「2024年問題」が施行されてから1年が経ちました。
ドライバーの残業規制、EC需要の爆増、脱炭素への対応——物流業界が直面する課題は、どれか一つでも十分に重いのに、すべてが同時に押し寄せている。
そんな中、JAPAN CVC BASECAMPでは物流・サプライチェーン領域を専門に扱う完全招待制の「物流フォーラム」第1回を開催しました。
現場だからこそ聞けたリアルな声の中には、業界の未来を考えるヒントが数多くありました。
今回のイベントで見えてきた業界共通の課題や、今後につながる興味深い発見について、参加企業の皆さまとの議論の様子とあわせてお伝えします!
共通課題の先へ
集まったのは、ヤマトHD、SGホールディングス(佐川急便)、セイノーHD、NIPPON EXPRESS HD、日本郵政、日本GLP、上組、MOL PLUS(商船三井)、MLCベンチャーズ(三菱倉庫)、寺田倉庫— 物流業界を代表する10社のCVC・イノベーション担当者たちです。
普段であれば競合同士にもなりうる面々。
それでも「同じ課題を持っているなら、一度本音で語り合おう」という場を設けることに意味があると考えました。
冒頭では、SPIRAL INNOVATION PARTNERSのGeneral Partner・岡洋氏にゲスト講演いただきました。
岡氏が物流領域のオープンイノベーションについて語るなかで、会場の空気が変わった瞬間がありました。
「全社が同じ外圧にさらされている」という言葉を口にしたときです。
ドライバー不足も、再配達コストも、カーボン規制も、どの社も抱えている。
「うちだけの問題ではない」という安心感が、その後の議論の質を一段上げたように思います。
業界の本音が並ぶホワイトボード
岡氏の講演が終わり、続くセッションは参加10社それぞれが自社の投資方針と関心テーマを共有するパートです。
資料の準備はゼロ。あくまで対話を重視したリバースピッチ形式で進めました。
各社が順番に話す言葉を聞きながら、藤原がホワイトボードに次々とキーワードを書き出していました。
「ラストワンマイルのコスト」「倉庫ロボの導入判断」「GHG可視化」——発言から言葉を拾い、リアルタイムで整理していく。
このセッションでおもしろい発見がありました。
「物流」という同じ業界にいながら、各社のアプローチがまったく違うのです。
業界全体をつなぐプラットフォームを設計しようとする会社がある一方で、自社アセットの最大化を軸に据える会社もある。海運から社会インフラへの変革を目指す会社があれば、保管×テクノロジーで独自の世界観を広げる会社もある。
しかし2周目の「課題の襷掛け」では、逆に共通点が浮かびあがってきます。
「それ、うちも同じです」「そのテーマ、一緒に深堀りしたいです」——そうした声が、業界横断で重なっていく。
ホワイトボードには、バラバラに見えた10社の発言が、いくつかの共通テーマとして整理されていきました。
ラストワンマイルのコスト問題、倉庫ロボティクスの導入判断、Scope3開示義務化への対応。これらは特定の一社が解決できるものではなく、業界として向き合わなければならない構造課題でした。
終わった後、一人の参加者から、「自分が話したことが、ちゃんとあそこに書いてある」との言葉が。
これは私たちが意図した設計でもあります。ホワイトボードのメモは「記録」ではなく「設計図」です。
参加者の発言は、次回のアジェンダに反映されていく。「自分がここで言ったことが、ちゃんと次に生きる」という実感が、フォーラムへの関与感をつくると考えています。
出会いを成果へ
フォーラムの後半では、AIリサーチ・プラットフォーム「CATALYST」をご紹介しました。
ホワイトボードに並んだキーワード——たとえば「物流×在庫最適化」「ラストワンマイル×EV」——をCATALYSTに入力すると、関連スタートアップのリストが自動で生成されます。
「こんなにSUが出てくるのか」という声が、会場で何人かから上がりました。
大手企業とスタートアップの接点は、これまで人脈や偶然に頼ってきた部分が大きかった。BASECAMPのフォーラムは、まず同業の課題認識を揃え、CATALYSTがそのニーズに合うスタートアップを自動抽出し、MATCHING DAYで実際の商談につなげる——そのプロセスを一気通貫で設計しています。
藤原がその場でマーカーを走らせたことは、単なるメモ取りではありませんでした。ホワイトボードのキーワードがCATALYSTのインプットになり、スタートアップとの出会いになり、ディールの種になる。ランダムな名刺交換ではなく、「なぜこの会社と話すのか」が分かった状態での出会いを設計すること。それが、物流フォーラムに込めた考え方です。
物流業界の「標準会議」へ
今回の第1回を経て、参加者の声をもとに次回のテーマを決める形で、フォーラムは続いていきます。 「ラストワンマイル」「GHG可視化」「倉庫ロボティクス」——いくつかのテーマが候補に挙がっています。
毎回のフォーラムで出た課題キーワードがCATALYSTに蓄積され、マッチング精度は回を重ねるごとに上がっていく。 参加者が「自分のニーズに答えてくれている」と感じられる場にすることが、フォーラムが「業界の標準会議」になるための条件だと考えています。
「運べない」が物流業界の現実問題になった今だからこそ、同じ課題を持つ人たちが本音で語り合える場が必要です。
あの日、ホワイトボードに並んだ言葉たちが、次の出会いへとつながっていく。
JAPAN CVC BASECAMPは、そんな場であり続けます。