評価システムと報酬が会社の文化を作る
評価システムと報酬制度は、単なる業績管理や給与の計算手段ではなく、組織文化や風土の形成においてとても重要な役割を担っています。これらの仕組み、ルールにより、組織で働く人にどのようなメッセージを伝えるかが、組織の価値観や行動に影響するためです。
当社では、この直近5-6年でお客様に向けたサービスは当然のこと、社内の「評価」と「報酬」のルールを改善し、会社が見違えるように変化しました。どんな思いで、どんな風土を目指したのかをまとめたので、ぜひ当社に関心を持った方には一読いただきたいと思います。
写真は、2024年10月に行ったキックオフの写真です。
評価システムが風土に与える影響
評価システムは、従業員に対して「組織が何を重視しているか」を明確に伝える機能を持っています。
例えば、成果を重視する評価システムでは、成果主義的な文化が醸成されやすくなります。職種や役職ごとに求められる成果を測るためのものさしや、基準を作ることで役割と責任が明確となります。
当社は2018年に、人事評価システム(目標管理制度)を導入して、職種、役職ごとの目標の明文化を行い、毎半期その目標設定でよい成果に繋がったか、マネジメントに影響を与えたかを振り返りながら、目標内容のブラッシュアップを行っています。
実際に、2018年以降は、毎年20%成長に繋がっており、6年で売上は10倍超(8億→88億)となりました。四半期ごとに目標設定を行い、その振り返りをすることが、組織の成長に最も効いた実感があります。
目標設定の導入前の、会社設立2009年から2018年までは、営業成績、組織の利益に応じた報酬を出すのみで、社員毎の目標設定をほぼやっていませんでした。その時の会社の業績は9年で約2倍(4億→8億)でした。この当時の離職率は20%程度で、毎月誰か辞めている悲惨な状態でした。ある意味で、この時期経験が人事評価制度を絶対に辞めない、緩めないという覚悟に繋がっています。
「成果主義」はどうなのか?
「成果主義の失敗」とかいう大企業のエピソードネタもあったりし、成果主義を全面に押し出した評価システムは、個人が「自分の成果を最大化する」ことに意識が向き、競争心を促進し、優れた成果を出す人材を育成する一方で、内部競争の発生や情報共有の停滞といった弊害を招く可能性もあると思われがちですが、人ごとに評価される成果を何に設定するかで、そうした内部競争は発生せず、問題なく、成果を出すことができました。正直、経営者、幹部の考え方次第なので、決めたことをやりきる気持ちと行動が成果に導いたと思っています。
特に、管理職の目標内容を階層ごとに、しっかりと定めることで、マネージャーの成果貢献の視座が高くなり、より大きな付加価値の創造につなげることができます。当社においても、この数年でマネージャーの目標内容は、個人から組織に向けたものとなり、大きく変化を遂げています。
当社では、新築やリノベーションといった建築の技術職のものも多数いるため、チームのパフォーマンスを評価基準に入れて、協力し合う風土を大切にしていますが、個の能力が高められなければ、組織の総和が高まらないため、結果的には、個人の目標に重きを置いています。これは、個人の成果、功績が見えづらくなると、優秀な人材が評価に不満を持つ可能性が出てくるからです。
報酬制度と文化の関連性
報酬制度は、社員の行動に直接影響を与える強力なインセンティブとして機能します。頑張って成果を出せば給与が変わる会社と、頑張って成果を出しても給与に変化が無い会社、どちらが頑張りたくなるかは一目瞭然です。この報酬制度がどのように設計されているかによって、組織全体の雰囲気、文化は大きく変わってくると思っています。
〇月給(基本給)
これまでの実績や信頼、これからの期待への報酬。投資的な意味合い。
〇賞与
過去の成果に対しての報酬。期間においての投資におけるリターン(利益)。
報酬の考え方は会社によっていろいろあるが、当社ではこの考え方を報酬の定義としており、会社としては、月給(基本給)が高い人を増やすことで、信頼できる人が増え、組織として強くなっていくと考えています。そして、高い月給の人に対して、高い賞与を支給できるように組織としてマネジメントをしています。月給が高くなった代わりに、賞与が低くなっては、意味がないため。
高額な営業インセンティブを提示する企業では、短期的な成果を求める風土が生まれる傾向があり、社員は、金銭的利益を得るために効率や目標達成に注力しますが、長期的な人材教育やルール作り、組織づくりという視点、最悪、倫理的な判断が軽視される場合もあります。
そのため、当社ではそうならないよう、管理職はインセンティブ(個別成績におけるリターン)は無しとし、所属部署、事業部の付加価値(利益)基準で評価をするという仕組みにしています。
実際、組織の15%程度、35名の管理職がいますが、皆、毎年継続して年収を上げており、管理職の平均年齢は34歳、平均年収は1,150万円程度となっています。ちなみに、時短社員を除いた、組織全体の平均年収は660万円程度。これは2023年度の上場企業社員の平均年間給与651万よりも上回る水準となっています。
今では、離職率は1ケタ台となり、社員紹介のリファラル採用も年間10名程度が決定する状態になりました。直近2年で99名の正社員の採用にも繋がっています。
組織文化の適応性
評価システムや報酬制度の設計において、重要なポイントは「その企業の文化や目指す姿、経営理念に適合しているかどうか」だと思っています。例えば、成長を重視する企業であれば、挑戦を奨励し、失敗を許容する仕組みを取り入れることが必要です。逆に、安定性や正確性を求める企業では、慎重な評価基準や報酬体系が求められるはずです。
この点で、評価・報酬制度は普遍的で単一的なものではなく、企業においても、事業部、職種ごとに柔軟に変化させ、社員最適でカスタマイズされるべきです。営業、建築設計、施工管理、WEBエンジニアが在籍する当社の組織では、一律の制度がかえって企業の成長を妨げる可能性もあるため、定期的な見直しや改善を行っています。そのため、その評価基準が明確化か?明文化されてるのか?と問われると、毎年変化していくものもあるため、曖昧な部分もあります。
最後に
面接する際に確認するのが、「仕事を通じて成長をしたいか」「どのような成果を出したいと考えているか」「成果をきちんと評価されたいか」という点です。成果へのこだわりや、それをきちんと評価されるという感覚を持っているかを採用基準の一つとして大切にしています。
たくさんの会社がある中で、当社に入ることで、どんなメリットがあるのかをしっかりと訴求できるように、今の報酬体系や文化を作ってきました。実際に、管理職からは、「給与が上がりすぎてプレッシャーがかかる」という声ももらうようになってきたことで、役割、責任を超える価値を出そうというポジティブな志向の社員が増えたことも実感としてあります。
「人的資本経営」が大切と言われる中、当社はしっかり「人的資本経営」をして、成長している会社ということをお伝えしたかったです。