皆さんは「ベンチャー企業で働く」ことについて、どのようなイメージをお持ちですか?
面白そう?
成長できそう?
大変そう?
残業が多い?
能力のある人だけができる働き方?
一言で「ベンチャー企業で働く」と言っても、規模、業種、地域、創業後の年数などにより、その仕事内容や社風は大きく異なります。
ですから、「何となくのイメージはあるけれど、実際のところはよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。
というわけで今回は「ベンチャー企業で働くリアルな一例」をご紹介します。
ふるさと熱電株式会社 執行役員の吉田 浩之(よしだ ひろゆき)。
2017年、東京の大手コンサルティング会社から、ふるさと熱電に転職しました。
転職の決め手は何だったのか、そして実際に働いてみてどう感じているのか、率直な想いを語ってもらいました。
目次:
❚ ベンチャー企業が、地方から日本を変える時代に
❚ 元同僚が、地域創生ベンチャーの社長に
❚ 人生を変える決断
❚ 大将自ら先頭に立ち、率先垂範で改革を
❚ ベンチャーで働く醍醐味とは?
❚ 私が「ふるさと熱電」だ!
ベンチャー企業が、地方から日本を変える時代に
東京のコンサルティング会社で、大手クライアント企業の事業支援をしていた吉田。
シニアマネージャーという責任ある立場で仕事に取り組む一方、「大手企業が東京から日本を牽引する時代は、もう終わった」と感じていました。
吉田「大手企業は、その規模の大きさから、どうしても、意思決定のスピードが遅くなったり、視野やアイデアが凝り固まってしまいがちです。
そのため、これからの変化の激しい時代を勝ち抜いていくには、スピード感や柔軟な発想を持ったベンチャー企業や中小企業の方が、有利になっていくと感じていました。
と同時に、今後は『地方』がキーワードになるという考えもありました」
日本は、はるか昔から、数十年スパンで「中央集権」と「地方分権」を繰り返してきました。
「歴史は繰り返す。しばらくは東京一極集中が続いたけれど、今後は地方で経済が自立し、地方から日本が変わっていく」
吉田には、そんな未来が見えていたのでした。
元同僚が、地域創生のベンチャーの社長に
そんな時、前職の元同僚と久しぶりに再会した吉田。食事に行き、話に花が咲きました。
元同僚の彼は、数年前に電力会社に転職。その後は、地熱発電で地方の温泉街を活性化するベンチャー企業の社長になっていました。
火山大国の日本で、『マグマの熱を活かした地熱発電』という最先端の再生可能エネルギー事業に取り組んでいる。
田舎を拠点にしながらも、やっていることは最先端。
彼の話には将来性があり、聞けば聞くほど面白い内容でした。
すると彼は吉田に、こんな提案をしてきたのです。
「吉田さん、うちの会社でぜひ働いてほしいんだ。僕たちが手がける地熱発電の事業で日本の地方創生を実現しよう!」
この言葉が、その後の吉田の運命を、大きく変えることになります。
そしてこの同僚こそが、何を隠そう、現在のふるさと熱電の社長である赤石なのでした。
人生を変える決断
吉田「赤石から『ふるさと熱電に来てほしい』と言われた時、答えは迷わず『YES』でした。
これからの時代は、ベンチャー企業が地方から経済を回していくと考えていた矢先の、地方創生事業との出会い。
しかも、最先端の再生可能エネルギー事業に取り組んでいる。面白いに違いない。
ただ…その場ではOKしませんでした」
これまでに何度か転職を経験してきた吉田。
当時の会社で責任ある仕事を任されていたこと、家族のこと…様々なことが頭をよぎりました。
今、転職すれば、慣れ親しんだ土地を離れることも含め、自分だけではなく、家族の人生をも大きく変えてしまうことになる。
果たして赤石さんは、事の重大さを理解しているのだろうか…。
酔った勢いで、軽はずみに発言しただけなのか…。
吉田「赤石にはすぐに返事はせず、彼の覚悟を見極め、自分自身が納得できた時に、転職する旨を伝えることにしました。
そして、転職を決めた後は何があっても後戻りせず、自分がふるさと熱電を背負う覚悟で、仕事に取り組むと決めました」
返事は保留のまま、その日は一旦解散した二人。
ところが次の日から赤石は、吉田の想像を超えるしつこさで、猛烈に口説きにかかってきたのです(笑)
