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第3話 総務リーダーは会社にしがみつく

この会社の管理部総務リーダーは数字に弱い。
わからないことにぶつかると、真顔で頭を抱えて始めてから、20分後に現実逃避でネットを徘徊し始める。
そうして仕事が間に合わなくなり、たまに土曜日に半日出社して仕事を完了させたりする。
彼女はいわゆる先延ばし体質の人間である。

「いきなりなんですか?」

おめでとうございます。
あなたがど田舎から始まるWeb制作会社戦記の3号案件に選ばれました。
特典として文章量2割増しで対応させていただきます。

「あぁ…ありがとうございます?!
 でもなんで私?
 エンジニアとかデザイナーとか沢山いるじゃないですか」

私もそう思うんですけどね。
本来はこのコーナーの趣旨って『この会社にはこんな人材がこんなキャリアを歩んでますよ』って伝えることで、採用をアシストすることにありますよね。それなら採用したいバックエンドエンジニアから重点的に取材してはどうかと第1話の彼に伝えたのですが…
『在籍期間の長さ順でいいんじゃね』とだけ回答がきまして…

「あぁー言いそう! 『自社コーポレートサイトとかお金生まないから、優先順位低で』とか言いそう!」

…まぁそういうわけで、取材に参った次第でござる。
それで、ストレートにどうしてこんなに長くこんな会社に居るんです?

「本当にどストレートですね。
 そんなの生きていくために決まってるじゃないですか」

えーでもこの会社基本給安いじゃないですか。
生きていくだけならもっといい会社が他にもあるのではないかと。
第1話の彼は変人だし…。

「えっ…何言ってるの?ここ佐渡島だよ?
 給料が出て、残業代が出て、手当があって、ボーナスが出るだけマシじゃないっ!
 第1話の彼の件は本当だとしてもっ!」

ど田舎ですもんね…つまり選択の余地が少なかったからであると…。

「あとミスしても辞めろと言われないし…」

そういえばこの会社に転職する前の会社では戦力外通告を受けたとかなんとか聞いた気が…

「前の会社では『もっと若い子を雇いたいから辞めてくれ』って言われて、『はい、わかりました』って感じでした、ははは、そういうこともあったなぁ…」

そうしてこの会社に入ってしまったと。人生色々ですね…。
確か最初から総務ではなかったですよね?どんなキャリアを積まれたのですか。

「あぁ…最初はWebサイトの保守を担当するチームでした。ふふっ!」

ふふっ?
ど、どうしたんですか突然…

「いや、なんかインタビューっぽいなと思って」

インタビューだし!

「ウチでいつも作ってるリクルートサイトに出ている先輩の声とかに掲載されそうだと思って。英語でカッコよくVOICEとかっ!」

いや、それだし。人の話聞いてた?
英語でカッコよくVOICEではないけれどもっ!

…いや、ツッコむのはよそう。
この会社に普通の人間が居ないことはわかっていたことじゃないか…

「ご愁傷さまです」

…それで、どうして管理部に?

「左遷です、ありがたいことに」

左遷をありがたがる人、きっと少ないよね!

「いやでも、保守って超難しんですよ、だって人が作ったソースコードをメンテナンスするんですよ?
 頭がついていかないですよ…それで経理にコンバートされました」

…あの…経理に向いているとは思えないんですが…自他ともに認める数字が苦手な人ではありませんでしたっけ…
生産性向上魔王の第1話の彼がよくOKしましたね…

「なんでも…最初は『経理に最も必要なのは誠実さであって、数字に強いかどうかはその次だ』的なこと言われたんですけど、結局今は総務がメインになってますね、いや経理の補助もやってますけど」

それってやっぱり…

「数字に弱くてミスが多いからではないでしょうか…
 いや経理って難しいんですよ…結構この会社数字の動きが大きいんですよ?
 年々大変になっていくんですよ、頭がついていかないんですよ…それで総務メインにコンバートされました」

そんな雑な扱いをされてもこの会社に居続ける理由ってなんでしょう。
…なにかやはり私にはわからない隠れた魅力的なものがあるのでしょうか。

「生きていくためですって。
 やれることやって定年までしがみつきますよ。
 定年になっても再雇用です。まだないけどいつか再雇用制度作ってみせます!
 まぁ…辞めてくれって言われたらそれまでですけど…
 でも多分それは言われないと思うので、きっと大丈夫です」

定年って…まだまだ先の話じゃないですか…そこまでこの会社が続く保証もないし…

「人生に保証とかないんで…
 まぁもし会社が無くなったら、それはその時考えたらいいかなと…」

個人面談とかでそういう話を第1話の彼にしますよね。
どんなこと言われたんですか?

「『会社そこまで続くといいね』って言ってました」

会社そこまで続くとイイデスネー


彼女は足るを知っている。
足るを知る者は富み、強めて行う者は志有り。
自らの居場所をより良くしようとする者は、きっとコミュニティーを育てることになるだろう。

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