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あえて受託制作をやる。CINRAアートディレクターが得たロジカルさと人間力

制作会社としての側面を持つCINRAでは、日々さまざまな企業から案件を受託し、ウェブサイトの制作をはじめ、紙媒体やグッズ、ビジョン策定などの多様なアウトプットを行なっています。そこで最適なソリューションを導き出すため、重要な役割を担うポジションが、アートディレクター(以下AD)です。

CINRAで5年働く上野由誠は、「制作会社の受託案件こそ、さまざまな仕事に携われるからおもしろい!」と、ADの仕事について熱く語ります。これまで専門分野に特化した制作会社に勤めていた上野だからこそ感じる、受託案件の魅力とは? ADが制作会社で働くメリットや、キャリアアップの流れについて語ってもらいました。

取材・文:宇治田エリ 撮影:関竜太 編集:青柳麗野(CINRA)

上野由誠

2017年、CINRA入社。美術大学で建築を専攻したのち、デザイナーとして広告会社に入社。約150サイトの構築・運用、デザイン制作に従事。1年間のフリー期間を経て、CINRAにジョイン。コーポレートブランディングや国内大手結婚式場の大規模改修案件、スポーツメーカーのプロモーションなど、ジャンルを問わず幅広い案件のアートディレクションを担当。フルリモートを機に2021年8月に福岡へ移住し、九州の美味しいお酒と料理を満喫中。

デザインの引き出しを増やすために。CINRAの働く環境

―以前はブライダルやシニアビジネスなど、業界に特化したウェブ系の制作会社に勤めていたそうですが、なぜCINRAへの転職を決めたのでしょうか?

上野:以前の会社にはデザイナーとして4年ほどいましたが、内勤でウェブのデザインをしていることが多かったので、お客さんにプレゼンテーションをすることもなく、手がける仕事も毎回ほとんど同じような内容だったんです。ADというポジションもなく、そんな環境に行き詰まりを感じて「このままじゃいけない。もっとデザインの引き出しを増やしたい」と思い、転職することに決めました。

さまざまな制作会社があるなかでCINRAに決めた理由は、学生の頃から「CINRA.NET」を見ていて身近な存在だったことが大きいと思います。また、2014年にCINRAが手がけた早稲田大学のサイトリニューアルの事例などを見て、「受託案件も面白いものがありそうだし、メディアからはアートや音楽情報をインプットできる。双方から刺激を受けられそう」と、魅力を感じたのもあります。


アートディレクター / デザイナーの上野由誠

―入社後、どのくらいでADになれましたか?

上野:入社から半年後くらいでしょうか。ぼくはADとしての経験がなかったので、最初はデザイナーとして入社しました。そこで先輩ADのもとで数案件こなしたあと、すぐにADとして独り立ちしましたね。

―早いですね。そのスピードをどう感じましたか?

上野:ぼくとしては期待通りでしたね。CINRAはベンチャー企業ですから、入社したときも、いまも、いい意味でまだまだ組織として完成されていない。だからこそ、スピーディーにADになることをチームから求められていました。ぼく自身も、ADになれば会社の成長に大きく貢献できると思っていましたし、はやくADの仕事が身につくようにと、先輩方の資料やほかの会社の事例を見て勉強しながら成長していくことができました。

―制作会社は忙しいイメージがありますが、1人あたりの仕事の分量はどのくらいなのでしょうか?

上野:1案件につき、1人のAD兼デザイナーがアサインされて、納品は、だいたい1案件につき3、4か月かかります。できるだけ作業は被らないように調整しますが、予定通りに進行しないことはどうしてもあるので、複数の案件が同時進行になる場合もありますね。

―現在はどのようなチーム体制ですか?

