テスト結果(求めてる答え)にたどり着くまでに時間が大幅にかかるわ、その間に固定費はムダになるわ、他のことができなくなるわで、大変なロスになる。一方で、もう安定軌道に乗ったものは、コストをカットすれば、それだけ利益が増える。

結局のところ、赤字になるのはノロいから。遅いから固定費をカバーするだけの限界利益が稼げないだけってことだ。

多少間違ってもいい。多少高くついてもいい。
素早くやらなければいけない。

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