自身のこれまでの経歴と現在、今後の目標について聞きました。
1、剣道少年、東芝の研究者になる
昔から国語が嫌いでした。好きなのは数学と物理。ものごとの理屈をつきつめて答えを導き出すほうが楽しいから。
同時に、ずっとやっていたのは剣道。3段です。小1から大学まで15年間打ち込みました。高校のときには岩手県の個人部門で優勝して、大学の入部初日に主将を破った武勇伝もあります。どんな人/状況に相対しても動じない強さは剣道から学びました。剣道の先生の方がよっぽど怖いですから。
東芝の新入社員時代
大学は、東北大学の理学部物理学科に入り光物理を研究していました。3年次から大学院卒業までレーザーの研究室に所属し、研究分野がそのまま生かせる東芝へ入社しました。東芝での所属は研究開発センターの次世代光ディスクの研究開発チーム。DVD、そしてBlu-rayの次にくる(と信じていた)ホログラフィックディスクの研究開発でした。ところが、みなさんもご存じのように光ディスクの繁栄は続かず、所属しているチームの閉鎖に伴って、自分の担当である次世代光ディスクの開発も中止になってしまったのです。
「終わってしまった…!!」
衝撃は大きかったです。プロジェクトの企画段階で気付くべきだった? それともマーケットを見誤った? 時代が変わった? いずれにせよ、研究者・技術者もビジネスの知識がなくてはダメだと痛感しました。この体験がMBA取得の道へと僕を突き動かしました。
2、キャピタリストの1歩手前、MBA取得
グロービスMBAコースの仲間と富士登山
実務経験のある先生が揃う、グロービスを選び、MBAコースに働きながら通学しました。内容は体系的な知識を学ぶよりも、実際の経営課題解決のシミュレーションを行うケーススタディがメイン。意外にも、財務会計、ファイナンスが得意になりました。ベンチャーキャピタル (VC) という仕事の存在を知ったのもこの時です。いろんな業種の仲間ができたり、ビジネスの実務の感覚がつかめたのが大きな学びでした。
MBA取得後は、ハードディスクの事業部に移ります。実際の製品を具体的につくる仕事。仕様決定、プロトタイプ作成、テスト、工場出荷、お客さんからのフィードバックを経てまた仕様変更…というようなサイクルを繰り返して、製品化までをリードしました。研究所よりも実務的だし、スピード感が全然違った。ここで企画開発から量産までを経験できたことは、大きな収穫でした。今の仕事にもとても役立っています。
3、VCの世界へ!Beyond Next Ventures入社
この頃にはもうVCに行こうと決めていました。技術系のバックグラウンド、財務・ファイナンスの知識など自分が好きなこと/得意なことが必要とされている。「VCこそ最高!」と思い、政府系VCであるDBJキャピタルに転職しました。DBJキャピタルは自由に好きなことをやらせてくれる良い会社で、テクノロジー系ベンチャーの担当として、キャピタリストの基礎をここで学びました。
VCコミュニティに入り込むうちに、Beyond Next Ventures(以下、「BNV」 )の伊藤さん、植波さんと知り合います。BNVは高度な技術系ベンチャーを投資対象に絞っている点、投資先に深く踏み込んでいてリードVCを務めることが多いこと点に強く惹かれました。
キャピタリストとして確かな実績のある伊藤さん、植波さんの側で学べること、自分のような研究から量産までがわかるキャピタリストを求めてくれていることがダメ押しとなり、ジョインすることに決めました。入社時には「Beyond Next Venturesの3分の1であるという責任と誇りをもって、”創り出す” 側になってほしい」と伊藤さんから言われました。
4、技術のわかるキャピタリストとして
Beyond Next Ventures入社時の社員数は3人
“大学や研究機関発の技術系ベンチャーへの投資” がいまの仕事です。事業化意欲のある先生・研究者、ベンチャーを訪問して信頼を得て、投資を行い、投資後は創業メンバーの気概を持って一緒に問題解決を行い、事業を進めていく。法律や経営など広範囲な知識も必要とされます。確かに大変なこともありますけど、苦にはなりません。「一緒にやりたい」と思ったり、「もっとこうすればいいのに」というアイディアが自然に湧いてくるのが “自分が投資したい会社” だと思ってます。