上野:今年4月に体制が変わり体験デザインを行う「XDU」という枠組みのなかに、ぼくがいるデザインチーム(4名)が組み込まれました。デザイナーチームのほかには、ワイヤーフレームとUI / UXを担当するUXチーム、実装を担当するエンジニアチーム、そしてプロジェクトマネジメント(PM)チームがいます。全体で20名くらいでしょうか。なので制作は、基本的にユニット内で完結します。

受託案件での制作チームの座組みは、内容や規模によって変わりますが、基本的には社内からアカウントプランナー、PM、AD兼デザイナー、テクニカルディレクター兼バックエンドエンジニア、フロントエンドエンジニアが1人ずつアサインされるということが多いです。そのなかで記事などのコンテンツをつくる場合は、編集者が加わることもあります。一方で、ADとデザイナーの兼務はリソース不足の原因にもなっているので、これからはもっとADに特化してやりたい人が増えたらありがたいですね。

CINRAの組織図。上野は体験デザインユニット「XDU」に所属している

―案件ごとに毎回制作チームのメンバーが変わることに、どんなメリットを感じますか?

上野:組むメンバーが変われば、仕事のやり方も少しずつ変わります。ぼくはそれが新鮮に感じられるし、自分にはない視点や意見を毎回得られるので発見も多くあります。社内メンバーそれぞれに色があるから、偶然に組まれたチーム体制によってアイデアや進行は違ってくるし、それによって自然とアウトプットも変わる。そんな化学反応のような出来事が起きるのも面白いですね。

案件の振れ幅が大きいから、ディレクション能力が飛躍する

―「CINRAにいたからこそできた」と思う案件はありますか?

上野:アニヴェルセルという、業界最大手の結婚式場の受託案件ですね。入社して間もない頃の案件でしたが、「自分がやりたい」と、手をあげて担当になりました。「(前職で経験しているし)やっぱりブライダルが好きなの?」と思われるかもしれませんが、前職では地方の式場など小さい規模の案件が多くて、大手であるアニヴェルセルは憧れだったんです。

もともとこの案件は、コンペで提出したぼくのデザイン案を気に入ってくださりスタートしましたが、いざ実制作がはじまると、サイト全体の方向性やデザイントンマナなど、なかなかクライアントと意見が合わなくて。そこで社内の制作チームでも議論を重ねつつ、クライアントの担当者に「アニヴェルセルが大切にしていることは何か?」など、それぞれの思いを根掘り葉掘りヒアリングしていきました。

すると、アニヴェルセルという会社は、クラシックな式場を持っているだけではなく、どこよりも結婚式を大切にしているという、本質的な思いがわかってきた。だからこそ、自分たちの施設やサービスの良さを伝えるのではなく、もっと前提にある「結婚式の良さ」を伝えるためのコンセプトをCINRAは打ち出すことに決めました。

上野がAD /デザイナーを担当したアニヴェルセル株式会社のサイト

―難しさに挑むなかで、どのようなスキルが身につきましたか?

上野:入念にヒアリングをして、齟齬が生まれないように説明し、ゴールまで確実にたどり着く……つまりコミュニケーションスキルですね。とくにデザインにおいては、「スタイリッシュにしてください」みたいな感覚的な言葉がよく使われがちですが、実際に何をスタイリッシュだと思うかは、人によって違うものです。そこをいろいろなキーワードに置き換えてみたり、イメージボードをつくってビジュアルで見せたり、双方からイメージを具体化し、クライアントに共有するようにしています。そのプロセスを身につけたことでデザインの選択肢も増えたと思います。

実制作に入る前にデザインのコンセプトシートをADがつくり、それに沿って進めているので、制作中にクライアントが迷うことがあってもコンセプトシートに立ち返ればブレませんし、むやみに振り回されることもありません。このように、ブレないコンセプトをつくることも、ADの腕の見せどころとなります。

上野が過去に案件で制作した提案資料

さまざまなクリエイターと一緒に働ける。それが喜び

―ADとしてCINRAで働いていてよかったと思うのは、どんなときでしょう?

