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ライフサイエンス事業部プロジェクト紹介(NCメディカルリサーチ)

■課題の認識

世界では年間約1,700万人、日本では年間約30万人が脳卒中(うち、脳梗塞が約76%を占める)を発症しており、発症者のうち7%が死亡、55%に後遺症が残ると言われています。

脳梗塞になると医療費・介護費だけでなく、患者本人の離職や家族の介護離職による労働機会損失、それに伴う企業の生産性低下に繋がるとされています。イーソリューションズと産総研が別々のアプローチで試算した結果によると、その社会コストは4.4~5.9兆円に上り、重要な社会課題の1つであると考えられます。

■課題のメカニズム分析

脳梗塞治療の時間的制約
脳梗塞は発症後の治療開始が早いほど、患者の予後が良くなることが確認されており、イーソリューションズでは、脳梗塞の発症場所の79%を占めると言われている家での「早期発見」に関して2017年から検討を進めてきています。

根本的治療の不在

一方、脳梗塞の既存治療は急性期の血行再建術を除き、有効な治療法がなく、虚血後の傷害部位の根本的な治療として、傷害部位に特異的に作用するような細胞治療が適していると考えられています。


また、より高い治療効果が見込める「急性期」に治療するためには、健康な人の細胞(「他家細胞」)を前もって採取・大量培養・保管し、患者搬送後に病院で直ちに使用できることが望ましいと考えられます。「他家細胞」は、「自家細胞」のようにオーダーメイドではないため、より安価に製造できるメリットもあります。

また、脳梗塞は傷害部位が閉塞した動脈の下流に存在しているため、細胞を動脈に乗せて、効率的に傷害部位に届けることが可能な「内頚動脈投与」が適切と考えられます。静脈投与では、投与した細胞のほとんどは肺にトラップされ、投与した細胞の3-4%程度しか患部に届かない一方、「内頚動脈投与」は投与初日に細胞の70%以上が患部に届いたという研究結果があります。

現在、多くのバイオベンチャーが脳梗塞の細胞治療薬開発に取り組んでいますが、未だ製品化に至ったものはありません。

■課題解決のデザイン/戦略的パートナリング

細胞治療薬開発のデザイン

イーソリューションズでは、NCメディカルリサーチという子会社において、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞から脳梗塞細胞治療薬NCS-01の開発を行っています。


同社では戦略的に「他家細胞」「急性期」「内頚動脈投与」を選択し、研究開発を推進してきており、動物実験においてNCS-01から分泌される物質の働きにより、傷害の周辺部位を治療できる(死にそうな細胞を死ななくする)可能性が示されています。

拡張性のある特許戦略

これまでに世界14ヶ国において、脳梗塞治療に特化した細胞の製法/物質特許を取得(成立)し、これによりNCS-01を保護しています。この特許は脳梗塞に限らず、他疾患を対象とする細胞治療のパイプライン拡大にも応用可能と考えています。

「バーチャル組織」による事業推進

バイオ領域の事業は収益化するまでに、5~10年単位での長期に及ぶ開発期間が必要となるため、長期間に渡り事業体を維持するために固定費をできるだけ抑えて運営することが重要と考えられます。


そのため、NCメディカルリサーチでは、神経系疾患、細胞製造、薬理、前臨床/臨床試験、薬事、特許等のエキスパートにアウトソースし、その業務管理をNCメディカルリサーチが担う「バーチャル組織」を構築して事業推進しています。

■プロジェクトマネジメント

柔軟性の高い事業推進

「他家細胞」を使った細胞治療薬開発を検討していた当時、脳梗塞領域での細胞治療開発ワーキンググループ「STEPS」が纏めた開発ガイドラインや、細胞製造受託事業者の存在等から、米国での研究開発を開始しました。

その後、2014年に日本において再生医療実用化推進のため、再生医療等製品の治験期間を短縮する規制緩和が行われたことで、日本においてより早期に上市できる可能性が出てきました。

また、2019年には東証マザーズにて一時期、時価総額TOPとなるような、脳梗塞の細胞治療薬を開発するバイオベンチャーも登場し、日本国内における脳梗塞治療薬開発への機運が高まっています。

そのため、米国で少数症例を対象に安全性の確認を行う臨床試験を実施した後、米国での試験を継続しながらも、日本での臨床試験も並行して実施し、米日同時開発を推進するよう計画をアップデートしています。

投資家からは、状況変化に応じた柔軟性の高い事業推進の在り方や戦略的な研究開発の進め方を高くご評価頂いており、近年では富士フイルムから4.3億円、その他複数の企業から出資頂いています。

臨床試験の開始

2019年7月には米国FDA(米国食品医薬品局)のIND(新薬臨床試験開始届)承認を獲得しており、間もなくヒトを対象とする臨床試験を米国にて開始する予定です。

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