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バンダイナムコグループのIP軸戦略を支えるIP予測分析の紹介

こんにちは!
バンダイナムコネクサスのデータ戦略部でリードデータサイエンティストをしているです。

私の所属するデータ戦略部ではグループ内事業の意思決定に貢献するために、様々な分析プロジェクトを進めています。
これまでに紹介してきたアプリDL数予測CFMLを用いた事業横断分析といったプロジェクトがその一例になります。

一方でこういった分析とは別軸で、中長期目線でのエンタメ領域の分析にも取り組んでいます。
今回はそのPJT事例の一つである「IP成長予測プロジェクト(以下IP成長予測)」について紹介します。

IP成長予測とは?

IPの成長パターンには様々なものがありますが、原作を持つIPの代表的な成長パターンは「雑誌連載→単行本発売→アニメ化→ゲーム化」になります。
一方で上記の成長パターンを経ても、下記図のように作品によってIP熱量は異なります。

この違いを明らかにするために、IP毎に熱量の予測を行う「IP成長予測分析」を開始しました。

とはいえIPの熱量に与える要素は膨大なので、まずは単行本発売時点の熱量予測に焦点を当てました。
具体的には、「IP熱量 = 単行本1巻の累計売上」と定義し、単行本1巻発売日から1ヶ月間のデータを用いてその後の売上を予測する問題として設定しました。

なぜIP予測をするのか?

下記図のように、IP成長予測の目的は2つあります。


IP成長予測分析の詳細

予測手法の概要

予測手法の概要は下記図のような形になります。

前述のように目的変数であるIP熱量は「発売後半年の売上 / 発売1ヶ月の売上 (=売上成長度)」という形で定量化しました。
当初は「IP熱量 ≒ 1巻の売上」という形で定量化したのですが、掲載雑誌の影響が強くなり過ぎたため、上記のような定義に変更しました。

説明変数としては、「IP自身の属性情報」と「IPのユーザー属性情報」と「単行本の属性情報」を利用しています。
この中でもIP自身の属性情報として利用している「独自抽出した作品傾向」が予測精度向上へ大きく寄与しているので、次のパートで詳細を後述します。

また予測モデルとしては、精度向上のためにスタッキングモデルを利用しました。

モデル構築において工夫した点

今回の分析で工夫した点は「IRTで独自の作品傾向を抽出した点」になります。

というのも今回の分析に利用したデータは、各IPに作品ジャンルがタグ付けされている(例:作品Aのジャンルはアクション、バトル)データになっていました。

しかしこのデータ形式には下記の課題がありました。
・カテゴリ変数なので、主成分分析のような次元削減が利用できない
・タグデータだと、作品が持つ属性の強弱を上手く表現できない
(例:ラブコメ要素が少し入ったファンタジー系IPとファンタジー要素が少し入ったラブコメ系IPが同一の形で表現されてしまう)

そこで上記課題を解決するために多次元項目反応モデルを構築し、モデルから得られた5つの特徴を作品傾向として以下のように定義しました。
1.感動要素
2.ファンタジー/バトル要素
3.スポ根要素
4.シリアス要素
5.恋愛要素

また作品が持つ属性の強弱を上手く表現するために、前述の5つの作品傾向のスコアを以下のような形で抽出しました。

この作品傾向を説明変数に用いる事で、予測精度を向上させる事ができました。

予測精度

各IP毎の売上成長度実績と売上成長度予測値を比較した図が以下になります。

実績値と予測値がかなり近くなっている事がわかるかと思います。
また定量面での予測精度指標としてMAPEを用いたところ、予測誤差は11%となりました。

予測結果から得られた示唆

この予測をもとに得られた示唆は多数あります。
ここではその示唆の内容を2つ紹介します。

1つ目はIPが対象とする性別と売上成長度との関係性です。
横軸にそのIPのファンの男性比率、縦軸に売上成長度への影響度をplotした図が以下になります。

この図から以下のような示唆が得られました。
・男女共に支持されるIPは成長しやすい
・片方の性別からの支持に偏ると成長しにくい

2つ目はIPの特定要素Aと売上成長度との関係性です。
横軸にIPの特定要素Aの度合い、縦軸に売上成長度への影響度をplotした図が以下になります。

この図から以下のような示唆が得られました。
・特定要素Aが低いIPの方が成長度高い
・特定要素Aが高くなり過ぎると成長度が低い

今後の展望

今後の展望としては様々な内容を検討していますが、例えば以下のような内容を想定しています。
・IP×事業単位での予測に挑戦
・アニメ化したIPに対して、その後のIP熱量を予測
・漫画IPの単行本化直後のIP熱量を予測

さいごに

IP成長予測PJTの紹介は以上になります。

このPJT以外にも様々なエンタメ×データ分析領域のR&Dを実施していますので、少しでも興味を持って頂けたら気軽にお話を聞きに来て下さい!

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