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電子おくすり手帳「harmo」が、ソニーから医薬品開発支援のシミックへ移籍したワケ

2019年6月、シミックホールディングスは、中期経営計画の重要な柱と位置づけているヘルスケア事業を強化するため、ソニーが11年にわたって普及に取り組んできた電子おくすり手帳「harmo(ハルモ)」事業の承継を完了させました。

なぜharmoはソニーを離れ、そしてシミックで何を成し遂げようとしているのか。ソニー時代からharmo事業を知る、ふたりの中心人物に話を聞きました。

シミックホールディングス株式会社
事業戦略本部 CMIC Tech Lab所長
harmo考案者 福士 岳歩

2000年ソニー入社。画像、音声の信号処理、機器制御の研究開発などに従事していた、2008年当時、harmo構想を着想し、2011年に実証実験、2016年には事業化に漕ぎ着ける。2019年6月、事業承継により現職。


シミックヘルスケア株式会社
harmo事業部 部長 石島 知

2012年ソニー入社。オーディオ機器の海外マーケティングを経て、2014年からビジネスプランナーとしてharmo事業に参画。harmoの経営戦略の立案から実行について全般的に携わり、事業継承も主導。2019年6月事業継承により現職。

ひとりのエンジニアの体験から生まれたharmo

いまから11年ほど前のある日、福士岳歩はおくすり手帳に挟んだまま、貼り忘れたシールがバラバラとこぼれ落ちるのを見てこう思ったと言います。

「具合が悪いときに紙のお薬手帳でシールをきちんと管理するのはツラい。もう少しなんとかできないだろうか」

ソニーに勤めるエンジニアだった彼は、体調が回復するにつれ、簡単に調剤データを管理する方法について考えを巡らせはじめました。

ひらめきを与えてくれたのは「Suica」にも利用されているソニーの非接触ICカード技術「FeliCa(フェリカ)」でした。

「この技術を活用すれば、おくすり手帳を電子化できる」

そう思った福士ですが、彼の発想はデジタルによる紙の代替に留まりませんでした。

「調剤データを薬局のコンピューターから取得して保管できれば、患者さんの手間もなくなります。さらに電子化が進めば服薬指導やデータ管理も楽になり、病院や薬局の経営効率を上げることもできるでしょう。大きな可能性を感じました」

そうはいっても、福士は映像信号や音声信号処理の研究開発に携わるエンジニアです。事業の立ち上げ経験もなければ、医療やヘルスケアに関する知識も人並み以上にあるわけではありません。でも彼は諦めませんでした。

「当時の上司から許しを得て、業務時間外や休日を費やす個人プロジェクトとして動きはじめました。交通費などの経費は自腹でしたが、それでも知遇を得た薬剤師のつてをたどり、多くの関係者に電子おくすり手帳の意義を説き続けたところ、徐々に理解してくれる方が現れはじめたんです」

福士の地道な努力が功を奏し、着想から5年後の2013年9月、電子おくすり手帳「harmo」は、名実ともにソニーの正式な取り組みとして認められ、予算や人がつくことになりました。

日常のささいな疑問から、電子おくすり手帳「harmo(ハルモ)」は誕生したのです。

社会的意義が感じられる仕事がしたいという想い

一方、harmoが事業室に昇格したころ、オーディオ製品の海外マーケティングに携わっていた石島知は、仕事に迷いを感じていました。

刺激的でありやりがいのある仕事でしたが、もし誰かに「あなたの仕事は社会にどんな価値を提供しているか」と問われたら、うまく答えられる自信がなかったからです。

転機になったのは、2014年6月にソニーとJICA(国際協力機構)の共同プロジェクトで訪れた西アフリカ、コートジボワールでのある経験でした。

3年前に終結した内戦の傷を癒やし、国民の融和を図る目的で企画された、2014サッカーワールドカップのパブリックビューイングイベントに、若手メンバーが中心のプロデューサーメンバーとして参加したとき、石島は自分のなすべき使命が見えたと振り返ります。

学生時代、NPOを創設し活動していた石島にとって、コートジボワールでの経験は当時の記憶を蘇らせるのに十分な充実感がありました。

「発足当初は、会社の正式なプロジェクトではなく、いわゆる“机の下”活動として、有志メンバーだけではじめたプロジェクトでしたから準備は大変でした。しかし熱意をもって会社に対して働きかけたところ、結果的に会社公認のプロジェクトとなり、現地で計1万3,000人以上の方々を集めるパブリックビューイングを開催できました。観客の何人かから『内戦後、国民が一堂に会する場はなかった。素晴らしい機会をつくってくれてありがとう』という声をもらったときに、自分は社会的な意義が実感できる仕事がしたかったのだと、改めて気づかされました」

