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効率の良い記憶のために (テスト効果)

Photo by Halacious on Unsplash

記憶するにはテストが重要

Monoxer株式会社CTO畔柳です。

本日はMonoxerの基盤となっている学習理論の一つであるテスト効果の重要な論文を紹介したいと思います。テスト効果とは、テストなどにより対象を想起することによって記憶が定着するという効果です。

世間一般では、テストによってどのくらい記憶しているか測ることはできても、それによって記憶定着が促進されるとはあまり考えられていないと思います。しかし、それは誤解なのです。この記事では、テストにより対象を想起することは記憶定着にとても重要で、なおかつ、私たちはその効果を過小評価しがちである、ということを示した論文を紹介したいと思います。

Retrieval Practice Produces More Learning than Elaborative Studying with Concept Mappingは2011年にJeffrey D. Karpicke and Janell R. Bluntによって発表され、Scienceに掲載された論文になります。

この論文では科学の文章を学習の対象としています。一定の期間で読むだけ 繰り返し読む 読む+概念図を作る学習 読む+テストによる学習のそれぞれの方法で学習したときの一週間後のテストのスコアを比較しています。加えて、学習者がそれぞれの方法でどのくらい効果を実感したかも合わせて議論しています。

以下が結果のグラフです(論文より引用)。
: 一定の期間で読むだけ
: 繰り返し読む
: 読む+概念図を作る学習
: 読む+テストによる学習

A. Verbatim Questions (元の文章にそのまま載っているものを問う問題)
B. Inference Questions (推論が必要な問題)
C. Metacognitive Predictions (学習後の学習者自身による評価)

ABより、一般に効果が高そうと考えられがちな概念図を作ることによる学習(青)よりもテストによる学習(緑)の方が、どちらの種類の問題でも高いスコアを獲得しています。その差はおよそ1.5倍で、かなり大きな差があると言えます。概念図を作ることによる学習とテストによる学習は同じ時間をかけて学習しておりテスト効果の大きさがよくわかります。

加えて面白いのが、Cの学習後の学習者の評価です。テストによる学習をしたグループでは一週間後の実際のスコアの方が自己評価よりも高くなっているのです!このような結果になるのはテストによる学習をしたグループのみです。赤の読むだけ学習も含め、他のグループの自己評価はテストによる学習のグループよりも高くなっています。しかし、結果は1.5-2.5倍テストによる学習の方が良いのです!恐ろしい!人間の感覚はあてになりませんね。

つまり

テストによる学習は記憶定着の効果が大きい。
文章から概念図を作るような、創造的(とされる)アウトプットよりもテストによる学習の方が効果的。
テストによる学習の効果は過小評価されがち。
読むだけ学習の効果は過大評価されがち。

Monoxerでは

テスト効果はMonoxerの開発においても、とても重要な理論です。Monoxerは繰り返し問題を解くことにより記憶を定着させてゆくことを基本のコンセプトとしており、テスト効果を最大限に活用するためのプロダクトであるとすら言えます。テスト効果をうまく利用するには、どのように問題を作るか、どんなタイミングでやるのか、などなど考えることがたくさんあり、Monoxerのようなシステムを利用するのが一番です。

一方で、テスト効果に限ってもまだまだ明らかになっていないことがたくさんあります。
・インプットの時間とテストによるアウトプットの時間はどのくらいのバランスが良いのでしょうか?
・周辺領域の知識がある人にはどうでしょう?
・学習の期間が長期に渡る場合はどんなタイミングで学習するのが適切でしょうか?

嬉しいことに、Monoxerは多くのユーザ様にご利用いただいており、学習データもたくさん溜まっています。今回紹介した論文では対象者は120人でしたが、Monoxerでは遥かに多い人数の学習に関わり、データを扱うことができます。Monoxerはこのような記憶の未知の領域に挑み、理想の記憶ツールに近づいて行きたいと考えています!

Monoxerは一緒に記憶のプラットフォームを作ってゆく方を募集しています。
少しでもご関心をお持ちいただけたら、ぜひ一度お話ししましょう!

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