上野:いろいろなクリエイターと一緒に、いいものをつくれたときです。学生の頃はバスケ部に所属していたからか、チームを組むことが好きだし楽しい。以前、リクルートの「学生向けキャリアサイト」の制作依頼が来たときも、メインビジュアルにストリートアートを使おうとなって。舞台美術の会社や撮影会社など、さまざまな方と関わりながら進めていきました。忙しかったけれど、本当に楽しかったですね。ADしているなと思いました。実際にクライアントからも気に入ってもらえて、「作品を引き取りたい」という申し出が撮影後にありました。(処分するのではなく)何かに活かしたいと思ってくれたことがうれしかったですね。

株式会社リクルート。印象的なキービジュアルは、美術制作から撮影までCINRAが行った

キービジュアル制作現場のオフショット

―CINRAではウェブ以外のアートディレクションも手がけられるのでしょうか?

上野:基本的には8割がウェブデザインの仕事なので、それ以外はあまり多くはありませんが、紙物やパッケージなどを手がけることもあります。ぼくの場合はもともと大学で建築を学んでいたので、原寸大のもの、たとえば本棚のアートディレクションも手がけたことがあります。これまでの自分の経歴を活かして、クライアントにユニークな提案ができる場合もありますよ。

株式会社PR TIMESの社内ライブラリーをプロデュースした

アシックスジャパン株式会社のプロモーションにて、パンフレットおよびウェブサイトなどを制作

―上野さんから見て、CINRAの社風や部署の雰囲気はどのように感じますか?

上野:基本的にはデザインやアサインも個人の裁量に任されていますが、相談や意見交換には柔軟に対応してくれるし、助けてくれる人が多いですね。ぼくも案件に煮詰まったときは、チーム内のメンバーと話して、意見をもらうようにしています。途中段階でもフィードバックをもらったり、案件終了後に反省会もしたり。個人とチームのバランス感がいいんですよね。

また、フルリモートになってからは、始業時間に合わせて「チェックイン」の時間が設けられていて、チームごとに毎日30分間、顔を合わせています。それまでは週に1回の定例会で顔を合わせるくらいだったので、いまのほうがむしろ話しやすいかもしれないです(笑)。

個人もチームも両方楽しめる人。これからのCINRAで求められるアートディレクター像

―CINRAでは、どのようなキャリアパスの可能性がありますか?

上野:個人のスキルにもよりますが、デザイナーとして入社しすぐにADになるのが基本的な流れです。いまのCINRAは、デザイナーとADを兼業する人が多いですが、ゆくゆくは手を動かさずにADだけの仕事をする人も増えていくかもしれません。また、ADを長く勤めた人はクリエイティブディレクターになる可能性もありますし、マネージャーとしてチームブランディングをすることもあるので、さまざまなパターンにキャリアが分かれていくと思います。

―今後実現していきたいことはありますか?

上野:引き続き手を動かしつつ、ADとして「誰かのため」を思いながら受託案件をじっくりこなしていけたらと思います。そしてもっといろいろなクリエイターさんと関わっていきたいですね。今後は、移住先である九州で活動するクリエイターたちともつながり、一緒に仕事していくのが理想です。

また、外部のデザイナーも増えつつあるので、「CINRAらしいプロセス」を指標にしてまとめられないかとチーム内で思案しているところです。アウトプットに制約はないので、それぞれの持ち味を生かしていけたらと思います。

―どんな人がCINRAやCINRAのADに向いていると思いますか?

上野:CINRAはまだまだベンチャーとして、組織が固まりきっていない会社。試行錯誤しなければいけないからこそ、それを面白がれる人が向いていると思います。

一方でCINRAのADに向いているのは、「欲張りな人」。アートディレクターはデザインのこと以外にも、いろいろなことを面白がってインプットしていく必要があると思うので、そこをどんどん自分から開拓していけて、興味の範囲を広げていける人がいいと思います。

実際CINRAのメンバーの多くが、そんなノリの良さを持っていて。ただ知識を吸収するのではなく、行動にうつすし、みんなが熱量をもって一緒の方向を向いていけるんですよね。それはみんなの好奇心が前提にあるからかもしれない。これまで自分1人が張り切って、ほかのメンバーがついてきてくれなかった……という寂しい思いをしたことがあるADは、ぜひCINRAに来てください(笑)。

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