キャピタリストになって、この仕事は案外営業要素が強いことに気づきました。イベントに顔を出したり、研究室を訪問し先生や研究者と議論する。技術系のバックグラウンドの人は戸惑うかもしれませんが、幸い自分は楽しく取り組めました。自分のことを人見知りだと思っていたので意外でした。
投資検討をする時、起業家、事業計画、技術など非常に多面的に理解しないといけませんが、僕は元研究者だからなのか、どんな技術なのかが特に気になります。”イケてる” 技術というのは設計がシンプルかつエレガントで “美しい” んです。それが理解できるのも自分の強み。エレガントな技術(者)に毎日出会えるのがとてもエキサイティングです。
5、ゼロからイチを生み出した体験が自信に
BRAVEアクセラレーションプログラムでは司会も担当
BRAVEアクセラレーションプログラムの立ち上げがBNVに入って一番大きなチャレンジでした。BRAVEの目的は、大学・研究機関発の技術シーズの実用/事業化を支援すること。入社した当時に聞いた伊藤さんの構想を、ゼロから形にしていきました。
プログラムの主旨に賛同してくださるパートナー企業さん、参加チーム、審査員、参加チームに助言を行うメンターなど、関係者を集めるのがまず大変でした。大学発ベンチャーを 起業前の技術シーズの段階から本気で育てる初めての試みであること、独自の研修プログラムなどが評価されて、結果として、たくさんの大手企業、メンターさんに参画していただけました。
試行錯誤しながらつくりあげたプログラムも2017年の1月に第1期が終了しました。フィードバックも反映しながらすでに第2期のプログラムが走り始めています。今からすごく楽しみです。
BRAVEをみんなと協力しながら自力でゼロから立ち上げて運営したことで、初めての大きな取り組みも怖くなくなりました。起業家に寄り添うには、キャピタリストにも起業家と同様「ゼロからイチを生み出す経験」をすることが必要です。その体験が、BRAVEで味わえたこと、構想をつくって手伝ってくれる人を説得して集める大変さがわかったことは大きな糧となりました。
6、BRAVE内にベンチャー育成のエコシステムをつくりたい
今後実現したいことは3つです。一つ目は、自分の投資先を成功させることと、自分主導の投資案件の実績を積んでいくこと。支援するベンチャーが毎年成長していくところ、がらっと変化するところに立ち会いたいです。
次に、BRAVEをもっといい良いものにしていくこと。もう3~4年したら、BRAVE卒業生が支援側に回るというように、BRAVE内にエコシステムを形成したいです。
最後に、自身の大企業側での経験を活かし、大企業とベンチャーの連携を推進すること。大企業にもっとベンチャー側を向いてもらうために、BRAVE以外にも色々仕掛けていきたいです。
Beyond Next Venturesについて聞きました。
7、Beyond Next Venturesはどんな会社?
特徴はひとりひとりエッジが立っていること。ひとり部門長なので個人の責任が大きいです。また、「自分たちも投資支援先ベンチャーの成長スピードに負けないこと」が求められます。毎日試行錯誤、行動の繰り返しです。やりたいことはバックアップする体制が整っていて、みんなが協力的。熱意溢れる人ばかりなので刺激をもらっています。インターン生も会社の規模の割に多く所属していて活気があります。
ちなみに、オフィスがある日本橋はおいしいものも多くロケーションは最高ですよ。駅近だし。
8、どんな人と一緒に働きたい?
元気な人、ベンチャーが好きな人、技術好きな人にぜひ来ていただきたいです。また、意見が自由に言えるカルチャーを生かして、積極的に提案して、行動できる方がいいですね。インターンの方には、企画運営に携わること、最先端の技術に触れられることの楽しさを味わってほしいです!