帰国後、コートジボワールプロジェクトで苦楽をともにした先輩からharmo事業に誘われたとき、心が動かされたのもharmo事業の社会的影響力の大きさを実感したからだと言います。

「とりたててヘルスケア分野に関心があったわけではありません。しかし、harmoが世の中に普及すれば、困っている患者さんのためになるのは明らかです。また、医療現場におけるムダを省くことに貢献できれば、増え続ける社会保障費用の削減にもつながるでしょう。社会的な意義を感じて先輩の誘いを受けることにしたんです」

ソニーからシミックグループへ

個人プロジェクトから事業化を果たしたharmoでしたが、持続性のあるビジネスモデルを確立するまでには、さまざまな困難を乗り越えなければなりませんでした。

福士は当時を振り返ります。

「患者さんの負担を減らしつつ、これまでより、正確な電子データを参照しながら調剤業務を実施できるというビジョンに共感してくださる薬剤師さんもたくさんいました。しかし理想論だけではビジネスは成り立ちません。会社からは常に売上を求められましたが、この取り組みが、調剤報酬という形で保険制度に反映されるには長い時間を要します。時間感覚が違い過ぎて、話がなかなかかみ合いませんでした」

事実、電子おくすり手帳が調剤報酬として認められたのは着想から8年が経過した2016年のことでした。

一方、2014年からビジネスプランナーとしてharmoにかかわるようになった石島も、サービスの普及とビジネスモデルの構築には苦労したと言います。

「当初は、調剤薬局や医療機関からシステム利用料をいただき、ビジネスを拡大する計画でしたが、これだけでは収益が安定するまで時間がかかります。そこで患者さんの調剤データをもとに、自治体、医療関係者等が正確かつ個々の患者さんの役に立つ情報を届けるサービスの事業化に取り組みはじめました」

それでもharmoの収益性は思うように伸びません。なぜなら業界外からの参入だけに、調剤薬局や医療機関、製薬会社と太いパイプがあるわけではなかったからです。彼らが感じている課題や必要としているニーズを把握するのに「どうしても時間がかかってしまっていた」と石島は振り返ります。

「この問題を解決するためには、業界の事情に精通した企業とパートナーシップを結ぶのが順当な対応だと判断した私たちは、2017年の秋から、harmoの成長をサポートしていただけそうな企業と接触をはじめました。多くの方々にご協力をいただき、私個人だけでも50社以上の方々とお会いしたと思います。そのなかでもっとも熱意を持って接してくださったのがシミックでした」

石島は、シミックグループの役員から現場担当者までと数十人以上の社員と話し合いを進めるなかで、harmoを大きく飛躍させるにためには、事業提携や販売支援という枠組みを超えた関係を築くべきかもしれないと考えるようになっていったと言います。

「患者さんを起点としたプラットフォームであるharmoは、業界内において中立的な立場で事業を推進する必要があります。その点シミックグループは、国内外の製薬会社すべてを支援できるユニークな立ち位置を築いており、中立的なポジションでビジネスが可能です。また、現在さまざまな業界がヘルスケア領域に着目し、ビジネス創出をしていこうというトレンドがありますが、シミックグループには臨床開発モニターや看護師、薬剤師、治験コーディネーターも在籍しており、業界の細部まで知り尽くしています。また、シミックグループが掲げる『一度しかない人生を、年齢や性別、人種を問わず、誰もがその人らしくまっとうしていくために、ヘルスケア分野に革新をもたらす』という使命感に共感できたことも、協業相手としてシミックに惹かれた理由でした」

それはシミック側も同じでした。協業に向けた話し合いは、やがて事業承継の可能性へと議論が深まっていったと言います。

harmo考案者である福士も、こうした動きはharmoの成長に有利に働くだろうと見ていました。

「もしharmoがシミックグループに活動の場を移せば、調剤薬局だけでなく、医療従事者、製薬会社、保険者(健康保険事業の運営主体)に対して偏りないサービスを提供する環境が整い、最終的に利用者(患者)に提供できる価値を高めることができます。これはソニーにいる限り一朝一夕にはできないこと。harmoの成長を考えると私たちが選択すべき答えは明らかでした」

1年半近い協議の末、2019年3月25日ソニーとシミックグループの間でharmoの事業承継契約が締結され、同年6月に承継作業がすべて完了しました。これによりharmoは名実ともにシミックグループの一員になったわけです。

これから何を実現しようとしているのか

シミックグループに加わり、第二の事業創業期ともいえるharmo。今後どのような展開を狙っているのでしょうか。福士はシミックグループの医療やヘルスケアに関する知見をフル活用して、harmoプラットフォームの可能性を広げたいと話します。

「すでにharmoをご利用いただいている患者さんや調剤薬局、医療機関との関係を維持しながら、電子おくすり手帳以外の活用にも取り組むつもりです。すでに一部の地域では、harmoの仕組みを活かして予防接種データを記録することで医療過誤を減らし、利用者の安全性を高める検討がはじまりました。シミックグループに持っているリソースを活用して、いちはやく実用化していきたいと考えています」

