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良質なアイデアの秘訣はチームビルディング。ベンチャーアーキテクトから見るBCGDVのカルチャー

BCG Digital Ventures(以下、BCGDV)は、大企業との共創を通じて、新規事業を創出しているクリエイター集団です。エンジニアリングやデザインなどのプロフェッショナルが在籍し、プロダクトとビジネスの両輪で革新性の高い大きな事業をグローバルに生み出し続けています。

多くのクリエイターが在籍しているBCGDVには、エンジニア、エクスペリエンスデザイナー、ストラテジックデザイナー、プロダクトマネージャー、グロースアーキテクト、そしてベンチャーアーキテクトという職種があります。それぞれの職種を紹介する本連載では、前回までにエンジニアの岡田貴裕ストラテジックデザイナーのSean McKelveyに話を聞きました。

今回紹介するのは、ベンチャーアーキテクトの梅沢真吾。社内で生まれたアイデアをビジネスとして成立させるため、事業計画からコーポレートファイナンスまで幅広く担当するのがベンチャーアーキテクト。チームで生み出したサービスコンセプトをビジネスに昇華させるビジネスプロデューサーの役割を担っています。本記事では「ビジネス構築のプロフェッショナルから見たBCGDV」を紹介していきます。

上流の課題解決をするため、広告からコンサルに転身

梅沢「ビジネスを創り出すために必要なことは何でもやる、というのがベンチャーアーキテクトの仕事ですね。プロジェクトの前半であるアイディエーション(コンセプトを生み出す)フェーズでは、職種に関わらずアイデア出しを行いますが、アイデアを磨いていくために、それぞれが専門領域のスキル、知識を持ち寄ります。ベンチャーアーキテクトはマーケット、競合、事例調査などの分野で力を発揮していくことが多いです。

後半フェーズでは、ビジネスモデルを整理したり一顧客あたりの経済性を示すユニットエコノミクスを試算したりと、事業計画策定が業務の中心になります。ジョイントベンチャーにまで話が進むと、コーポレートファイナス領域を担当することもあります」

2017年10月にBCGDVにジョインした梅沢は、他のメンバーとは少し毛色の異なるキャリアを歩んできました。それは「広告業界出身」であることと「BCGからの転籍」であること。

ファーストキャリアはデジタル広告会社でした。勢いのあるベンチャー社長たちがたびたびメディアに露出し始めていたのを目にし、「今はベンチャーが熱いのか」と感化されたと当時を振り返ります。そして在籍して5年が経ったころ、梅沢は「もう少し大きなフィールドで勝負がしたい」「これから急成長する業界に飛び込んで、若いうちから最前線で活躍したい」と思うようになっていきました。

梅沢「デジタル広告って、“マーケティング”の一部である“プロモーション”の一部なんですよね。ところが全体を見渡してみると、商品サービスが売れない理由はマーケティングではない別の領域にあることもありました。

当然ですが、デジタル領域は広告だけではないですよね。事業にも社内のインフラにも、デジタルはあらゆるものに応用できる可能性を秘めていました。経営者の方々がデジタルをどう活用するかというもう少し上流の課題解決ができるようになりたくて、コンサルティング業界に転身しました」

その後梅沢は総合コンサルティングファームで3年の経験を積み、2014年11月にBCGに入社。シニアアソシエイトとして、大手企業のデジタルサービスの実行支援や、大手メーカーの新規事業支援などに従事しました。

BCGで数年経った頃、梅沢はその業界の在り方そのものに影響を及ぼしかねない大きな課題へのソリューションを検討する、とあるプロジェクトにアサインされました。その際のプロジェクト責任者2名が、BCGDV東京の立ち上げメンバーでした。

梅沢「二人の人間としての魅力や事業を推し進めていく力に強く惹かれたのはもちろん、プロジェクトを通じて、BCGDVのアプローチの斬新さにも大きな魅力を感じました。ここであれば、インパクトの大きな新規事業を創出できるだろうと実感しました。

BCGでの仕事も、もちろん学びが多かったです。“クライアントへの価値提供”を通じて自己成長することがモチベーションになる人はきっとBCGに向いていて、“面白いものを創り出したい”という欲求が強い人はBCGDVに向いているのかなというのが僕の意見です。自分はどうしたいのかという『当事者意識』を大切にしたい気持ちが強くなり、BCGDVへの転籍を決めました」


ロジカルなプレゼンではなく、ストーリーテリングなピッチを

現在、梅沢は大手企業とともに、皆さんが日常的に目にするある機械のイノベーションを推進するプロジェクトに参加しています。それは何十年も姿形を変えていないため、IoTといったデジタル要素を加えることで、データの蓄積と分析が可能になるため、どのようにビジネスチャンスを拡げていけるかを探ることがプロジェクトのねらい。梅沢は、BCGと協働しているこのプロジェクトのBCGDV側の責任者を担っています。

コンサルティングファームでのバックグラウンドを持つ梅沢は、ベンチャーアーキテクトの仕事にも比較的すぐに溶け込むことができたといいます。他方で、苦労したのが「投資」と「コーポレートファイナンス」。コンサル時代に経験してこなかったこれらの領域は、OJTで経験値を上げている途中です。