会社のビジョンや今後の目標のこと、組織のマネジメントに苦戦していること、その上で、吉田の力が今後のふるさと熱電には欠かせないこと…
全てを包み隠さず、熱い想いをぶつけてきました。
その赤石の姿勢に心を動かされた吉田は、満を持して、ふるさと熱電への転職を決意。
最初に転職の誘いを受けた時から、なんと1年が経っていました。
大将自ら先頭に立ち、率先垂範で改革を
東京の大手上場会社から、創業5年のベンチャー企業へ転職した吉田。
当時の様子をこのように振り返ります。
吉田「ふるさと熱電の社員は6人でしたが『たった6人しかいないのに、どうすればこんなにバラバラになれるんだろう』と不思議に思うほど、全員が違う方向を向いていました(笑)」
吉田はまず、社員一人ひとりと話をするところから始めました。
自分の人となりを理解してもらい、会社の方向性や事業の目的を伝え、話に耳を傾けてくれる状態を作ることに注力。
とはいえ、そう簡単に事は運びませんでした。
吉田「社内には当初『よそからきたやつが、何を偉そうに』という空気が漂っていました。そりゃそうですよね。
当然だと思います。
ただ、前職でも似たような状況を経験していたので、戸惑いはありませんでした。
むしろ『この状況をどうやってひっくり返してやろうか…!』とワクワクしながら取り組んでいましたね」
一人で出来ることには限界がある。チーム力を高めることが事業を推進し、会社を成長させる。
その信念のもと、改革を推し進めてきた吉田が最も大切にしたことは、「自分が率先垂範する姿を見せること」でした。
吉田「昔の戦(いくさ)でもそうですが、自分は現場には出ず、安全な本陣から指示を出すだけでは、仲間の士気を上げることはできません。
大将自らが戦の最前線に立ち、リスクを背負って戦う姿を見せることで、仲間の心にも火が灯る。
そして徐々にチームワークが醸成され、組織がよりよく変化していくのだと思います」
吉田の話に耳を傾けてくれるようになった社員たちに、進捗管理の方法、仕事の進め方、会議の目的や進め方などを順番に伝えながら、実践と改善を繰り返しました。
また、これまで外注していた経理や人事業務も社内で内製化し、バックオフィスの土台を整えました。
その後ようやく採用にも力を入れられるようになり、現在、要となって活躍するメンバーも入社して組織が回りだしました。
入社から実に、3年が経過していました。
ベンチャーで働く醍醐味とは?
「課題は、まだまだたくさんありますし、毎日大変ですよ」と言いつつも、話を聞けば聞くほど、仕事が充実している様子が伝わってきます。
改めて、「ベンチャー企業のふるさと熱電」で働く醍醐味について聞いてみました。
吉田「やはり『最先端の事業で、地方から日本を変える』というところが、とても面白いと思います。
事務所は熊本県小国町という田舎にありますが、やっていることは東京の虎ノ門ヒルズのベンチャー企業と変わらない(笑)
僕たちは、世の中をよりよく変える、誇れる仕事をしているという自負があります」
地熱発電により、温泉街に、新たな収益の柱を作る。その地熱発電で得た収益を元手にワーケーション施設を作るなど、その温泉街に再び人が集まる仕組みを地元住民と共に考え、実行する。
その結果、地域が活性化していく。
そんな壮大なプロジェクトが現在、吉田を含めた14人の社員に託されているのです。
吉田「会社の成長スピードが速いので、整えても整えても、また新たな課題が出てくる日々。
本来の役割を超えて、多くの仕事をこなさないといけない大変さもありますが、課題がたくさんあるということは、伸び代も大きいということです。
『無ければ作る』とワクワク出来る人にとって、ふるさと熱電は、とても面白いベンチャー企業だと思います」
私が「ふるさと熱電」だ!
「私がふるさと熱電だ!」という気概で、仕事に取り組んでいる吉田。
最後に、今後の目標について聞いてみました。
吉田「今、わいた地熱発電所第2号機の建設に向けて大忙しですが、これでようやくスタートラインに立てたと思っています。
これから、わいた地区に続く、日本中の他の温泉街で、地熱を活用した発電事業による地域創生の事例を広げていく。
そして、当社の取り組みが評価され、全国に認知され、日本中から『うちでもやってほしい!』とふるさと熱電がひっぱりだこになる状態にすることが、私の今の目標です」
志高く、熱い思いをもって働く吉田のチャレンジは、さらなるステージへと続いていくのです。