ソニー時代には知り得なかった活用のアイデアも見えはじめたと石島は話します。

「ほんの一例ですが、たとえばソニー時代にはほとんど接点のなかった、治験コーディネーターとお話をする機会があって驚いたことがあります。医薬品の効果を人で確認する治験を実施するには、事前に被験者の服薬状況を正しく把握することが必要です。しかし、そのデータを確認したり修正したりするには、非常に煩雑で手間がかかるそうなのです。そのためもし、カードをタッチするだけで被験者の服薬情報を治験コーディネーターが簡単に把握できたら治験業務が大きく進歩すると言われました。このように我々が知りえなかった活用の仕方がありとあらゆるところに出てきたことに可能性を感じています」

今後はいまだ顕在化していない課題を掘り起こし、harmoのポテンシャルを最大限に引き出したいと石島は意気込みます。

「医療やヘルスケアの世界には、多くの無理やムダが残っています。私たちが把握し切れていない課題を含めればその数は膨大です。それらの課題を1社のみで解決することはできません。今後は社内、社外を問わず、多くの方々と手を取り合い、一緒に課題解決をしていきたいと考えています」

社会実装にこだわる人と働きたい

いまharmo事業は2つの組織で構成されています。ひとつは福士が率いる「CMIC Tech Lab(シミックテックラボ)」、もうひとつが石島の率いる「harmo事業部」です。

前者は長期的な視点に立ってharmoの可能性を広げるR&D部門で、後者はharmoの普及拡大に向けてビジネスを拡大していく部門と位置づけられています。それぞれどのような人物を必要としているのでしょうか。

福士は「個々人の健康記録が、個別化医療の核心となる時代が必ず来る」と言います。

「CMIC Tech Labでは、個々人の健康記録を安心・便利に実現するというharmoの基本的な仕組みを、社会のより多くの場面で活用してもらえる状態をゴールとして、その実現に必要な技術、方法論、見せ方、フォーマットといった一連の枠組みを、社会実装を通じて確立していきます。ですから、たとえエンジニアであっても、机上でプログラムをすることしか興味がない方は求めていません。自分が生み出したアイデア、コード、ビジネスの種を共に社会実装し、世の中に良い影響を与えたいという想いを持って動ける方と一緒に未来をつくっていきたいと考えています」

社会実装にこだわるのはharmo事業部も変わりません。石島は言います。

「harmo事業部では、現在harmoをご利用いただいている約35万人の一般ユーザーと、約1,000にのぼる医療機関に対して、持続的にサービスを提供し続ける義務があります。サービス提供には、日々の運用業務や開発を通じてサービス改善活動も必須です。これらは一見当たり前な仕事と思われがちですが、サービス提供者として重要な業務であると考えています。また、これらのサービスを維持するためにも、適切に収益を上げ、持続可能なビジネスをつくっていく使命があります。ただし、既存の業務だけでなく、ユーザーに新たな価値提供をしていくことも欠かせません。ですから現場を知り、課題をとらえ、社会実装し、人々が価値を実感してくれるところまで一緒にやっていただける人と仕事がしたいと思っています。harmo事業部には、ソニー出身メンバーを中心としたエンジニアチームやサービス運用チーム、また、シミックのメンバーを中心としたビジネス推進チーム、データサイエンティストチームなど、多様なメンバーが所属しています。harmoを医療・健康情報のプラットフォームとして社会に根付かせ、より良い社会を築いていきたいと考える方であれば、年齢、性別や国籍にこだわらず積極的に採用するつもりです」

現在、harmoではフロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、サービスプランナー、UI/UXデザイナーを求めています。医療業界、ヘルスケア業界での経験は問いません。第二創業期で次世代の医療・健康プラットフォームを創りたいという志を持つ方はぜひご応募ください。ご連絡をお待ちしています。

harmoとシミックを知る

harmoの歩み

harmo概要

処方せん登録数 約500万枚
医療機関・薬局 約1,000軒
利用者数 約35万人
※2019年9月現在

シミックグループとは?

シミックグループは、1992年に日本で初めて製薬会社に対するCRO(医薬品開発支援)事業をはじめた企業です。現在では、開発から製造、販売まで、医薬品に関する総合的な支援業務を提供しており、国内で誕生する新薬のおよそ8割にかかわっています。さらに自社ビジネスとして、診断薬、オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の開発・販売、またヘルスケア関連事業にも進出。多様なアプローチで人々の健康に貢献しています。

シミックグループ概要

連結売上高 690億円
従業員数 7,000名以上
事業所数 国内44カ所、海外15カ所
※2019年9月現在

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