梅沢「ベンチャーアーキテクトは、フェーズによって仕事が全く異なります。コンセプトを決めるイノベーションフェーズ、プロダクト化に向けた運営を始めるインキュベーションフェーズ、事業をローンチし成長を促すコマーシャルフェーズに分かれますが、僕はこれまでイノベーションフェーズで多くの経験を積んできたので、これからは、インキュベーションフェーズ以降に軸足を置いて、多くの事業を生み出していきたいと思っています。

機会がやってきたときにしっかり任務を果たせるよう、インキュベーションフェーズに関わっている先輩や同僚の案件に同席させてもらっていますが、BCGDVには学びたい人にオープンな人ばかりなので、そのカルチャーには救われていますね」

ビジネスサイドの調整がベンチャーアーキテクトの役割ですが、職種に関わらずアイデア出しは全員で行います。梅沢は、前職ではあまりアイデア出しをしてきませんでしたが「やってみたら意外と得意だった」と、自分の能力に対する新たな発見があったそうです。

梅沢「アイデアを出すのにもフレームワークやプロセスがあることを知り、アイデア出しに自信を持てるようになりました。それからBCGDVでは、コンセプトオーナーの主体性が問われます。過去の仕事でも、自分のアイデアや発言には責任を持っているつもりでしたが、BCGDVに入社してさらに『当事者意識』が芽生えたように思います」

BCGDVのピッチはコンサルティング会社のものとは異なり、スタートアップのピッチに近いものを求められるため、梅沢はしばしばスタートアップが集まるカンファレンスやピッチイベントなどに出向き、「伝える」スキルの習得も行っています。

梅沢「BCGDVに入って初めて『TED talk』みたいなピッチをしたんです。プレゼンはこれまで何度も経験してきましたが、ロジックではなくストーリーで語りかける手法は初めてでした。共感を重視しているので、ピッチでも事実を羅列するのではなく『○○さんが、こんなシーンですごく困っていて……』というエピソードから入る。これまではひたすらロジカルに考えてきたので、新しい発見をした気分でした」

トークスクリプトを書いたことが一度もなかったという梅沢は、場慣れをするために何度も練習を重ねます。録音をして話し方のクセを客観的に聞いたり、感情を声に乗せられるよう人からフィードバックをもらったりと、“こっぱずかしい”訓練を繰り返すことで、人の内面に訴えかけるトークができるようになってきたのだそう。

『タイムボム』でチームビルディング。互いを知ることがアイデアの創出につながる

梅沢はBCGDVの組織風土を、一般的な「成長志向」に照らし合わせて「面白思考」と表現します。

梅沢「誰かが喜ぶアウトプットではなくて、自分が面白いと思えるアウトプットをする文化ですね。例えば、誰かがフィードバックをくれたとき、何でもかんでも受け入れるのではなく、自分がいいなと思えば反映するけど、う~んと思えばスルーする(笑)。最近『スルー力』が上がってきたと周囲から言われますね。BCGDVは成長志向のある人ばかりですが、“成長”を目的にしているのではなく、“面白いこと”を追求していたら結果的に成長していたパターンが多いように思います」


また、BCGDVではプロジェクトごとにメンバーが入れ替わるため、チームビルディングも不可欠。アイデアを出すとき、心理的安全性の有無がアイデアの量と質に影響してくるからです。チームビルディングというと、ランチに行ったり合宿をしたりというのが一般的ですが、梅沢が関わっているプロジェクトではこんなユニークな取り組みも。

梅沢「『タイムボム』というゲームを、プロジェクトメンバー(BCGDV、コーポレートパートナー(クライアント)、BCGのメンバーで構成)でやりました。少し前に流行った『人狼ゲーム』に似ていて、要は騙し合いをする遊びなんですね。これをやっていると、面白いくらいに人間性が表れます。普段は静かなエンジニアがタイムボムになるとめちゃくちゃ喋りだしたり、逆に僕はみんなから『梅沢が言うことは信用できない』と言われるようになってしまいました(笑)。

それから、今のプロジェクトでは係を決めていますね。それがけっこう些細なものばかりで、加湿器に水を入れる係とか、お菓子を補充する係とか。僕は掃除係なんですけど、コーヒー豆を入れ替えたり、植物に水をやったり。ルーティンを見つけると新しい係ができるので、その度に『梅沢は○○係ね』というコミュニケーションが生まれます」


チームビルディングで互いのことを深く知り合うカルチャーがあるため、梅沢が子煩悩な2児の父であることも周知の事実。梅沢は父親になったことで、より“生き様”を意識するようになったといいます。

梅沢「6歳の娘が『大きくなったらパパと同じコンサルティングの仕事をする』と言うんですよ。しかも、ちゃんとどういう仕事か理解しているみたいなんです。『例えば、ラーメン屋さんがお客さんを増やすためには?』って聞くと、彼女は『駐車場を作る、デザートを出す』と答える。挙句には『Uber Eatsと組む』と言い出すので、今どきだなぁと感心しました(笑)」

BCGDVでは、会社のパーティに社員の家族を招待することもあり、梅沢は“父親としての自分”をメンバーに知ってもらえていることで、働きやすさが増したと話します。

梅沢「守りたい存在ができたから、社会的意義のある事業により関心を寄せるようになったかもしれません。これまでの仕事の中で“考える”ことはやってきたので、今後は考えた結果意味があると思ったものを、“形にする”とか“大きくする”ことに注力していきたいと思います。父親になったことでさらに社会への『当事者意識』が高まったので、何が仕事につながるか分からないものですね」


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